メディアとの関わり方こそ、小さな組織のマーケティングの要

英治出版、2011年刊行
小さな組織のマーケティング活動のヒントを伺ったところ、「とくに組織が小さければ小さいほど、コストをかけずに、自分たちの活動の話題をピックアップして、それをうまくメディアに発信することがすごく大切」と慎氏は語った。
「今までで一番成功したのは、『働きながら、社会を変える。』(英治出版)を刊行した時。同時に大きな失敗をしたとも思う。それまでは100人弱だった支援者が、この本の刊行を機に300人まで一気に増えました。自分たちの内輪ゴトから、知らない人たちもどんと増えて。このタイミングでWebサイトを作りこんでいたら、もっと多くの共感者を巻き込むことができたと思う。メディアに露出するタイミングをうまく見つけて、いろんな経路でちゃんと発信していくことってすごく大切だと思います。
中心となるコンテンツをつくって、それをベースにイベントをつくっていくことも大切ですね。私たちの今の課題はそのネタをつくること。1つは「パートタイムで事業をする」というテーマの本を10月末くらいに刊行すること。2つ目は筑波の児童養護施設新設の国の認可がやっと降りて、来年秋竣工を目指して始まったこと、この2つをうまく伝えていくことが近々の課題ですね」
ソーシャルビジネスで社会を変える
来年秋の竣工に向けて、今年の夏から着工した施設の建て替えは、役所の許可がおりるまで紆余曲折があったそうだ。
「私たちは一つの施設の建て替えに、やっとこぎつけることができました。これは画期的なこと。これまでは、お金がない施設が自分たちで施設を建て替えるのはほぼ無理なことでした。それが変わるかもしれません。」(慎氏)

施設の運営母体から独立しているNPOがクラウドファンディングによって資金調達を行い、施設建て替えに至ったケースは初めてのこと。「今後は全国に590ある施設にチャンスメーカーのプロジェクトを広げていくこと、そして積み重ねた実績をもとに国の政策などに意見できれば」と慎氏は語る。
2011年3月11日の東日本大震災を大きな境として、日本でも高まり続けるソーシャルビジネスの潮流。貧困や希望格差などの社会問題をビジネスを通して解決していく試みが、ソーシャルメディアやIT技術、ネットを活用することで、より広まっていくことを期待したい。
慎泰俊氏の著書です。ソーシャルビジネスに関心をお持ちの方だけでなく、ソーシャル時代において新しい市場を創造するヒントが詰まった書籍です。ぜひご一読ください。
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