セグメンテーションは宝探し
アクセス解析の指標というとまず、PV(ページビュー)が挙げられる。大内氏はPVを気にすることについて小川氏に疑問を投げかけると、「PVでは何もわからないのが感想で、逆に多すぎるとサーバが重くなるからもっと減らしてほしいと言われたりします。それよりもPVが誰によってどんな行動により発生しているかという内訳を見るほうが大事だと思います。PVだけみても面白くないです」と指摘。大内氏も「PVだけでは『人』が見えてきません。このセッションの本筋はセグメンテーションです。いろんなものを分類していき、そこに狙いを定めてマーケティングをしていくことが大切です」と語った。
セグメンテーションやターゲティングというと、性別や年齢、年収、時には持っている車などをイメージしがちだが、リアル店舗でなく人の顔が見えないWebの場合は、そういった情報はなかなか得ることができない。小川氏は「Webの場合は行動でセグメントをすることが多いです。新規の顧客なのか、リピーターなのか、検索行動から何を探しに来たのかも見れるので、そういったラインで分析します」と解説した。これに対し大内氏は「行動によるセグメンテーションは一見物足りないように見えますが、かえって性別などだと思い込みや誤解とが生じるケースが多いです。行動であれば、ユーザーが何を欲しているのか何を探しているのかとかを直結して見つけることができます」とし、両氏が議論を重ねるうちに“セグメンテーションは宝探し”というキーワードに辿りついたことに触れた。
「宝探し」について小川氏は「セグメンテーションをすることによって『あっ、こんな動きをしていたんだ』とか、『このグループの人たちはここで離脱していたんだ』というのが見えてくると、課題が見え改善策を見つけることにつながります。この作業は、見えない犯人を追いかけていくという、すこし探偵気分になれる部分があります。そういった点から『セグメンテーションは宝探し』という発想に辿りつきました」とした。
“入り口ページ”でのセグメントテーション
最初に大内氏が挙げたのは、どのサイトでも必ずやっているであろう“入り口ページ”でのセグメンテーションだ。検索エンジンからの流入が増えた現在では、サイトのトップページからではなく、商品の詳細ページなど途中のページが入り口となるケースが増えている。小川氏も「同じサイトでも特にユーザーが流入するページによってユーザーの属性はずいぶん異なるため、入り口によるセグメンテーションは非常に重要だ」と話した。
また、訪問者がサイトを利用しようと決めるまでの時間はかなり短く、入り口のページでどれだけ心をつかめるかが重要とし、入り口でセグメンテーションしたあとは、次にどのページに遷移し、さらにどこでサイトを離脱しているかをみていくことが重要とした。またページ遷移をせず離脱する、いわゆる“直帰”を減らすなどの課題を解決するプロセスを解説した。
スライドの例では、直帰率が53%とあり、これに対し小川氏は「直帰が半数を超えてくるというのは、訪問者の望んでいたものがなかった、あるいはニーズに合ったコンテンツを提供できていないんだろうということがわかります。ニーズに合ったコンテンツを提供すれば結果的に直帰率が下がるという考え方なので、直帰率を減らすという考え方よりはその先の遷移を増やすということが大切です」と語った。また、大内氏は、製品一覧をクリックしたあと離脱したのであれば「商品が見つけられない状態では?」と推理できれば、製品一覧ページを改善して解決に至ることもあると、スライドの例での対処法を説明した。
参照元×入り口ページでのセグメンテーション
続いて大内氏が体験した、家電メーカーサイトの事例が紹介された。このサイトは大規模のサイトで、デジタルカメラや液晶テレビのシリーズなどがあり、そこに価格比較サイトからユーザーが来たと想定したケースだ。まずデータを集めていない状態で次の意見が出たという。
- 価格比較サイトからの人は仕様など必要な情報を見たらすぐに帰っていくので、あまりもてなすことはできない
- 買う直前の人だからもっとじっくり見てくれるはずなので、大切に扱ったほうがいい
大内氏は「これらの意見はどちらも正しい意見と言えます。ここで閲覧開始のセグメントを見ることになりました」とし、同サイトへの検索エンジンからの訪問者と、価格比較サイトからの訪問者の動きを比較するスライドを示した。
検索エンジン経由の訪問者の場合、単一の製品情報を深く見る傾向があり、直帰率は23%、価格比較サイトからの訪問者は、目当ての製品に加えそれと似た製品も比較する傾向にあり、直帰率は12%となっている。
大内氏は価格比較サイトからの訪問者の動きについて「スライドには出しませんでしたが、平均PVなどを見てみると、かなり熱心に見ています。もう買おうと思っているけれど、少し高めの商品を買ったらどうなるのかなとか、少し安いのを買っても同じかなということを最後にメーカーのほうに確認に来たということで、これはかなり大事なユーザーだということになってきます。自社製品の比較ということは意識していませんでしたが、比較できるページを用意することで、いい対処ができるはずです。議論で迷ったときにこうしたデータがあると、チームの中で迷わず進んでいけるでしょう」と、議論のための解析データの重要性を示した。