100万部売れるのなら、1000万部売れるでしょう
マーケティング会議は、「脳トレ」で有名な川島隆太氏のムックのプロモーション戦略を練ったのがきっかけだったという。「脳」「川島隆太」というネタ、知名度ともに抜群なコンテンツであれば、日本中の人が購入してもおかしくない、という前提のもと各部署の代表がアイデアを出しあい、売るための方策を考えた。
「本の場合、一般的に『100万部売れればベストセラー』と言われていますが、言い換えれば『100万部以上は売れない』という固定観念がなんとなくあるんじゃないかな、と感じていました。『100万部売れるのであれば、1000万部売れてもおかしくない』というトップの発想から、みんなで集まったのがきっかけで、『マーケティング会議』が生まれました」。
マーケティング会議以前は、会議の開催自体がイレギュラーだった同社だが、それ以降は定期的に各部署の代表が集まり販売戦略を練るようになったという。こうして会議を重ねる中で、さまざまな施策を行っている同社。その中で印象的なのは、毎号雑誌の販売価格を変えている点だ。
「多くの出版社では、印刷部数、製作原価から販売価格を算出している場合が多いようですが、その考え方から販売価格を決定してしまうことは、ある意味、読者を無視しているのではないか、と思ったのです。毎月出ている雑誌でも、コンテンツ、表紙、付録が変わると、知らない方にとってはある意味“新商品”になるので、読者の方に『お買い得!』と思っていただける値段も変わります。また、『一番誌戦略』で部数を増やすということは、毎号新しい読者が参入しているということなので、そのような状況も踏まえて販売価格を決めることにしています」
目的を定めた価格戦略
もちろん、読者へのお買い得感を演出するだけではなく、広告獲得を意識した戦略でもある。
「販売収入と広告収入、雑誌ビジネスの主な収益はこの2つで成り立っています。バランスよくやっていければベストなのですが、人口減少の問題もあり販売収入はある程度で頭打ちになると予想できます。そこでトップが打ち立てたのが、『一番誌戦略』。各雑誌の部数を各ジャンルで一番にして、広告収入を伸ばしていくことが今後の課題と捉えて、マーケティング活動を行ってきました」
こういった戦略が功を奏し『spring』『InRed』『sweet』など20代~30代を対象とした女性誌の部数が増加。また、価格戦略以外にも「店頭で付録付きをアピールできるように」(桜田氏)と付録の写真を雑誌のタイトルに重ねるレイアウトにも取り組んでいる。




「例えば、コンビニの棚で売られる場合、雑誌のセールスポイントである付録が付いていることを上端12センチ以内でアピールしないと読者の目にとまりません。営業担当者から、『タイトルに重ねてでも付録をアピールすることで部数増を狙える』という提案があり、すぐに修正しました。弊社の場合、思考が柔軟な編集者が多いのでこういった意見にも積極的に耳を傾けてくれるのはありがたいと思っています。ちなみに、各雑誌の付録は編集者が作っているんです。付録が付くと雑誌が綴じられてしまい、店頭で立ち読みできなくなってしまうことがあるのですが、そのぶん誌面の編集にもより力が入るみたいです」
