SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

定期誌「MarkeZine」

第78号(2022年6月号)
特集「現場に再現性をもたらす マーケターが知っておきたい手法&フレームワーク」

定期誌購読者なら
誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究(PR)

サイト解析なくしてビジネスの成長なし
ビジネスイノベーター、ライフネット生命保険のAdobe SiteCatalyst活用術

 「インターネットで保険を販売する」という革新的なビジネスモデルで、保険業界に旋風を巻き起こしているライフネット生命保険。ネット上に店舗を構える手前、アクセス解析ツール導入は必須であり、現状ではアドビ システムズのAdobe SiteCatalystを活用している。導入を決めたポイント、導入後の成果、今後の課題など広範な視点について、同社マーケティング部部長代行の堀江泰夫氏に話を聞いた。

13ツールを検証し、Adobe SiteCatalystを選択

 子育て中の若い世代にも手の届く安くて信頼できる生命保険を提供したい、という熱い思いから、「ネットで生命保険を販売する」という革新的なビジネスモデルで2008年5月に開業したライフネット生命保険。ネット上で扱う商材が生命保険であることから、アクセス解析ツールの導入は必然だ。

ライフネット生命保険トップページ
ライフネット生命保険トップページ

 そんな同社は、アクセス解析ツール導入にあたり、かなり念入りな検討を進めた。もともと同社の株主は、同じくネット上に店舗を持つマネックス証券を傘下に収めるマネックスグループであり、サイト解析そのものは同社創業時からの前提条件だった。

 そのため、解析手法、解析するスタッフおよび体制を経営陣も含めて重視していた。サイトの作成1つにしても、どの企業に委託すれば同じようなプライオリティーとなり、どう解析できるのか、という視点で創業当初から見ていたという。

 マネックス証券自身にヒヤリングに出向いたり、同業他社の手法を調査するなどして、合計13ツールを検証した結果、Adobe SiteCatalyst(以下、SiteCatalyst)を選定した。

 「予算、機能という側面から見た際にSiteCatalystが当社のビジネスに1番最適でしたし、メジャーなツールだったため、制作会社との連携を考えた時に、外部フォローを得られやすいという点も選定ポイントとなりました。実際には、他のツールも用途に応じて併用する形にしています。また、リスティング業務に関してはシステムに頼った方が効率がよいと判断し、自動入札ツールのAdobe SearchCenter+も導入済みです。結果、自動管理が実現し、人的リソースの極大化に寄与しています。」(堀江氏/写真右)

分母が足りないと解析は活きず

 さて、このように緻密な検証を背景にSiteCatalyst導入に至った同社だが、「それだけ練りに練って導入したわりには、課題が多かった」と堀江氏は導入当初を振り返る。最大のネックとなったのは「集客」だ。

 解析比較しようにも、分母が足りないという課題が待ち受けていた。設立当初は外注リソース活用がほとんどだったため、予算と効果との兼ね合いがあり、試したいことも試せないジレンマがあった。そこで、訴求軸自体を変えながら、メッセージを大きく変えてみるなどの試行錯誤を繰り返していった。

 しかし、次のフェーズでスピード感を出す必要があると判断。内製スタッフを整え、サイトと解析ツールを見ながら微修正を行うなどの一体チーム作りを推し進めた。そして、2009年2月にはマーケティング部15名弱の現体制が整った。この一定の最適なリソース配置が実現した時期と、分母となる流入(集客)が増えてきた時期が一致。会社の成長と人材の採用スピードのバランスが保てたことも奏功した。

時流に合わせたネタづくりで存在感をアピール

 さて、社内リソースの充実が図れた段階で、集客アップに向け本格的に動き出すことになる。保険という商材は、単純に次のアクションをとらせるのに最適化するという通常の勝ちロジックが通用しないところがある。検討期間が長い商材であるだけに、選択肢を多く与えた方が選びやすい。

 そこでまず同社のとった戦略は、時流に合わせた仕掛けを作り、サイトへ導く手法だ。例えば、ガソリン価格が高騰した時期には、ガソリン価格の高騰に皆の注目が集まっていたため、自動車のスピードメーター的なデザインのバナー広告を作り、クリックを誘発させたりした。Webでは時事ネタが最も反応がよいという特徴をうまく活用した事例だ。

 また、2009年11月には、ライフネット生命保険の原価を公開。この公開内容は、実際には保険手数料の実態を表すものとなり、メディアが注目。結果、次のような好循環が生まれた。

