カスタマーライフサイクルに応じたメールプログラムで継続率をアップ

スマートフォンの先駆けともいえるBlackBerryで有名なResearch In Motionは、CRMを実現する手段としてメールを活用している。2010年までは一斉配信のメールマガジンしか配信していなかったが、2011年にデータベースを含むシステムを一新し顧客とのリレーションシップを強化。継続率を高めるために積極的にメールを活用することにした。
シャノン・ヴァン・ラッセル氏によると、Research In Motion ではOne to Oneの対話に近いコミュニケーションを実現するために、顧客データベースとWebアクセスログを組み合わせ、顧客の状況に応じたメールプログラムを開発した。
現在では、購入からの期間や顧客のWebアクセス状況によって自動的に配信が始まるプログラムを9種類動かしており、これらのプログラムの導入によって顧客の継続率が向上したことが確認されているという。
「リレーションシップ・ファースト」を実現するために
2つのセッションで紹介された成功事例には初日のオープニングセッションでスコット・オルリッチ氏が語った「リレーションシップ・ファースト」というコンセプトが底流に流れている。共通点としては、以下のような考え方が見受けられる。
- メール効果を向上させるためにはエンゲージメントを高める必要がある。
- ノンアクティブ層に対しては、まず関係性を修復しエンゲージメントを高めることを優先する。
- エンゲージメントを高めるために一斉配信の販促メールを削減し、ユーザーのセグメントごとに最適なコンテンツやパーソナライズされたコンテンツを配信する。
- One to Oneに近い最適なコンテンツを配信するために、メール配信にWebアクセスログデータを活用する。
それぞれの施策自体は決して独創的なアイデアではないが、実際に実行するとなると、ハードルは高い。特に、現在配信している販促メールを削減するには勇気と実行力が必要だ。このように、「リレーションシップ・ファースト」というコンセプトを社内で上手く共有することは、簡単ではないと推測できる。
では、登壇者たちはどのように実現したのだろうか。EPSON Americaのクリス・ニッケル氏の場合は、ノンアクティブ層に対する販促メールを大幅に削減することによる影響を詳細に試算して「失うものは何もないはずだ」と主張して上司を納得させたという。
一方、Philosophyのティファニー・ベリー氏は、自社の現状を客観的に分析して「顧客の置かれている状況に関係なく、弊社からは似たような内容のメールが一方的に何通も届いている。これで顧客と良い関係を築けるだろうか?」と訴えた。
このように、社内的な理解を得て実行に移すまでのプロセスについても詳しい情報がシェアされ、突っ込んだ質問が相次いだ。参加者が同じ課題を抱え、参考になる点を少しでも取り入れようとする真剣な姿勢が印象に残った。
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