アトリビューションとは
「研究から実践のフェーズへ『アトリビューション』が生む効果と課題とは」と題したパネルディスカッションに登場したのは、横山隆治氏(デジタルインテリジェンス)、宮腰卓志氏(博報堂)、小川卓氏(リクルート)、有園雄一氏(ATARA)の4名。
モデレータを務めた有園氏は冒頭で、「アトリビューション」について次のように説明した。
「アトリビューションとは“属性、帰属”という意味の言葉で、コントリビューションとベクトルの方向性が違うだけ。コンバージョンはどの媒体のおかげで発生したのか、“コンバージョンへの貢献度”と私は訳している。」
アトリビューション分析は、複数の広告キャンペーンや流入チャネルを経由してコンバージョンに至った場合に、どの流入元が、どの程度コンバージョンに貢献しているのかを分析し、各流入元の貢献度を導き出すこと。この手法を用いてキャンペーンを運用することをアトリビューション・マネージメントという。
アトリビューション分析における課題
現在、アトリビューション分析に取り組んでいるパネリストの各氏は、自らの取り組みとともに、現在の課題について次のように指摘する。
小川:アトリビューションは魔法。今までできなかったことが、ビッグデータやツールの進化、計算量の増加によって可能になった。でも、魔法を使うには「魔法使い」が必要。その魔法をどうやって使うのかを決める必要がある。データさえ集めればいくらでも分析できるが、何を分析すればいいかを考える人と、どういうふうに分析するのか考える人の両方が不足している。
有園:博報堂の中で、宮腰さんがやっているような構造方程式モデリングやパスファインダーを使いこなしている人はどのくらいいるのか。
宮腰:ツールはあるし、使うこともできるが、問題は解釈がきちんとできるか。それはマーケターのレベルによる。外部でも、分析できる人はいなくはないが少ない。
“分析”という言葉には2つの側面、課題がある。ひとつは「数字を加工して結果が出ました」で終わってしまう。もうひとつは、きちんとそういった技術をビジネスに活かそうとする事業のかじ取り役や経営層の問題。
有園:分析にまつわる課題でいうと、私自身、分析をアウトソースしているが、いま委託している人は素粒子物理学の博士号を持っている人。理系で非常に頭のいい人だが、マーケティングのことを理解していない。「コンバージョンてなんですか」と聞かれることもある。
アメリカでも、優秀な分析官が理科系のほうから、マーケティングに流れてきている。マーケティングやる側はそういう人たちと話をして、かみ合うところまで理解しないといけないレベルになってきている。
日本にはCMOがいないと言われるが……
横山:デジタルマーケティングに取り組むには、今の広告主企業のタテ割りの組織を横断的に串刺しにしないといけない。日本にはCMO(Chief Marketing Officer)がいないとよく言われるが、アメリカのCMOのようなスーパーマンが日本にいるはずがない。荷が重すぎて、あまり現実的ではないので、もっと日本の企業に合ったCMOの概念や、横串横断的な組織をつくる必要がある。
その組織には、情報システムや理科系の人も入って、今までと違う文化の人たちが融合する。情報システムの人たちは、サッカーでいえば守り。マーケターは攻め。日本におけるIT投資はずっと守りに投資してきている。マーケティングのために投資をしていない。
マーケターはITに疎い。ITに強い人はマーケティングに疎い。それをそのままにしておくとまずいので、攻めから守りまで関係者を一堂に集めて互いに理解し合うことが大切。
小川:役割は1人ではなく、チームで担保すればいいと思う。私はアクセス解析がメインだが、やはり1人ではできない。サッカーでいえば、最後には監督も必要。あとは、どのくらい必死かということ。弊社がアトリビューション分析をやっているのは、セッションでの最適化ができなくなっているから。リスティングもバナーもメルマガも施策をやりつくして、打つ手がないから(アトリビューションを)やる。ある意味そこまで追い込まれるとやらざるを得ない。