  1. メディアが取り上げ、はてなブックマークサービスで話題になる
  2. Yahoo!ニュースに取り上げられる→サイトへの流入増加
  3. サイトのページビューが増えたことをニュースリリースとして発表
  4. ニュースリリース配信サービスを用いて、3のニュースリリースを再配信
  5. 4により、3を見ていなかった人にも認知してもらう好機となり、2度目の波が起こる

 このようにしてページビューが集まったことにより、ライフネット生命保険に勢いがつき、メッセージコンセプトが固まり、骨太なメッセージを発信していく方向性が定まっていった。

3つの指標でサイト解析

 その結果、分母は充実。ここからアクセス解析ツールが活きるフェーズに入ってきた。広がるところから、絞り込んで組み立てていくという段階だ。この段階においてサイト解析を行う上で、指標として次の3つを重視している。

  1. (設定した)主要ページへの訪問率
  2. 申込手続き開始ボタンのクリック率
  3. 申込手続き開始ボタンをクリック~申込完了までの到達率

 まず、1については、必ず見せたい主要ページを10ページ弱ほど設けている。

 サイト訪問者全体の何%がこの主要ページに到達したかを見ることで、購買の意思をある程度持ってサイトへ訪問したか否かの指標とすることができる。1は日次で実績が把握できるため、週ごとにサイトの内容を修正しながらさらなる主要ページ到達率向上を図っている。

 次の2の段階になると、申し込む意思が明確でなければ押さないボタン。そのため、サイトに訪問した動機がポジティブなものか否かで、クリック率は大きく異なる。ここでは週単位の積み上げと、その月の流入要因は何か、という分析を掛け合わせた解析で見る必要がある。そのため、月次くらいのスパンで見て改善している。

 最後に3の工程になると、ログイン後の領域になってくるため、システム的にさまざまな絡みが出てくる。そのため、手を入れるのは四半期に1回程度となる。バグの問題などの微修正であればすぐに修正可能だが、申し込み時の不要な質問項目そのものを見直し精査するなど、アナログ的な作業も加わる。

 こうした改善をしても、実際に申し込み手続き上では、小さな数値の変化にすぎないとも言える。しかし、コスト的に考えた場合、ここで落ちる一人は、いくつものハードルを越えてきた一人となる。そのため、たとえ遷移率1%の差としても、大きなロスとなるため、ここを改善できるかどうかは重要課題となる。

 こうして見てくると、1~3の各段階では、実績把握→修正・改善の流れが次のようにまとめられる。

  • 1の段階:日単位→週単位
  • 2の段階:週単位→月単位
  • 3の段階:月単位→四半期単位

SAINT機能活用と情報共有

 一方、ライフネット生命保険では、SiteCatalystのSAINT機能も活用している。通常、広告測定用のトラッキングコードは記号でしかないため判別しづらい。これを、媒体名、メニュー名、キーワード名などわかりやすい形に置き換えをする。また、リスティング広告なら、サーチかコンテンツか、社名か非社名か、などのカテゴリー分類情報を付与することで分析もしやすくする。つまり、SAINT機能を活用することで、全員が共通で理解できる環境が構築でき、分析作業の負荷が軽減できる、という利点がある。

 同社のマーケティング部には15人弱のスタッフが所属しているが、少数精鋭で業務を遂行しているため、複数の業務を兼務するのは必然だ。このスタッフ全員が、サイト上の動向を共通で把握しておく必要がある。プロモーション活動の施策検証や人気の出てきたページを知ることで次の成長機会を生むこともできる。

 また、デイリーチェックに有効なのが、SiteCatalystのダッシュボード機能となる。複数の情報をばらばらにみるのではなく、重点的にチェックすべきレポートをひとまとめに保存し表示できるダッシュボード機能を活用すれば、短時間でポイントを押さえて動向把握ができる。こうしたダッシュボードを用意するのは、選任担当一人で行えるので、皆はそれを見るだけでよいという利便性もある。

複数サイトのノウハウが得られ、勘所を知っている

 ところで、ライフネット生命保険は、SiteCatalystをはじめとしたAdobe Omniture製品の導入を、メディックス経由で行っている。常に複数検証して選択するスタンスの同社がメディックスを選んだ理由、直販ではなく外部パートナーを活用する背景を、堀江氏は次のように語る。

