1つのプランを独立して実施する時代は終わった
現在、番組公式サイトでは「地域」および「競技」別の検索システムを開発中だという。これが実装されると、例えば「ブカツホームページ」全体の中から「同じ県内のサッカー部だけ抽出する」といった使い方ができるようになる。こうした機能は、今後もさらに充実させていきたいと須田氏は話す。
「例えば、同じ地区同士で練習試合の申し込みが簡単にできるような機能なども考えています。実際に使っているユーザーの声を聞きながら、もっと部活に役立つサービスをどんどん提供できるようにしていきたいですね」
一方、井上氏が「ブカツの天使」の今後の課題として挙げるのは、他のさまざまなマーケティングプランとの連動・融合だ。ポカリスエットでは現在、「若者のスポーツを応援する」という施策だけでも、「ブカツの天使」以外に多彩な活動を展開している。日本サッカー協会が主催する「ポカリスエットU-12サッカーリーグ」への特別協賛や、全日本軟式野球連盟の2009年度オフィシャルドリンクパートナーとしての活動などは、その代表例と言えるだろう。
「U-12サッカーリーグは全国で約8,500チーム、軟式野球のほうは約2万チームあります。それらのチームに『ブカツの天使』で展開している『ブカツホームページ』のサービスを使ってもらえば、10代ユーザーのさらなる共感を得ることにもつながるでしょう。マーケティングやプロモーションは、もはや1つひとつのプランを独立して実施する時代ではありません。商品やブランドにとって最も大事な1つの目的に向けて、既存のさまざまな施策をすべて融合していくことで、より大きな効果が得られるのではないでしょうか。そして、今までバラバラに展開していたものを1つにつなぐときに真価を発揮するのが、モバイルを含めたWebというメディアだと思っています」
新しいことにトライする、そして継続することで効果を高める
「ブカツの天使」のように、Webやモバイル、その他の媒体を複合的に活用して相乗効果を生み出すクロスメディア戦略が昨今注目されているが、その一方で、従来の広告・宣伝のノウハウが通用しないこともあり、クロスメディアへの取り組みを躊躇してしまう人も少なくない。井上氏は自身の経験を振り返り、「プロダクトマネージャーやブランドマネージャーは、どんどん新しいことにトライするべき」と強調する。
「私自身、トライ&エラーの繰り返し。失敗もたくさん経験しながら、その中で、Webのいいところ・悪いところ、マスの強さ・弱さなど、さまざまな知識を蓄積してきました。新しいことにトライして、ノウハウを得て、次はさらに新しいことに取り組んでいく。それが重要だと思います」
最後にもう1つ、商品やブランドのプロモーションにおいて効果をあげるために必要なことを井上氏に聞いてみた。
「先ほどお話しした『融合』とともに、大切なのが『継続』です。私はどんな施策でも、3年やれる企画かどうかをいつも考えています。結果的に1年で終わってしまうものもありますが、基本的に最低3年はやらないと、やはりブランドを作ることはできません。1年の派手なプランよりも、地味だけど長く続けるほどジワジワと効いてくるようなプランが理想ですね」
もちろん「ブカツの天使」も、継続することでより高い効果を生むことが期待できるそうだ。
「番組で取材した部活には、チームの名前とスローガンを入れたオリジナルの横断幕を進呈しています。これによって、部員やマネージャーたちに喜んでもらえる上に、その後は試合があれば継続的にポカリスエットの横断幕を掲げてもらえるというメリットがあります。27局で24週放送すれば648校の部活が掲げてくれようになり、さらにもう1年続ければ、また648校増えていく。メディアの活用だけでなく、こうした細かな現場での取り組みをきっちりとやっていくことも必要だと思います」