資金調達だけじゃない、クラウドファンディングで世論喚起も
国内向けプロジェクトとしては、児童養護施設支援の「チャンスメーカー」という継続型クラウドファンディングを展開している。
「私たちがやろうとしているのは、児童養護施設の環境支援です。例えば、子供たちが共同生活している施設を、一軒家がたくさん並んでいる感じの集合住宅のような、グループホームへ作り変えることです」(慎氏)

グループホームに建て替えることで、子供たちは家庭に近い環境で暮らすことができ、、また国の制度により施設の職員を増員することができる。1人の職員が10人の子供たちの世話をしている現状を改善し、職員と子どもたち双方のストレスや負担の軽減につながる。
例えば、事業資金として必要な金額が4億円の場合。莫大な金額に思えるが、そのうちの7割は国からの補助金でまかなうことができるそうだ。つまり1.2億円の手持ちの資金があれば、4億円の施設をつくることができ、非常に資金効率が良い。さらに、手持ちの1.2億円の大部分は借入ができ、20年かけて返済すればよく、先に述べたように職員を増員する補助金も得ることができる。
実際にLIPが支援している筑波の児童養護施設建て替えプロジェクトは、2013年秋竣工を目標に、今夏に着工した。
「私たちの今の支援先の施設は8000万円のお金を借りているのですが、20年で返済すると仮定すると毎年400万ずつ返せばよい計算になります。なので毎月1口1000円寄付を協力してくれる人が400人いれば、1年間で約480万円集まります。これで何十人という子どもたちが暮らす1つの施設の環境を劇的に変えることができます」(慎氏)

このプロジェクトは、多くの施設のように地元の名士などといった大口の寄付者から大きな金額を集めるのではなく、多くの人から継続的にクラウドファンディングで寄付を集めている点が大きな特徴だ。
「クラウドファンディングを通じて多くの人からお金を集めることは、世論喚起としての目的もあります。この児童養護施設に関する問題は長期的には国によって解決されるべき問題なので、みんなが知ること、より多くの人に認知されることが重要だと思っています。
認知されていないけれども、重要な問題を解決するためには、クラウドファンディングを通じて認知度を高め、多くの人に自分にも関係のあることだと認識してもらうことが大事。共感してくれる人たちは、きっと周りの人たちにも伝えていくと思います」
ソーシャル時代の資金調達の仕組みとして期待が寄せられているクラウドファンディングは、社会の世論喚起としての力も秘めている。