機能を追加するなら、技術の新しさではなく概念で
投稿型音楽サイトといえば、やはり思い浮かぶのは動画モノ。プロモーションビデオ等とも相性がいいはずだが、muzieはなぜ取り入れなかったのか。
「動画もブログも、『やれば?』と言われたんですけどね。でも結果論ですが、変えなくてよかったなと。その流れに乗って失敗したサービスをいくつか知ってますし。結局ブログはアメブロやライブドアで書くし、動画はニコ動やYoutubeで見るんですよね。
エンジニアがたくさんいるところは、新しい機能が出たらすぐつける、うまくいかないからすぐ外すというやり方もあるでしょうが、うちは物理的にできないし。それに、すでに技術は出尽くしてるんだろうなと思っていて。次に新しく何かを放り込むとしたら、技術じゃなくて概念ありきなんじゃないでしょうか。
それから、視覚障害者の方がmuzieを使ってくださっているというのもあります。パソコンは画面があるので、どうしても目で見て楽しむのが前提のサービスになりがちなんです。利用者の方から『音声ブラウザで楽しめるmuzieが、すごくありがたいです』と言われて、機械でも読めるように一生懸命テキストを修正しました。その人のためにも、muzieは今のスタイルで残さなきゃいけないよねと」
音楽だけで食えなくても続けたい それができる場の1つになれば
必要最低限な機能だけに絞った、知に足がついたサービスという感じだが、『音楽業界がピンチだ』という外野の騒ぎに浮き足立ったりしないのだろうか。
「ピンチですよね~。昔だったらレコードに針を置いて目を閉じて楽しむ、というものだったんでしょうが、今はながらで聴くサブコンテンツになってしまいましたから。ネットが出てきたから……それもあるでしょうけど、言ってもしょうがないかなと。いい時期があったというのはわかるんですが。裏方で作っている人たちが食えなくなっていって、それはかわいそうだなあと思います。逆に言えば、大きくはないけど細々と暮らせるのかもしれないですね。サラリーマンやりながらネットで作詞・作曲とか。

『メジャーデビューしたいんです!』という子たちが減った気がしますね。昔は、『君はムリでしょ』くらいのレベルでも、『絶対デビューしたいんです!』というのがそこそこいたんですけど。みんな、わかってるんでしょうね。どうやらCDが売れないらしい、音楽は儲からないらしいと。
だからって音楽をやめるんじゃなくて、デビューする以外でも続けられる方法を考えてる。サラリーマンやりながらバンドやってます。結婚して出産するんで1年間くらい休むけど、子ども預けて歌いますとか。飛び抜けて売れなくても続けていけるんなら、それはそれでいいのかなって気もします。そういう人たちが、『3年ぶりに楽曲作ったから聴いてほしい』となったときに、muzieを使ってもらえたらいいなと。
でも、なんでしょうね。ちゃんとやってる人たちって、奇跡の1曲が出たりするんですよ。その1曲をきっちり見つけてきっちり活かせたら。そう思って、いろいろ考えてはいます」