PCと比べて難しい「モバイルアクセス解析」
はじめまして。デジタルフォレストの林です。この連載では「モバイルアクセス解析」の開発や分析に携わっている人たちの情報をお伝えしていきます。モバイルアクセス解析はPC向けWebサイトのアクセス解析に比べて、開発するのも利用するのも難しいといわれていますが、その実態を解明していこうと思います。連載第1回目は、「モバイルアクセス解析とは?」と題してWebアクセス解析の果たす役割を考察し、後半ではモバイルアクセス解析の基本的特徴と今後の方向性をお伝えします。
Webアクセス解析がなぜ注目されるのか?
14年前の1993年、当時米国イリノイ大学の学生であったマーク・アンドリューセンがWebブラウザMOSAICの開発を成功させたことがきっかけになり、Webは急成長を遂げてきました。現在では企業活動にとって重要な情報戦略インフラとなっています。Webの成長とともにWebアクセス解析が果たす『役割』は増え、企業活動においてますます重要になってきています。
下図にWebアクセス解析が果たす役割の変遷を示しました。MOSAICやそれに続くNetscapeが主に利用されていた当時(過去)は、Webサーバにアクセスする『アクセス数などの基本的な解析』が行われ、Webサイトの人気度や、Webサイトを構成する各ページの重要性を技術的な観点で評価するのが主な使い方でした。
次に、GooやYahoo!などの検索エンジンが利用されるようになると、LPO(ランディングページの最適化)が重要になり、Webサイトをアクセスしてくるユニークユーザの特徴、特に行動パターンの分析(行動分析)を行い、Webサイト作りに反映していくようになりました。このあたりからWebアクセス解析は、企業のマーケティング活動、とくにプローモション活動に利用されるようになってきたのです。
現在のようにWebアクセス解析が注目されるようになった最も大きな理由は、インターネット広告市場が急成長したためと筆者は考えます。電通によると、2006年にはインターネット広告市場の成長率は29.3%、市場規模は3,630億円にまで成長しているとのことです。そこで、Webアクセス解析を利用した広告効果分析は、企業のマーケティング活動に必須のツールとして利用されるようになってきたのです。
では「Webアクセス解析の今後は?」ということに関して言うと、大きく2つの方向に分かれていくと思われます。ひとつ目の方向性は、単純にWebサーバへのアクセス数や、アクセスに来たユニークユーザの数などを評価して、Webサイト作りに利用していく「従来型利用方法」。もうひとつの方向性は、刻々と変化する業界や業務に合わせて重要な指標(KPI:重要業績評価指標など)をアクセス解析結果から抽出し、事業戦略や経営戦略に利用していく「マーケティング活動支援型利用方法」です。
モバイルアクセス解析と、その特徴
次にモバイルアクセス解析について考えていきましょう。