ネガコメとブックマークの難しい関係
最後に、ネガコメ問題について考えてみよう。
ネガコメとは、ブックマーク対象のニュース記事あるいはブログ開設者に対して否定的、ひいては攻撃的な一群のコメントが付くことである。記事をブックマークする際に100文字以内のコメントを付加することができ、このコメントを記事ごとに一覧表示させたときに、一面にネガティブなコメントが並ぶことが問題となっているのだ。
一般にはてなブックマークは、ネガコメを連発するユーザーがたくさん常駐している怖いところ、というイメージがある。しかし実際には、ソーシャルコミュニティ「mixi」の「ニュースに関する日記一覧」や、Yahoo!ニュースのコメント欄など、ネガティブなコメントが多数見られるサイトはいくつもある。
そういったサイトより「はてなブックマーク」のネガコメが問題視されやすいのには、大きく2つの理由があると考えられる。1つには、はてなブックマークがまさにWeb 2.0的なサービスであるため、すべてのコメントがアグリゲートされ、より「見える化」された状態で公開されるので目立ちやすいこと。
もう1つは、ブックマークはニュース記事だけでなく、一般のブログエントリーへのコメントも多いということだ。有名人や社会的な話題だけでなく、一般のブログ解説者が罵詈雑言のターゲットになってしまうところに不幸がある。ブログ開設者のなかには、はてなブックマークに対する怒りを隠そうとしない人もいる。
これについては、発表会でも「ページ制作者への影響力が強すぎる」という問題として示した。なかなかうまい表現である。ネガコメの存在そのものより、それがオープンになって伝播されるときに軋轢が生じる。
はてなはどう対策を打ち出してくるか
はてなではこれまでも、サイト開設者が自サイトにmeta要素を書き入れることで、ブックマークコメントの一覧表示を禁じるというような対策をとってきた。このmeta要素による一覧表示禁止は、リニューアル後も引き続き行われる。ただし一覧表示を一括で禁止するのでは、逆にどんなにポジティブなコメントがついても、一緒に不可視にされてしまう。
また、ブックマークユーザーならば、ネガティブなコメントを連発するユーザーを「非表示」扱いにすることによって、一覧表示してもそのユーザーだけ隠してしまうことができる。しかし、これははてなブックマークユーザーに限られた対策でもあり、サイト開設者にとっては本質的な対策とはならないだろう。
前述したように、はてなブックマークをメディアとしてアクセスするユーザーが増えることも考えると、サイトの健全さという意味でも、普通の状態でネガコメは目立たなくなっていることが望ましい形だろう。
発表会では、今後の機能追加予定の中に、何らかの方法でコメントを評価する「モデレーション機能」が挙げられていた。しかし、これについてはまだ実装スケジュールには乗っていない状況のようだ。コメントへの反論を表示できるという「ページツリー表示」と合わせて、ネガコメ対策をいつどのような実装で打ち出してくるかが、はてなブックマークの、ひいてはブックマークサービス全体の、今後を示唆する1つの鍵となるだろう。
