2026年10月1日より、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)対策が義務化される。人材確保が年々難しくなる中、多くの企業にとって“守り”の体制づくりは最優先事項ともいえるだろう。そこで、期待が寄せられているのがAIである。一部の顧客対応をAIが担うことでカスハラの抑止力に。それと同時に、記録・事実確認の作業負担を軽減する。しかし、その一方で対策が進むからこその“副作用”も生まれているという。この課題に真正面から向き合っているのが、マッチングアプリ「with」を展開する株式会社withだ。同社のAI活用を支える株式会社Channel Corporationとともに、守りと攻めを両立する次世代のコンタクトセンターのあり方を聞いた。
退職による損失は莫大 今こそAIで本気の対策を
近年、SNSで顧客対応の様子が意図せず拡散されるなど、何かと話題に上がるカスハラ。とりわけ人材不足が深刻なコンタクトセンター業界にとっては、長年の課題だ。その実態は、Channel Corporationが2026年6月に実施した調査[1]にもはっきりと表れている。
同調査では、勤務先のカスハラ対策は「特になし」と答えた人が51.7%にのぼった。対策をしている企業でも、その多くは基本方針の周知やマニュアルの整備にとどまり、録音・録画環境やAIの活用にまで踏み込めているケースはごく一部にすぎない。28%の従業員が「対策が不十分な現場の場合、退職したくなる」と回答。さらに、メールやチャットといった非対面の窓口の場合、その退職意欲は33.9%まで上がる。
エン・ジャパンの試算[2]では、入社半年で社員が早期離職した場合、その損失は一人当たり最大640万円にもなるという。対策にかかるコスト以上に、放置しつづけるコストは見逃せない。withでCustomer Care Teamのリーダーを務める藤平直也氏も警鐘を鳴らす。
「withでは、非対面の問い合わせ対応をメインとしています。マッチングアプリの特性もありますが、問い合わせ窓口が感情のはけ口となってしまうケースが少なくありません。私がカスタマーサポート領域のキャリアをスタートした約15年前は『お客様は神様』という認識が強く、耐えるのが当たり前でした。結果的に、退職してしまう人も何人も見てきました。しかし、今は時代も変わってきています。過剰・不当な要求や威圧から我々にとって大事な従業員を守ることも、重要なミッションです」(藤平氏)
この状況から脱するため、withは2024年頃からカスタマーハラスメントにあたる事案の整理を開始。同年12月には、親会社であるエニトグループのTrust&Safety室主導で利用規約を改定し、あわせて社内における報告フローも整備した。法務主導の研修も毎年実施している。
その上で現場で活用されているのが、Channel CorporationのAIエージェント「ALF」だ。withで蓄積されたナレッジを学習したALFが一次対応を担い、多くの問い合わせをその場で自動解決している。顧客とのやり取りはデータ化され、管理画面上で可視化。クレームに近い感情的な問い合わせも、ALFとの会話を重ねることで多くが沈静化につながるという。
「AIが対応すると感情を逆なでするのではないかという意見もありますが、むしろ効果的な場面も多いです。カスハラと一言でいっても段階があり、人に自分の感情を強くぶつけたい方もいれば、とにかく愚痴を言いたいだけの方もいらっしゃいます。後者の場合は、レスポンスが速いAIに吐き出すと落ち着くケースが多く見受けられます」(藤平氏)
データの整備や対応マニュアルの学習など、AIの導入に時間がかかる印象もあるが、withでの準備期間は約1ヵ月。同じ内容で問い合わせが複数回続いた場合は有人対応につなげるなど、「このような発言にはこう対応する」という言い回しまで含めて細かくルールを設定している。過去に例のないイレギュラーな対応も、新たにルールに加えるなど継続的なチューニングを重ねてきた。こうした体制の整備は、もはや必須といって良いだろう。AI活用の気運が高まっている状況だ。
一方で、withに伴走してきたChannel Corporation 執行役員 VP of GTMの山本凌嗣氏は、新たな課題も指摘する。世間的にカスハラ対策の強化が進められようとしている中、 “副作用”が発生しているようだ。
[1]『カスハラ対策リサーチレポート』(2026年7月14日、Channel Corporation)
[2]『「早期離職」に関する実態調査』(2025年8月27日、エン・ジャパン)
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AIdiver編集部(エーアイダイバーヘンシュウブ)
「AIdiver」(エーアイダイバー)は、株式会社翔泳社が運営する、企業およびビジネスパーソンのAIの利活用にフォーカスしたメディアです。経営、ビジネス、日々の業務をAIで変革したい「AIリーダー」の皆さまに役立つコンテンツを発信します。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:株式会社Channel Corporation
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
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