プロジェクト:先進的な技術に真っ先に取り込んでアウトプット
iPadとiPhoneを連携させたパーティゲームを開発
ケイ・ラボラトリーを前身とし、モバイル技術の実用化で最先端を走り続けてきたKLab(クラブ)株式会社は今年、10周年を迎えた。
昨年からソーシャル専用ホスティングと共に多くのソーシャルアプリケーションを提供しており、現在はグローバル規模のソーシャルやクラウドの研究開発型サービス企業を目指している。
その技術開発力の柱となっているのが、スタッフ職を除くほとんどが技術者という「人材」である。そのため、技術者がより快適に仕事ができるよう、スキルアップを目的とした勉強会や研修などのほか、キャリアプランに即した人事制度や開発進行のためのインフラ整備など、様々な施策がとられている。
今回ご登場いただいた竹井英行さんもそんな環境を享受しているという1人、研究開発部で2年目を迎える期待の星だ。
なお研究開発部は、主にソーシャルアプリ開発を担当するアプリケーション、そのバックヤードを担うネットインフラ、そしてプロトタイピングの3グループに分かれており、竹井さんは通常はアプリケーショングループの一員としてシステム開発のプロジェクトに参加している。しかし、“何かあれば”プロトタイピンググループの一員に"ヘンシン”するという。
「iPadやAndroid、iPhone4といった新しい技術が登場するといち早くリサーチして、どのような機能があるのか検証したり、できるだけ短期間でプロトタイプモデルを作ったりするのが、プロトタイピング部の仕事です」
プロトタイピング部が開発したアプリケーションについてのニュースは、2010年は特に賑やかだ。春に世界初となるKindle用エミュレーター、通称「オレオレKDK」を開発し、その上で遊べる「テトリス」「ロードランナー」などのゲームを発表した。その後、iPadとiPhoneを連携させて楽しむ『PartyKLabPoker』、『PartyCoupleMatching』などを発表。いずれも日本はもとより、海外のメディアからも注目され、大きな反響を呼んだ。
「とにかくできるだけ早く新しいものに触って、アウトプットを出す。そういう『新し物好き』なエンジニアが向いていますね。だから、自分がプロトタイピンググループに配属されたんだと思います」
そう竹井さんは笑う。事実、iPadとiPhoneを連携させたアプリケーションが発表されたのは、5月26日。iPadが米国で発売された4月3日からわずか50日後、日本でiPadが発売される2日前である。確かに新しいものに飛びつき、すぐに自分のものにする反射神経が求められそうだ。
「実際にはもっと短期間でした。どうしても日本でのiPad発売に間に合わせるため、審査の時間を考慮し、プレス用に動いているシーンの動画が必要となると、開発には10日しかなかったですから」
もともとプロジェクトの発端は『たばこ部屋談義』だったそうだ。
「休憩時間に集まって『iPadとiPhoneと連携できたらおもしろいんとちゃう?』と『やってみよう』ということになって、私ともう一人のエンジニアでデモを作ろうということになりました。」
その時間は、社内の『どぶろく制度』という社内制度を利用して捻出した。標準労働時間の10%以内であれば、上司の承認なしに何でも好きな仕事に時間を費やすことができるという制度だ。
「そうして作ったデモをGW明けの企画会議に出したら『いいんじゃない?』と承認され、トントン拍子にやることになったんです」
『どぶろく制度』もKLabらしい制度だが、こうした「ノリ」でプロジェクトが決まるのもKLabではよくあることだという。その後、企画担当者2名に社長までが乗り出して、竹井さんを含む開発担当者2名とともに、様々な意見を出し合いながら、仕様を確定していった。
「麻雀やカードゲームなど、いろんな案が登場したのですが、実現性とインパクトを重視して『ポーカー』と『パーティゲーム』に決定したんです。自分は昔から、『フィーリングカップル』というテレビが好きで、大学の学園祭でも手づくりで作ったくらいだったんです。それで、ぜひ担当させてくださいと皆さんを説得しました」
開発がはじまったものの、プロジェクトで時間もタイト。インタフェースを担当するデザイナーは業務の合間をぬって作業することになっていたが、時間がない中で拝み倒してつくってもらったという。
「広報から、プレスリリースは絶対に予定通りiPadの発売日までに配信したい。さらにプロモーション用の動画も必要!とおしりを叩かれまして(笑)。加えてBGMの音楽の使用申請など、法務の方々の協力をいただきながら、プログラム以上にまさに時間との闘いでしたね」
後半は合宿状態となり、寝ていなければ、人としゃべっていない日もあったという。しかし、まったく苦にならず、早く形にならないかとワクワクしていたという。
「とはいえ、一番きつかったのは、BluetoothでのiPadと複数のiPhoneの通信部分です。幾度となくデバッグを繰り返し、ちゃんと動いたときは、やっぱり『やったー!』と爽快な気分になりました」
そうして開発したiPad&iPhone連携アプリは、IVS(Infinity Ventures Summit)2010 のLaunchpad で4位入賞を果たす。楽しく仕事をし、成果を出す。コツは「ノリと勢い」と語る竹井さんのポジティブな仕事術を紹介しよう。(次ページへ続く)