デザインに取りかかる前に読み返したい言葉
デザインについて語る行為には特有のいやらしさも漂うため、遠慮したいムードになることも確かに多いのですが、一方で、世の中には「作るための力になる言葉」も確実に存在しています。
1
あらゆる部分を計画せよ。あらゆる部分をデザインせよ。
偶然に出来ていそうなスタイル、なにげない風情、自然発生的な見かけも、
計算しつくされたデザインの結果である。
2
同じものは作るな。
同じになりそうなものは、すべて変形せよ。
5
すべてのものにはすべてがあるのだから、どんな小さなものでも世界を表現できる。
8
ある場所の伝統は、他のいかなる場所における伝統でもある。
9*
表現されたものは、すべて秩序付づけられてしまったものである。
この世にはほとんど、秩序しかない。すべてのデザインは、秩序づけられてしまっている。
10
矛盾から秩序を育て上げよ。
11*
大きな仕掛けは、大きな構想を支える。
大きな仕掛けは、小さな部分によって支えられる。
大きな構想が、そのまま実現されれば、退屈なデザインとなる。
13
複雑なものは単純化せよ。単純なものは複雑化せよ。
その手続きの複雑さが人の心をうつ。
21*
デザインは物語である。
物語の虚構性が、現実の生活を支える。
23
逃亡者たちは、楽園を作る。
撤退せよ。
25*
まれに訪れてくる人のために工夫せよ。
26
秘密結社のようにつくれ。
56*
シンボルに寄りかかるな。シンボルを際立たせよ。
シンボルに知性を吸い取られぬよう、緊張しつづけることだ。
61
合理的な解決は、一通りではない。
すべての要請が、一気に解決されるような解答はこの世にないからである。
最も特異な解決を選び、それを一般化せよ。
62
独自のたたずまいを誘起する仕掛け(device)がある。
このからくりが辺りから独自の空気を切り取る。
64
さまざまな境界に意を払え。境界は、秩序の原因である。
77
ある事柄についての偏愛や執着が、幻想的な様相を誘導する。
85
寸法と同じように、角度にも限りない変化があることを忘れるな。
91
装飾は、あってももよいし、なくてもよい。少なくてもよいし、多くてもよい。
97
空き地の空気は自由だ。
空き地の空気はカオスだ。
100
部屋の数だけ世界がある。
……多くの場合にその作業を他の誰かと共同で行うことになるため、また、デザインの過程とその結果から得られたことを自分のためにまとめるため、デザインに関わるもろもろは言葉として表現される必要があります。
デザインについて語る行為には特有のいやらしさも漂うため、遠慮したいムードになることも確かに多いのですが、一方で、世の中には「作るための力になる言葉」も確実に存在しています。
例としてここでは、原 広司(はら・ひろし)という建築家によるアフォリズムを紹介しました(『集落の教え 100』より引用。一部を改変)。
建築家としてはもちろんですが、山本理顕や小嶋一浩など、多くの建築家を育てた教育者としても大きな存在です。ひっかかる言葉が、きっとあると思いますので、ぜひご覧いただければと思います。上に挙げた以外にも、多くの著作のある方です。
(注)「1」「2」などの番号は、上記書籍での登場順です。「*」がついたものは、一部編集を加えています。