BtoC編:ソーシャルメディアは自然発生的なウィルスのようなもの

鈴木健氏
ニューバランスジャパンの鈴木氏は、広告、店頭販促、イベントなどの施策に関するプランニング全体を統括している。事例紹介に移る前に、鈴木氏のソーシャルメディアに対する基本となる考え方が説明された。
「ソーシャルメディアというのは、メディアである前に、何かを自然発生的におこすウィルスのようなもの」という印象的な語りで、鈴木氏の説明は始まった。
新聞やテレビといった従来メディアの広告は固定的かつコントロールできる。一方で、ソーシャルメディアは流動的・不定形であり、自然発生・自然増殖・自然消滅といったコントロールできないというとらえ方である。
口コミの広がりをウィルスの感染に例えて解き明かした『The Tipping Point』,Malcolm Gradwell(邦訳版は『ティッピング・ポイント』2000年、飛鳥新社発刊)の中で紹介された口コミが広がる3つの原則を、鈴木氏はマーケティングの基本としている。
ソーシャルメディアで口コミが広がる3原則
前述の口コミが広がる3原則とは「コンテンツの面白さ」「少人数のキーマン」「伝播する環境・背景」の3つとなる。
「PF-Flyers 2012年」では、この3原則を取り入れ施策を展開したと鈴木氏は言う。では、具体的にはどのような施策を展開したのだろうか。トリプルメディアマーケティングの事例紹介に移ろう。
「PF-Flyers 2012年」は、若手俳優としてコアなファンを持つ渡部豪太氏を起用し(少人数のキーマン)、渋谷のパルコ前に特設スケルトンハウスを設置し、その中の彼の生活を24時間公開する「PF-FLYERS presents ON:OFF 24 Starring GOTA WATABE」
(コンテンツの面白さ)を行った。
同時にUstreamでの生放送やイベント現場を撮影して応募するキャンペーンを実施し(伝播する環境・背景)、ツイートは1,212件、キャンペーン応募は353件、想定リーチとしては160万人強の効果を得られた。
また、イベントへの関心を高めるためにニュースリリースを配信するタイミングを工夫。具体的にはイベントの内容を小出しにして、1つのイベントについて7本のリリースを出した。その結果、ピーク時は前年の8倍のアクセス数、記事数は4.4倍、潜在リーチは2.6倍という高い効果につながった。
グローバル展開に必須なトリプルメディア戦略、今後の課題
パネルディスカッションの終盤、モデレータの朝火氏から、マーケティング戦略として今後は何に挑戦していくのかという問いが鈴木氏、荒井氏に投げかけられた。まずは鈴木氏。
「今までは人と人のつながりはローカルだと思っていたが、グローバルで事業を展開するニューバランスが次のステージにいくためには、グローバルな視点から、ソーシャルメディア活用の経験がない人でも業務を遂行できるように標準化を考えていかなければいけない」
一方で荒井氏は「東芝がグローバル企業として生き残っていくには、『SMART NINJA』の事例のように、日本だけでなく他の国でも展開していくことを前提に、言語に制約されないコンテンツを作っていくことだ」と語った。

最後に朝火氏は「きれいにしまった感じがしますので、これで終わりたいと思いますが、もう少し深く聞きたかったですね。1時間は早いですね」と感想を述べ、時間を惜しみながらの閉幕となった。
グローバル展開を見すえた日本企業のトリプルメディア戦略の最新事例だけに、参加者を十分満足させるパネルディスカッションとなった。