Q. 今後、位置情報サービスで勝ち抜くためのポイントは何だと考えていますか?
“いかに日常に根ざしていくか”がポイントだと考えています。
アイテム課金で収益化が容易な位置情報ゲームは、今後も色々と登場してくると思いますが、ゲームという特性上、長く使い続けてもらうことはなかなか難しいでしょう。
また、奇をてらった位置情報サービスも、一時的に利用されることはあっても継続利用は望みにくいと思います。それでは大手企業のプロモーションに活用されることはあっても、安定した収益化は見込めません。
サービスとして生き残っていくためには、一過性のブームに終わらない潜在ニーズのあるサービスを提供し、日常に根ざしていく必要があるのではないでしょうか。
当社の様な地域情報系のサービスもそうですし、「Neer」のような家族や友達の位置情報共有を目的としたサービス、「Wondershake」のような同じ場所にいる人との交流を目的としたサービスも有望ではないかと思います。
Q. 事業をすべらせないためのコツを教えてください
地の利がある分野で、計算が立ちやすい事業を行うことだと思います。もしくは、計算が立ちにくい事業にチャレンジするのであれば、別途安定した収益を見込める事業を並行して行うことや、スモールスタートすることも考えられます。
当社の例で言うと、「口コミサービス × モバイル」という私の地の利を活かした分野で事業を立ち上げることにしました。また、当面はお店向けの販促広告事業の立ち上げが難しいと判断し、まずは計算が立ちやすい専門サイトへの送客アフィリエイト事業を軌道に乗せることにしました。
他社で言うと、学生という立場を活かしたバイト情報サイトの「ジョブセンス」や、「IT × 外食経験」を活かしたラーメン・つけ麺の通販サイト「宅麺.com」などが良い例かと思います。また、どうしても取り組みたい事業があるのであれば、語学学習サイトの「Lang-8」のようにスモールスタートするのもありですね。
Q. 今後の目標を教えてください

サービス面では、日常に根ざしたサービスにすべく、自社で利用シーンに合わせたサービスを提供していくと同時に、他社と積極的に提携していくことも考えています。
事業面では、専門サイト向けのアフィリエイト送客事業が軌道に乗ってきましたので、お店向けの販促広告事業に取り組んでいきたいと考えています。
いずれは、お店だけでなく自治体の情報も集約し、社会インフラとして活用してもらえるようなサービスにしたいと思っていますので、一歩一歩着実にステップアップしていきたいですね。
インタビューを終えて
ベンチャービジネスを始める場合、経営者の考え方にもよるが大きく分けて2つのパターンがあると思う。1つは「小資金で、できることから始める」。もう1つは、「投資を受けて、将来大きく育てる」。
谷郷氏の場合、外部から投資を受けながらも、最初からある程度の売上が立ちやすい仕組みを整えていることから、ベンチャー経営スタイルとしては前述2つのバランス型であると言える。
谷郷氏の話からは、将来へのロードマップにぶれがなく、さらに目先の売上もしっかり立てながら、着実に進んでいるように感じる。大きな絵を描きならも足元の安定感を谷郷氏に覚えるのは、自身が言うように経験を基に「地の利を活かした分野」で事業を立ち上げていることにも起因するのではなかろうか。