思い立った時にすぐ利用できる
同じインターネットを利用するPCサイトと比べた場合の特徴として挙げられるのが、「すぐ利用できる」ということだ。携帯電話は常に手元にあり、小型で、どのような環境でも利用しやすく、しかも電源が入っていてネットにつながる環境を備えている。それゆえテレビを見ている時や移動中、はたまたトイレの中などでも、思い立ってすぐ利用できる訳だ。
前回、モバイルECにおいて、テレビで紹介された品がすぐ売れ筋になるということを書いたが、これもモバイルサイトの「すぐ利用できる」という特性が生きている象徴的な事象といえる。ユーザーはテレビを見て「これが欲しい」と思い、その場ですぐモバイルサイトを利用し、ECサイトで商品を発見して購入している訳だ。PCで同じことをしようとした場合、まずネットのつながっているPCのある場所まで移動し、さらに電源を入れて起動を待たなければならいことから、モバイルより機会損失が発生しやすくなる。
こうした特性を持つことから、モバイルサイトにおいては、ユーザーの「すぐ」という欲求を満たすための動線をいかに用意するかということが重要となってくるのである。

全てがネットを経由するとは限らない
そしてもう1つ、PCサイトと比べ特に大きく異なっているのが、携帯電話が日常的なコミュニケーション手段でもあるため、モバイルサイトもリアル社会との結び付きが強いということ。そしてそれゆえに、口コミなどの評判が必ずしもWebサイトを経由して広がるとは限らないということである。
PC中心に人気を博している「Twitter」と、モバイルサイトで多く利用されている「リアル」(Chip!ブログなど)を例に挙げて説明しよう。これらはいずれも、自分の今思っていることなどを短文で随時書き込んでいくミニブログの類なのだが、その利用スタイルは全く異なっている。
Twitterは、相手のつぶやきに対して別の人がレスポンスを書き込んでいき、ネット上でコミュニケーションをはかっていくという使われ方が主である。一方リアルの場合、つぶやきを書き込んでいくという点は共通しているが、それに対してネット上でレスポンスが付くことはあまりない。なぜなら「リアル」という名称の通り、リアル社会での友達などに対して自分の現状を伝えるのが主な用途であるため、コミュニケーションそのものはリアル社会で発生し、ネット上のやりとりにはあまりつながらないのだ。

モバイルサイトはリアル社会の延長線として利用されることが多いがゆえ、「友達に直接写真を見せる」「周りの人が使っているサービスを使う」「面白いサービスをメールで教える」といったように、必ずしも全てのやりとりがWebサイトを経由しているとは限らないのである。それゆえかつてのモバゲータウンや前略プロフィールなどのように、「誰も理由は分からないけど、いつの間にかブレイクしている」といった事象が多く生まれる訳だ。
モバイルサイトでの動向を調べる上では、Webサイト上でのやりとりに目を向けるだけでなく、リアル社会でのコミュニケーションに対しても目を向ける必要がある、ということは覚えておくべきだろう。
これらをまとめると、モバイルサイトは他のメディアと比べた場合、以下のような特徴を持つことになる。
- パーソナル性が強く、秘匿性が高い
- 個人の嗜好にマッチすれば継続的なアピールにつながりやすい
- ただし伝播力は弱く、広がりにくい
- 思い立った時にすぐ利用でき、機会損失が発生しにくい
- 必ずしも全ての情報がネットを経由するとは限らない
それゆえモバイルサイトをうまくプロモーションに生かすには、(プロモーションする内容にもよるが)モバイルサイト以外のメディアとの連携が重要となってくる。「モバイルサイトを使うのだからモバイルサイトで全て行う」というのではなく、それぞれのメディア特性を把握し、うまく組み合わせて効果的な活用法を考えていくべきだろう。