震災時のライブ配信に大反響も、「携帯にも配信できていたら」と悔しさ
その結果、代表選の配信は10万規模のアクセスが集中し、Twitterには約8,000件の投稿があった。「思いのほかビジネスマンの視聴が多く、問題になりそうな書き込みもほとんどありませんでした。考えてみれば、平日の昼間にビジネスマンはテレビを見られませんから、昼間に情報を享受するチャネルとしてインターネットの役割はすごく大きいんだと認識させられましたね」。その後、YouTubeとも連携について検討を重ねていった。
同社では、かねてからネット配信の災害時の活用を見込んで準備していたものの、そのタイミングが思いのほか早く訪れた。代表選から約半年後、東日本大震災が発生したのだ。震災発生の当日夕方には、CS「ニュースバード」の内容をUstreamに展開、夜にはYouTubeでのライブ配信を開始した。
この一連の展開には、「TBSがネット配信の先陣を切っている」と大きな反響があったが、一方で鈴木氏は、「PCで視聴できた人は安全な場所にいた人。携帯にも配信できていたら、もしかしたらその情報が生死を分けたかもしれない」と悔しさを語る。同社では震災時に得た知見を元に、これからも有事の際に報道機関ができることを探っていく意向だ。
ビジネスモデルは模索中 ソーシャルは双方向コミュニケーションへ

ニュース報道の多チャンネル化は有意義だが、どのニュースサイトにも収益化の課題はのしかかる。同社の課金モデルでは「TBSオンデマンド」が好調だが、よほどの差別化ができない限り、報道コンテンツへの適応は難しいという。現時点では、「編集責任を維持した上で、個々に適した動画を提供するようなカスタマイズができれば可能性があるのでは」と、他媒体への動画提供の構想を練っている段階だ。
さらに鈴木氏は、TBSが取材した一次情報を何らかの形で提供することにも関心を寄せている。
「有事の際は特にニュースソースが問われますが、TBSの信頼をもってそれに対応することができると考えています。当然、今後の当社の放送と配信を通して、その信頼をさらに高めていかないといけないとも思います」
今後はFacebookなど、ソーシャルメディアのさらなる活性化も目論む。現在のコミュニケーションの形は、コンテンツについてユーザーから意見や指摘が寄せられると、運営側が返答するというもの。鈴木氏は、「一歩進めて、“マス”コミュニケーションではなく、1人ひとりの反応を得て報道や編集にフィードバックさせていきたい」と語る。今後も、時代に合わせた報道のあり方を追求していく。
TBSとJNNは3月10日より、TBSホームページ内に特設サイト『震災から一年 再起に向けた歩みを伝え続けて』を設置。震災復興をテーマにしたニュースアーカイブ450本を公開中です。4月10日まで公開予定。関心をお持ちの方はぜひご覧下さい。