書籍発刊後のソーシャルテクノロジーを取り巻く状況
米国で2008年5月に刊行された書籍『Groundswell(グランズウェル)』。ブログやSNS、wiki、YouTubeなどに代表されるソーシャルテクノロジーは、人々の行動や生活を大きく変化させ、その影響はあらゆる企業に及んでいる。著者らはこの現象を「グランズウェル(大きなうねり)」と呼び、多くの企業が対応する方法を模索しはじめている。
書籍では、テクノロジーが生み出す人々の関係性に焦点をあて、企業が消費者と良好な関係を築きながら収益を上げるための目的(具体的には、「耳を傾ける」「話をする」「活気づける」「支援する」「統合する」など)に沿った戦略づくりのノウハウを具体的な事例とともに解説している。
刊行から1年を経て、ソーシャルテクノロジーを取り巻く環境の変化についてバーノフ氏(写真左)に聞くと、企業はソーシャルテクノロジーを概念としてではなく、実用的なものとして活用し始めているという。
「本を出版すると、その本のテーマがその後の世の中に合っているかを問われますが、私は非常にラッキーだったと思います。この本を出して以来、一般企業の間でソーシャルテクノロジーに対して高い関心が生まれていると思いますし、ソーシャルテクノロジーに対してもっとリサーチをはじめる企業が増えていると思います。これまでは、それがコンセプトとしての活用でしたが、今ではより現実的に、企業の一つの価値としてスタートするという大きな変化が発生していると思います」
世界的な不況下において、マーケティングの予算をかけずにビジネスを拡大したいニーズが増している。こうしたニーズに対してソーシャルテクノロジーを活用したい企業はなにをすべきなのだろうか。バーノフ氏はつぎのように語った。
「この不況下では、テレビ・ラジオ・新聞への企業の投資は実際に減っていて、逆にソーシャルテクノロジーに対する投資のほうが増えているという具体的な流れがあります。弊社で企業のマーケターを対象にした調査において、ソーシャルテクノロジーへの投資は『減っていく』『維持』『増やしていく』といった質問をしたところ、95%が維持か増やしていくという回答でした。そういう意味ではこの不況下において、ソーシャルテクノロジーは非常に鍵を握っていると思います。何から始めるべきかと言えば、まずは小さい事から、まずはソーシャルテクノロジーを十分に理解する事から始めて、そして効果を測定しつつ学習して次へいくということが重要です」