徹底的なステイタス区分と情報の最適化
さて、皆さんはマンションがどのような過程を経て購入されるかご存知でしょうか? 新規建築物件については、そのほとんどが完成前に販売されるものです。ですから、当然販売時には商品そのものが存在しないことになります。そこで、まずモデルルームを作り、そこにチラシや新聞広告、電車の中吊り広告などで集客し、販売員がセールスを行うのが普通です。
ただし、前ページでも述べたように、近年では同じエリアに同時期に「マンション銀座」のように複数の物件が林立することが多く、販売競争も激化の一途をたどっています。また、顧客ニーズの多様化により、免震構造を採用したり、通信インフラを整備したりするのが当たり前になっていて、建築コストがかさむ、付加価値付けに苦労するなど、「売る」作業も並大抵ではありません。そのため、立派なモデルルームを構えて集客しても、一部の超人気マンションを除いて成約率はさほど高くないのが実情でした。
ところが、本事例の企業では、なんとモデルルーム来訪者の20%以上が契約しているのです! その秘訣は、モデルルーム来訪者の早期囲い込み(会員化)と細やかなケア(情報提供)。会員には、ハイクォリティのマンション案内を送付するだけでなく、個別情報のやり取りも可能な会員専用サイトを解説してコミュニケーションを途絶えさせないなど、さまざまな工夫がなされているのです。さらに、会員、未入居者(完成待ちの契約者)、入居者と3種類のステイタスを設定し、それぞれに必要な情報を提供するシステムを作り上げました。たとえば、モデルルーム来訪者から会員になったばかりの方には、その物件だけではなく、会員の住所に近い類似物件を推薦するなど、大きな視点から会員をフォローしているのです。
こういった工夫も、現在では多くのデベロッパーにおいて散見されようになりましたが、同社では業界のパイオニアとしてのアドバンテージは今でもしっかりと握っています。このようなステイタス管理の概念は、元からクライアントにあったものではありません。商品の特性と市場をすり合わせ、潜在顧客を最終的なコンバージョンに持っていくための施策として、電通ワンダーマンが開発したものなのです。
