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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

統括編集長インタビュー

グーグル、アップル、もしくは起業
ニューヨークのビジネスエリートたちも選びはじめた、スタートアップというキャリア


スタートアップ企業を育成・支援する存在、“アクセラレーター”

 みなさんは、アクセラレーターという存在をご存知だっただろうか? アクセラレーターは、ベンチャーキャピタルの一形態となるが、アンドリーセン・ホロウィッツ、セコイア・キャピタルといった、億単位の投資をするようなベンチャーキャピタルとは一線を画し、3~5万ドル前後の少額投資を基本としている。

 また、単なる資金援助だけではなく、オフィススペース、マーケティング支援、人材獲得・育成、メンタル面のサポートなど、さまざまな面でスタートアップ企業の成長を支援してくれるという。(参考記事:NYの注目アクセラレーター「ERA」のデモ・デー潜入取材! 【STARTUP INSIDER 1】

 「アクセラレーターのような投資機関が登場した背景には、技術的なイノベーション、例えばクラウドサービスの浸透などにより、昔に比べ低コストでの起業が可能となったことがまず挙げられます。このように、起業のハードルが下がっているのですが、伝統的なベンチャー・キャピタルは少額投資を行なっておりませんので、少額投資を実行する投資機関が求められていたのです」

 井上氏によるとアクセラレーターの元には、支援を受けたいと考えるスタートアップ企業から、アプリやWebサービスのアイデアが、毎日のように寄せられるという。

 数百、数千に及ぶ中から、一流のベンチャーキャピタリスト、エンジニア、デザイナーなどが10から数十に絞り、3か月かけてサービスのブラッシュアップを提案者とともに行う。その集大成の場がデモ・デーでの発表というわけだ。デモ・デーにはベンチャーキャピタリストや個人投資家が集まり、優れたサービスであればさらなる投資を受けることが可能で、ビジネスを成長させる機会を得ることができる。

 左:500 Startups代表 デイブ・マクルーア氏 右:Y コンビネータ創立者 ポール・グレアム氏
Y コンビネータのデモ・デーの様子。
スタートアップ企業のプレゼンを聞くため、
ベンチャーキャピタルやメディアの関係者が多数来場。
会場は期待と熱気に包まれている

 「ブラッシュアップの段階で当初のアイデアから180度方向性が変わる、ということも珍しくありません。極端な例では、アウトプットが何もない状態でも、人物を評価し投資するケースもあります。例えば、P2Pルームシェアサービスである『airbnb』は、シリコンバレーの有名アクセラレーターである『Yコンビネータ』から出資を受けたのですが、当初、彼らのアイデアは形になっていない状態でした。

 しかし、彼らはユニークな発想を持っていたのです。例えば、オバマの選挙戦の際に、オバマとマケインの顔を書いた箱を作り、その中にスーパーで買ってきたシリアルを入れ販売したところ、バカ売れしました。そういったユニークな発想、卓越したマーケティングセンス、形にする行動力に対して、Yコンビネータ設立者の一人であるポール・グレアムは『彼らは何も持っていなかったが、彼らのゴキブリのような生命力に希望を感じた』と語ったそうです」

シリコンバレー発からニューヨーク発へ

 このように、ベンチャーキャピタルとスタートアップ企業、双方を取り巻く環境が変化しつつある中、ニューヨーク発のスタートアップ企業が、いま面白いと井上氏は言う。

 「IT・ネットビジネス領域のスタートアップ企業はシリコンバレーから生まれ、ニューヨークは金融と大企業の保守的な街という認識がスタンダードですが、それが最近変化が起きている印象です。シリコンバレーから誕生した企業たちがインフラを整えてくれたおかげで、起業のコストが格段に安くなりました。それに加えて、クラウドのマーケティングツールやコラボレーションツールを使えば、競合と戦える環境も低コストで構築することができます。

 このような環境変化から、有名大学のMBAを取得後、一流起業への就職といったキャリア形成をしていた、ニューヨークのビジネスエリートたちが、起業という選択肢を選ぶケースが増えています。もちろん、彼らはスマートなので『イチかバチか』という選択はしません。アクセラレーターから選ばれることは、キャリアの市場価値としても高く評価されるため、万が一失敗しても、自分のキャリア形成につながると打算的に考えているのです。わかりやすく言うと、グーグル、アップルといった一流企業への入社と、スタートアップへのチャレンジを、同じような感覚で天秤にかけるようになっています

次のページ
ニューヨーク発の注目スタートアップ企業、Triple Lift(トリプル・リフト)

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/10/22 10:48 https://markezine.jp/article/detail/16188

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