ソーシャルメディアで短期的な効果を狙うと、カスタマー離反につながるリスクがある
SUUMOでも、ソーシャルメディアがブランド戦略として明確に位置づけられる前に、検討層をWebサイトへ集客する目的でTwitterを活用していた時期がありました。フォロワーにスーモが「いい物件あったよ」とつぶやいて、SUUMOサイト内の物件の情報にリンクしていました。
例えばそれが北海道の物件だった場合、東京で物件を探しているフォロワーが見たら、「なんだこれ?」 と思ってしまいますよね。最初は当時主流だった、APIを利用したBOT(自動発信プログラム)を使って物件情報を発信していました。相手が住まいのことを考えているかの志向性も見えないまま、一方的に物件情報を送っているような状態でした。
結果的にフォロワーも増えず、「手を抜いた運用をしている」というマイナスイメージを与えかねないというブランド毀損のリスク観点から、カスタマー離反につながると考えてBOTは中止しました。そして、スーモというキャラクターをより身近に感じてもらえるようなコミュニケーションを行うことで、キャラクターを通してSUUMOとカスタマーとのつながりを強めることにしました。
SUUMOとのふれあい感、寄り添い感といった好意度を高めることをミッションとしてソーシャルメディアを活用し、いつか住宅への欲求が顕在化した時に一番にSUUMOを思い出してもらおうという、私たちの掲げたブランド戦略はこの経験によってさらに明確になっていったのです。
最初の施策の目的は、経営陣にソーシャルメディアのうねりを体験してもらうこと
ソーシャルメディアを中長期的な戦略として活用する以上、経営陣の深い理解が不可欠になってきます。幸い当社の経営陣は、SUUMOというブランドを立ち上げ、築き上げてきた面々です。「ブランド戦略は事業戦略である」という認識は強く持っていました。残るは、SUUMOというブランドに対してソーシャルメディアがどれだけの効果をもたらしてくれるのかを体感してもらうことでした。そのためには、ソーシャルメディア上で1つ目の大きな波を起こすことが必要でした。
『SUUMO JUMP』という無料のスマートフォン用ゲームアプリを作ったことをきっかけに、ソーシャルメディアを活用した本格的なブランド戦略がはじまりました。『SUUMO JUMP』を開発した目的は、人気のあるキャラクターをフックに質の高いゲームを無料で展開することで、世の中の大多数を占める潜在層の方々に、頻度高くSUUMOブランドと触れ合ってもらうことです。頻度高く利用していただけるように 1ゲームは電車の1駅区間程度の隙間時間で終わる仕様にするなどの工夫を施しました。
一時はApple storeの新着ゲームアプリで上位を飾るほどの人気ゲームとなり話題となりました。当時ソーシャルメディアで主流だったTwitterとゲーム結果を連携させたことで Twitter上ではハッシュタグ付きで『SUUMO JUMP』やSUUMOに関するコメントが飛び交いました。『SUUMO JUMP』というゲームアプリを世の中に投げかけたことで、カスタマーが能動的にSUUMOブランドを発信するというソーシャルメディア上でのうねりを経営陣にも体感してもらうきっかけとなりました。その結果、ソーシャルメディアの威力を体感し理解してもうらことができました。
このようにして、SUUMOが中長期的なブランド戦略として、本格的にソーシャルメディアを活用するための土台は築かれたのです。
