【分析2】チャネルごとに訪問の性質は異なるのか?
このサイトの場合、購入までに複数回に分けてサイトを訪問していることが多いと検証できた。次に、同じユーザーは異なるチャネルにタッチしてサイトを複数回訪問しているのかを調べてみよう。人によって利用するチャネルが変わらないなら、間接効果が直接効果によって上書きされることが少ないためだ。
そこで、各チャネルがどのタイミングでタッチされる頻度が高いのかに着目した。一度の訪問で購入に至る場合を「直接」、複数回の訪問は「ファースト」「中間」「ラスト」に分類した。

複数回の訪問で購入に至った「ファースト」「中間」「ラスト」を足すと42%、ラストタッチで効果が上書きされる可能性がある「ファースト」「中間」は全体の26%を占める。
チャネルによる違いを見てみると、メールだけは流入した時の訪問でそのまま購入に至る「直接」の率が高い。購買の動機が高い状態でリンクをクリックしたか、LPOが適切だったかのどちらかだろう。
「ファースト」「中間」「ラスト」の割合が、チャネルごとに異なるようだ。そこで、間接(「ファースト」+「中間」+「ラスト」)のみを抽出し、全体を100%として比率をチャネルごとに比較してみた。

「ダイレクト/参照元なし」はラストタッチになる確率が最も高い。他のチャネル経由で訪問したユーザーが、購入意思を固めて再訪問するために「お気に入り」を使ったのだと想像できる。つまり、ラストタッチだけで分析した場合、「ダイレクト/参照元なし」が他のチャネルを上書きしている可能性が高い。
「有料検索」はファーストに来る率が高いため、新規顧客を獲得するきっかけになっていると分かる。
「自然検索」は有料検索よりもわずかにラストタッチの割合が高いのみだ。「楽天」のような社名やサイト名による検索は、ブックマークと同じように意図的に訪問する手段として使われるため、もっとラストが多いだろうと予想していたが、サイトによって流入する検索キーワードの種類は異なるのだろう。
【考察】訪問の全てを追う必要はあるのか?
冒頭で紹介した『Appropriate Attribution』では、見るべき指標としてファーストタッチとラストタッチの割合を提唱している。
適切なアトリビューション比 = ファーストタッチの売上 ÷ ラストタッチの売上
シンプルすぎるのではないか? と心配になったが、確かに流入チャネルごとに見てみると、ファーストでもラストでもない中間としての訪問はあまり多くない。
中間としての訪問は少ない

これなら、シンプルにファーストとラストだけに注目しても、大きな問題はないだろう。

『Appropriate Attribution』では、この指標の活用方法として、キャンペーンの目的を「獲得」「説得」「コンバージョン」に分け、ファーストとラストの割合を最適化するという考え方が紹介されている。例えば、ファーストになる率が高ければ、ラストによる売上が少ない場合でも、顧客を獲得するきっかけになっていると判断できる。ラストタッチが多いキャンペーンやチャネルは、最後に背中を押して購入へと誘導できている。
【今後の課題】間接効果を加味したチャネル・広告コストの最適化を検討
今回は、間接効果を考慮すべきかの判断と、データ収集のための実装までを進めた。間接効果の大きさや、チャネルによる違いは、扱う商材やサイトによって異なる。まずは、自社のサイトにおける間接効果の高さを把握し、高い場合はチャネルによるタッチの違いを調べてみるのが良さそうだ。
もう一歩踏み込み、間接効果を加味したうえでチャネルや広告のコストを最適化する方法を考察していきたい。
- 分かることと知るべきことは異なる
- アクセス解析ツールで取得したデータは、別のツールで集計や加工した方が良い時もある
- 意外な結果が出ることもある。勘は当てにならない
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