“ダダ漏れ”で危機感 放送に載せきれない一次情報配信を検討
動画ニュースサイト「News i」は、TBSをキー局とするJNNが1999年に開始した。現在、主にTBS地上波で放送したニュース映像に加え、系列地方局が別途ローカルニュースを配信している。このように、ネットでのニュース配信の取り組み自体は早くからスタートさせているが、より積極的な展開を探るようになったのは、「Ustreamでの“ダダ漏れ”がきっかけだった」と鈴木氏。

報道局
デジタル編集部
担当部長
鈴木 宏友氏
「3年ほど前にまだ地上波を担当していた頃、“ダダ漏れ”が盛り上がってきていました。これはテレビ放送にとって、いずれ脅威になるかもしれないと思い、すぐにネット動画の研究を始めたのです」
放送は100万から1,000万人単位の人に向けて展開しているのに対し、ネットならわずか1万人でもチャンネルとして成立してしまう。その中でテレビ局がネットをどう使うかを検討した際、まず挙がったのが「放送に載せきれないニュースソースを出せないか」ということだった。
放送は時間に制限があること、そして編集によってクオリティを維持するという性質から、記者が取材した動画素材のすべてを提供することは不可能だ。
「それだけに、テレビ局には『都合よく編集しているのではないか』と疑問の声が寄せられることもあります。そこで、自ら情報を取りに来られる方に、ネットでならソースを提示することができると考えました」
ネットライブ配信とTwitter連携のトライアルを民主党代表選で実施
だが、編集をせずに動画素材を放出するリスクは大きすぎる。デジタル編集部に異動した鈴木氏は、他局に比べて対応が遅れていたSNS対応と並行して、ネットを活用した災害時の報道の整備を急務として挙げたものの、社内の足並みが一気にそろったわけではない。
「素材をそのまま出すことのリスクや権利関係の問題だけでなく、取材した内容を編集して提供するのが我々の仕事だというのが大前提なので、社内では『編集責任を行使しない報道機関はあり得るのか』という議論も起こりました」と鈴木氏は振り返る。
かといって、このまま指をくわえているわけにもいかない。そこで同社が注目したのが、2010年当時に世間で大きな関心を集めていた民主党代表選だ。リアルタイムでの一次情報が求められていること、また編集せずに配信しても、内容に誹謗中傷などが含まれる可能性が極めて低いことから、トライアルの意味を込めて代表選のネット配信に踏み切った。
配信にはすでに連携などに関してコンタクトを取っていたUstreamを使い、またブラウザの脇にはTwitterの書き込みも表示した。SNSの書き込みには懸念もあったというが、この部分についてはTBSが編集責任を負わない形とした。