デジタルマーケティングへの期待と熱気に包まれたサミット
マーケターやアナリスト、業界のキーパーソンがソルトレイクシティに集結し、「Adobe Digital Marketing Summit」が2日間にわたって開催された。
今回のサミットは、ビッグデータ時代におけるデジタルマーケティングはどうあるべきか、そのビジョンをアドビが製品・サービス、セッションを通してお披露目するもの。キーワードは、デジタルセルフ、パーソナライゼーション、ソーシャルメディア、ウェブ・エクスペリエンス・マネジメント、そして、プレディクティブ・アナリティクス(予測的な分析)。
会場となったソルトパレス・コンベンションセンターは、はしからはしまで歩くと1キロはあるかと思えるような巨大な施設。そこを参加者が埋め尽くし、セッション、製品デモなどが行われた。
初日のキーノートには、デジタルマーケティングビジネスユニット担当上級副社長ブラッド・レンチャー氏が登場。「4000名がソルトレイクシティに集まったことには意味がある」と、デジタルマーケティングへの期待の高さを受け止めながら、データの持つ価値、その可能性をアドビの製品・サービスが具現化することへの熱意を示した。
続いて、CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏が登壇。テクノロジーが威力を発揮するには、Adobe Digital Marketing Suiteに含まれる技術を統合し、使う人がやりたいことに集中できるようにすることが重要だと語った。また、これからアドビが注力するものとして「情報のビジュアル化」を挙げ、ダッシュボードですべてのテクノロジーを簡単に使い、アクションを起こせるようにするという。また、「プレディクティブ」については「これは単なる自動化、最適化ではない。システムが学習し、人のために予測し、さらに学習し続けるものだ」と語った。マーケターが本当にやるべきことに集中し、すばやく判断を下せるよう、Digital Marketing Suiteはさらに進化を続けることになりそうだ。
アドビの強みは、Photoshop、Illustratorなどクリエイター向けツール群「Creative Suite」と、SiteCatalyst、Test & Targetなどの解析ツールを擁する「Digital Marketing Suite」の両方を持っていること。コンテンツ制作とデータ解析、このふたつをシームレスに結びつけ、マーケティングにスピードを与える。時間をかけて解析し、デザイナーに修正を指示していては、今ここで情報をほしがっている人たちを満足させることはできないからだ。
ソーシャル、ウェブ・エクスペリエンス管理、そして予測マーケティング
キーノートでは具体的に3つの製品が紹介された。ひとつは、本格的なマーケティング活用の段階にはいったソーシャルメディアに対応する「Adobe Social」。Adobe Socialは、投稿、モニタリング、広告のバイイング、解析、キャンペーン最適化などをひとつの製品で実現。複数のサービスに対応し、ソーシャルメディアマーケティングに必要な機能がすべてそろっている。また、今回のサミットでは何度も「デジタルセルフ(Digital Self)」という言葉が出てきた。さまざまなソーシャルメディアで行われる投稿・シェアなどによって生まれる「デジタルな自分」について、企業もブランドも意識する必要がありそうだ。
ふたつ目は、想定される年代、性別、利用端末、位置情報などをあらかじめペルソナとして登録し、シナリオにもとづいてパーソナライズされたコンテンツを表示する「CQ 5.5」。Day Softwareの買収によって、Digital Marketing Suiteに仲間入りしたCQは、単なるコンテンツ管理システム(CMS)ではない。というのも、SiteCatalyst、Insight、Scene 7、Search & Promote、Test & Targetなどがコンテンツの背後でデータの解析、最適化を自動的に行っているからで、これによって「ウェブ・エクスペリエンス・マネジメント(WEM)」を可能にする。また、Creative Suiteと連携し、画像の修正、アップロード、チーム内での承認や情報共有など、ワークフローにそった支援機能を提供する。
3つ目は、Digital Marketing Suiteに導入された「予測マーケティング(Predictive Marketing)」関連のソリューション。これは、仮説にもとづいた指標の変更が受注や売上などの業績に与える影響を検証したり、ビッグデータの中に埋もれてしまってマーケターも気づかない特異な値を見つけ出し、その分析・予測をすることで先を見越した意志決定を可能にする。今後、「Virtual Analyst」という予測エンジンがDigital Marketing Suiteの各製品に組み込まれることになる。
そのほかにも、高度な分析/セグメント化ソリューション「Discover 3」に横断型訪問分析機能などが追加され、その複雑な流入経路をビジュアル化する進化したユーザーインターフェイスに注目があつまった。
2時間にも及ぶこのキーノートの映像「The Power of the Digital Self」が、Adobe TVで公開された。華やかなステージの演出だけでなく、さまざまな製品のデモも見ることができる。ナラヤン氏が語るように、情報をわかりやすく伝えるためのビジュアル化がどのように行われているかがわかるだろう。
今回は初日のキーノートの概要だけをお伝えしたが、MarkeZineではこれからサミットで紹介された製品とキーパーソンのインタビューなどを紹介していく。
※編集部注(2012.3.25):
CEOシャンタヌ・ナラヤン氏のコメントを訂正し、Adobe TVの動画の情報を追加しました。
【関連記事】
・日本の月間利用者数が1000万を超えたフェイスブック「fMC TOKYO」開催
・アドビ、オムニチュアを18億ドルで買収
・グーグル、開発者向けに日本語版のGoogle Analyticsコードサイト公開
・アクトビラ、テレビ向けネットサービスの解析に「Adobe SiteCatalyst」を採用
・SASがHadoopに対応、ビッグデータ分析をリード