コンテンツの目線はずらさない
あくまで駅弁大会にこだわって、コンテンツを絞っているところも特徴のひとつだ。北島氏は「駅弁そのものに詳しい人も、鉄道に詳しい人も、ほかにいくらでもいます。そこをフォローしようとすると、話が拡散してしまいますから」といって、あくまで自分たちの強みである駅弁大会そのものにフォーカスしている。
これは40回を超える歴史の強みでもある。出店する実演ブースにも来店するお客にも毎年参加する常連が多く、年ごとの変化や工夫をチェックするという重層的な楽しみがある。なにより圧倒的な来店者で賑わう催事場独特の雰囲気。旅先で食べる駅弁の良さが旅情にあるなら、駅弁大会には熱気があり、別個のコンテンツとして成立しうるだけのものがあるのだ。
また「駅弁大会への道'08」や「駅弁大会への道'07」といった過去ログが残されていることも重要だ。こうしたアーカイブのおかげで、後述する団子屋のおばあちゃんの動画を今でも見ることができる。
終了したイベントのコンテンツをそのまま残しておくというのは、ネットに慣れた人には当然のことのように思えるが、ブログというもののアーカイブ性をきちんと理解していないと企業内ではわかってもらえないことも多い。「なぜ残しているのか?」と聞かれることがあるそうだが、北島氏は「ブログはそういうものですから」と答えているという。
社内の理解は少なかったが、スタートさせた
そもそも2006年に「駅弁大会への道」がスタートしたときには、京王百貨店の通販サイトのてこ入れとしての側面があった。お中元やお歳暮の時期だけでなく、ショッピングサイトそのものの認知度を上げようと、京王の顔となっている駅弁大会を利用しようと考えたのだ。そのため2006年のページは「京王百貨店ショッピング」サイトに置かれている。
サイトの制作にあたって、駅弁大会のスタッフに「困っていること」を聞いたところ、会期前から開催日や折り込みチラシについての問い合わせが数多くあることがわかった。そこで折り込みチラシをPDF形式でダウンロードできるようにした。



2006年の「駅弁大会への道」は、ブログではなく静的なHTMLサイトとして構築されており、イベント期間中に3回ほど更新しただけで終わった。期待したショッピングへの波及は難しかったが、事前および会期中の駅弁大会の広報としては十分な効果があることがわかった。
そこで2007年に向けた「駅弁大会への道」を立ち上げるときに、チラシやウェブサイトを共同で制作している制作会社からの提案もあり、ブログサービスを利用することにした。その当時はまだ企業ブログというものについて社内では理解はそれほどなかったが、とにかく「更新が早くなる」ということで説得したという。