「ローソンのサンドイッチはおいしくないですね」からスタート
まずは、〝謎ロー〟の部活、その目に見える過去の成果を足早に紹介しよう。
〇二年一〇月~〇三年二月にかけて行なわれた〝サンドイッチプロジェクト〟は、「ローソンのサンドイッチはおいしくないですね」という一通のメールから始まった。そのメールを見せられた担当マーチャンダイザーが、パンひとつとっても一年もかけて開発をしていることや、口どけと保湿を保つための工夫など、いかに力を入れて開発を行なっているかについて、サイト上で公開した。
その工夫や努力が、部員の納得感を高めたが、その過程で部員による〝もっとおいしいサンドイッチ開発プロジェクト〟が発足した。このプロジェクトには千人以上が参加し、マーチャンダイザーとモバイルを介して活発な意見交換がなされ、あるいはアンケート調査が行なわれ、その進捗が随時サイトにアップされ、部員全員で共有された。
この時は実際に新商品の開発には至らなかったが、貴重な意見が蓄積された。さらに、マーチャンダイザーが力を入れていた玄米パンサンドについて意見を募ったところ、辛口の意見が舞い込んできた。その評価をもとに、ハムの種類やチーズの並べ方まで変更し、名前やキャッチフレーズも部員から募集。
毎日食べるものだから、と販売価格もできるかぎり下げて、〝新・玄米パンサンド〟が誕生した。売上は旧来の商品に比べ、二〇%増となった。大成功の事例だ。
さらに〇六年には、〝プリンプロジェクト〟が発足する。これは、開発担当者からの投げかけで始まったプロジェクトだ。「コンビニでプリンが売れない。デパ地下には行列をなしてまで女性がプリンを購入するのに……。女性にも喜ばれるようなプリンを開発したい」という切実な叫びだった。
女性に限定して部員からプロジェクトメンバーを募り、意見を求めたところ、「既存のプリンは甘すぎる、量も多すぎる」という意見が多く寄せられた。開発担当者は、試食をするに際して一口、二口しか食べないから、どうしても味にインパクトを求める傾向があるということが明らかになった。
大きな収穫だった。さらに、滑らか派と硬め派は真っ二つに分かれるということもわかり、両タイプを作ることとなった。添加物にも批判が集まった。そうした意見を踏まえて、〇七年八月にゼロから〝謎ロー〟が関わって生まれたプリン二タイプが発売され、好評を博した。
さらに、同年四月から始まったのが日清食品との共同開発である〝カップ麺開発プロジェクト〟である。日清食品からのリクエストで、縦型ビッグタイプのカレー味の新商品を開発するに当たって、味の方向性について意見を聞くというものであった。玄米パンサンド同様、トライアルで実際に商品を発売して、それを食べてもらって意見を聞き、改良するという手法であった。
そして生まれたのが〝チキンカレーヌードル〟。また翌年には、さらに改良を加えた第二弾、〝日清カレーの極み チキンカレーヌードル〟が誕生する。その際のプロジェクトメンバーは実に四三一八人。具にじゃがいもを加え、スープのとろみを増して麺とよくからむようにし、さらに一七種類のスパイスを使用した。このプロジェクトはその後も続いていて、二〇一〇年四月には第四弾が発売された。
「毎回、ちょっとずつ、様子を見ながら生産量を増やしています」と高橋氏は言うが、しっかりと定番商品として成長している。というよりも、この開発プロジェクト自体が定番化し、いわば恒例行事にすらなっていると言える。
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