本当の新機能はこれから登場する
ここまでの文章を読まれて、出てくるキーワードがいちいちマニアックな感じはしないだろうか。そもそも先ほど紹介した2つの変更は、これまでのバージョンにもあった機能の強化であり、リニューアルでまったく新たに登場してきたわけではない。「はてな」ならではのサプライズや、誰が見ても「これは新しい」と思えるようなキャッチーさはほとんどなかったと言えるだろう。
特に、現在のはてなブックマークが抱える最も大きな問題とされる「ネガティブコメント(以下、ネガコメ)」問題への対策を先送りしたことは、今回のリニューアルが基本的に以前のバージョンの「再発明」にすぎないという印象を強くする(ネガコメ問題については後述する)。
ただし、物事には順番というものがある。今回のリニューアルで大きな新機能追加がないというのは、リニューアルの初手からアナウンスされていた通りでもある。
今回の「はてなブックマーク」リニューアルにおける本当の目玉は、再発明を恐れずに、同じサービスをスクラッチで作り直したことにある。はてなブックマークは、もともと開発合宿の勢いで作られたサービスのため、拡張しづらい設計になっていたという。これが、さまざまな問題解決の妨げになっていた。
リニューアルによってこれが解消されることで、本当の新機能、今まで考えてもみなかったユーザー体験や「はてな」らしいサプライズは、これから徐々に追加されていくと思われる。はてなブックマークのリニューアル効果が明らかになるのは、そうした機能が登場してくる来年以降のことになるのではないだろうか。
既に「はてなブックマーク」は日本におけるナンバーワンのソーシャルブックマークサービスであり、今回のリニューアルはその王者が足元を見直し、装備を刷新したにすぎない。勇者が再び冒険に出発する準備を整えた、という段階。まだ新「はてなブックマーク」は最初の島も出てはいないのだ。
ブックマークはメディア化するか?
ただし、ブックマーク記事の自動カテゴライズ機能だけは、今後のブックマークサービス全体における1つの可能性を見せていると言える。なぜなら、ほかの機能拡張には既存ユーザーの使い勝手をよくするようなものが多いが、この自動カテゴライズによる新しいトップページのインターフェースは、新たなユーザーを引き付ける契機となるからだ。
現行のはてなブックマークでは、どんな記事であれ同じ箱に突っ込まれる。このため、まったくのエントリーユーザーがたまたま訪れると、IT系のコンピューター記事を中心に、ブログ論や2ちゃんねるのまとめ記事まで入り乱れて、ちょっとしたカオスに見えることだろう。エントリーユーザーには敷居が高いサービスだということもよく指摘されている点だ。

しかし、記事がきちんとカテゴリーに分類されているだけで、サイト全体の見通しがずいぶんよくなった。話題のニュースを集めたニュースポータル的な見方もできるし、以前より“メディア”に近くなったとも言える。

発表会の質疑応答で挙げられた数字だが、はてなブックマークには月間で300万のユニークユーザーが訪れる。しかし、サービスの登録ユーザー数は20万人とのこと。つまり、ブックマークしているユーザーよりも、ただ見に来る人の方が圧倒的に多いのだ。そういった来訪者に対して、今回のリニューアルは効果的に機能するだろう。
はてなでは、このユニークユーザー数を来年の夏には倍くらいに増やしたいという。情報管理のためにブックマークを利用するユーザーだけでなく、メディアとして見に来るユーザーも意識したニュースサイト的な機能拡張も、今後さらに進められることになるだろう。
海外のブックマークサービスでも、2年前に「digg」がIT以外のカテゴリーを作ったことでユーザーを増やしたことがあったように、はてなでもカテゴリー分けが来訪者の増加、ひいてはユーザーの拡大にもつながるかどうか注目される。