 「メディックスさん経由でツール導入させていただく最大のメリットは、新しいツールが出た際の対応です。メディックスさんが当社で試したことは、他社でも試していただけるなど、お互いに利点が生まれます。直販でツールの導入を行うと、学んだ経験は自社にしか蓄積されません。逆に、メディックスさんに入ってもらうことで、複数のサイトで試したことを、自社サイトで試せることも大きいです。そもそも最終的に保険を安く売るのが当社の使命ですから、ツール導入、活用に内部リソースを割くのは本末転倒です。幅広いノウハウを蓄積したメディックスさんから支援をいただく方が、改善の勘所が事前にわかっているため効率的に進められると判断しています。さらに、海外の最新情報をいち早く教えていただけるなど、目に見えない面でも非常に有意義な関係が築けており助かっています。」

 メディックスがライフネット生命保険に提供したノウハウの1つが、サイト内をチェックし、コンバージョンに寄与したページを見つけるための貢献率レポートだ。

 例えば、某有名雑誌でライフネット生命保険がナンバーワンになったという記事がWeb上に掲載された際、コンバージョンレートが高くなった。しかし、ライフネット生命保険のトップページでお知らせ枠が3行しかなく、更新すると消えてしまうことによりコンバージョンレートが落ちてしまうという課題を発見。更新してもトップに出し続けることで高いコンバージョンレートを維持できる点などをアドバイスし、サポートしている。

 そのほか、間接効果を検証できるようSiteCatalystをカスタマイズ。一般的に通常の導入方法では、複数接触してきた場合でも、最後に流入した広告媒体しか計測されない。金融媒体の場合、検討期間が長く、複数回にわたり広告流入が起こりやすい。その中で、初回接触した媒体評価が特に重要と、ライフネット生命保険では考えていた。

 そこで、メディックスでは、カスタマイズにより間接効果が計測できるよう設計し、レポートも納品。集客施策の最適化を図るサポートを行っている。ライフネット生命保険も、こうした点を高く評価している。

ネット生保ならではの自動査定の可能性も

 最後に、今後試していきたい点について聞くと、ライフネット生命保険らしい課題の解決ができないかと模索しているようだ。

 ネット上で生命保険を扱う保険会社にとって、永遠のテーマとなるのは「間違った内容で入ってくる訪問者を防止すること」。本当に本人が入力しているか、病気をしているか否か、顔が見えない弊害で真実が見えにくい。確かにこの点はリスクと認識しつつも、堀江氏はこれを逆手にとった前向きな将来像を描く。

 「通常は紙で申込を受け付けているかと思いますが、当然、紙では行動を解析できない。しかし、ネットの場合は、申込書入力時の入力データも把握できる。例えば、間違いを見つける“キラー質問”を作れば、間違う人がどのような行動を取るのか、データが取れる。そうした情報が継続的に取れれば、一定のパターンが見つかるかもしれない。そういった、査定方法を構築し、ブラッシュアップしていけば、先々は自動査定システムを構築できる可能性がある。」

将来的にはテレビCMの効果もガラス張りに

 一方、テレビCMを利用した際の効果検証も大きな課題だ。

 アクセス解析ツールを活用すれば、どのサイトからどんな人が来ているのか、おおよそは分かるが、テレビCMで認知した場合、それがテレビCMを見て来た人なのかが、データ上でははっきりと分からない。

 こうしたテレビCMへの施策としては、現状、地域別にIPが取れているため、実際にコンバージョンした特定の都道府県に当てはめ、データ解析を行っているようだ。今後、ネット企業のテレビCM活用は増えてくるだろう。こういった場面での解析手法の進化が求められてきそうだ。

 ライフネット生命保険は「ネットで保険」という革新的なビジネスモデル定着に挑むべく、少数精鋭で最大効果を目指し、パートナー企業とも協力しながら新たなるアクセス解析ツールと共に歩み続ける。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

高澤 里美(タカサワ サトミ)

外資系IT調査会社での調査・分析、半導体産業新聞記者などIT関連分野で幅広く十数年の経験を積んだ後、フリーライターとして始動。IT分野を中心に、各種執筆活動を継続中。最近では、各種記事・原稿執筆に加え、IT関連企業各社のプレスリリース、ニュースレター、広報誌なども手掛ける。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2011/04/14 17:26 https://markezine.jp/article/detail/12256