ブックマークサービス界の雄がリニューアル。Web体験は変わるのか?
国内最大級のソーシャルブックマークサービス「はてなブックマーク」のリニューアル発表会が、11月4日に東京は恵比寿で開かれた。京都に本社のある株式会社はてななら京都でやれという声も聞かれたが、IT系Webメディアとブロガーを集めて、翌5日の午前11時にいっせいに記事をアップさせるという作戦を取るには、東京で開催したのは成功だったと言えるだろう。
発表された新「はてなブックマーク」の概要は、本誌をはじめさまざまなサイトが競うようにエントリーを書き、情報解禁となった11時過ぎから当のはてなブックマークのホットエントリーを占拠する勢いだったので、改めてここで繰り返すことはないだろうが、正直そういった記事を読まれて「え? これだけ?」と思われた方もけっこういらっしゃるのではないだろうか。
熱心なはてなブックマークの利用者にとっては、今回のリニューアルの意味するところは大きいが、エントリーユーザーあるいは利用していない人にとっては、あまりピンと来ないのではないか。本稿では、そういったちょっと引いた視点から業界を先行するはてなブックマークの「リニューアル」を眺め、ブックマークサービスの今後について考えてみることにしよう。
URL超「超」整理型マイクロブログ
まずは簡単に、今回の「はてなブックマーク」リニューアルの概要をおさらいしてみよう。
基本的には、既存のはてなブックマーク利用者もそれほど混乱しないような、現状の操作感を保った形でのリニューアルになる。そのなかに、ユーザーにとって大きな変更が2点ある。検索機能の強化、それから「お気に入り」の強化である。この2点を使いこなすことができれば、ユーザーは新しいはてなブックマークで新しい利用体験が可能だ。
まず、検索機能の強化によって、過去に自分がブックマークしていた記事を見つけ出しやすくなった。これまでは過去にブックマークした記事を振り返ることは難しかったが、これからは躊躇なくブックマークに溜め込んでいき、必要になったときに検索して見つけ出すという利用の仕方が可能になる。
これは、グーグルのWebメールサービス「Gmail」が大胆に取り入れている手法と同じだ。情報にはタグ(Gmailではラベル)を付ける程度で、積極的には整理しない。ただ同じアーカイブに放り込んでおく。そして必要になったらアーカイブを検索して釣り上げる。「超」整理法の野口悠紀雄氏が、近著『超「超」整理法』で推薦されているのを読まれた方もいるかもしれない。
この手法の肝は検索技術であり、精度が高い高速な検索エンジンが無ければ実現できない。それを今回は、プリファードインフラストラクチャー社との戦略的提携により、大規模全文検索エンジン「Sedue(セデュー)」を採用することで解決している。この独自エンジンではIPAの未踏プロジェクトの技術など、日本の先端IT研究がスピンアウトされている点でも注目される。
もう1つの「お気に入り」機能は、利用者同士が「お気に入り/お気に入られ」関係で繋がっていくという、まさに“ソーシャル”ブックマークらしい機能。画面を見る限りは、「Twitter」のようなマイクロブログにおけるフォロー関係を彷彿とさせる。
考えてみれば、そもそも自分のブックマークがタイムラインに沿って表示されている形は、マイクロブログそのものと類似でもある。超「超」整理法的なサルベージ機能付きの、URLクリップに特化したマイクロブログ、というのが新しいはてなブックマークによって提供される新機能のまとめということになるだろう。