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MarkeZine Day 2025 Retail

FEATURE

「紙→電子書籍化」ではなく「最初から電子書籍」の発想
「impress QuickBooks」の狙いとは

課題は、発刊したことを知らせるためのマーケティング

 編集部:たとえばブログなど、Web上に流通する無料コンテンツを電子書籍にして、有料で売ることはできますか。

 北川:Web上のコンテンツへの課金は、アメリカでも難しいようです。Webの場合マネタイズの方法は、ほとんどが広告収入です。しかし、例えば雑誌社のコンテンツを、我々の方でまとめてパッケージ化して販売する、といったモデルは出来ると思います。正直、何が当たるか、まだ私たちにも分かりません。

 編集部:紙の出版とは、発想を大きく変えねばならないことは分かりました。よければ、課題も教えてください。

 北川:課題は、発刊したことを知らせるためのマーケティングです。紙の書籍は、流通に乗せたら全国の15,000店舗の書店で平積みしてくれました。これは紙の最大のメリットです。

 しかし、電子書籍はネット上のどこかにあるので、なかなか目に留まりません。独自のプロモーションが必要と考えています。当初は、ツイッターのフォロアー数やブログのアクセス数が多い作家さんの作品は売れると思っていたのですが、そうとも限らないことが分かりました(笑)。海外には、書籍を探している人と書店に並んでいる本をマッチングさせる「マッチングメディア」というものも生まれているそうです。

 河野:書店によって契約形態も違うので、作家さんへの支払体系も柔軟に対応しようと思っています。印税契約は交わしますが、「希望小売価格の○パーセント」ではなく「実売価格の○%」で試してみようと考えています。

 北川:電子ならではの課題はまだあります。例えば、ユーザーが購入した書籍には、書店独自のDRM(Digital rights management/コンテンツの著作権を保護し、複製を制御・制限する技術)がかかっています。

 しかし、例えば販売元が事業継続困難に陥った場合、購入時の端末では読めるものの、新しい端末にコンテンツを移行できないという問題も発生します。正しい権利を持っているかどうかを、各販売会社が管理するのではなく、パブリックな機関が管理頂けるとよいのではないでしょうか。

 編集部:なるほど。今後の展開についても教えてください。

 北川:今期中はコンテンツ制作に注力していましたが、4月以降は販売にも力を入れようと思っています。しかし書店単位の戦略は、まだ十分とは言えません。

 たとえば、サンプルページの作り方ひとつとっても、正解はまだ見えてません。目次だけをサンプルとして見せるのか、中身の一部も見せた方がよいのか。健康食品などを販売しているサイトの場合サンプルを使ったあとに購入頂ける方が多いようですが、同じように、何をサンプルとして出したら購入頂けるのか、その方法を見極めねばなりません。

 河野:表紙の作り方も同じです。紙と同じで、電子書籍も表紙によって売上が変わると思います。現在の読者層は、紙の書籍とほぼ同じだと思うので、まずはそれを踏襲しようと考えています。どんな傾向のものが目を惹くのか、ノウハウを溜めたいと思います。

QuickBooksのAmazon Kindleストア。サムネイルの作りにもこだわる
 Amazon Kindleストア

 北川:アメリカでは、電子書籍が書籍市場の約3割を占めます。また電子書籍の販売が伸びても、ハードカバー書籍の売上には影響がありませんでしたが、ペーパーバック書籍の市場規模は反比例しました。ペーパーバックの書籍が、電子書籍に置き換わっているようです。しかし電子書籍の登場により、市場全体が拡大しました。異なる表現形態を利用することで、デジタルがアナログを凌駕することはないのでは、と考えています。

 編集部:電子書籍が、縮小しつつある出版市場の起爆剤になりますか?

 北川:印刷書籍の3分の2が電子化され、さらに電子生まれの電子書籍市場が誕生すれば、印刷書籍との相乗効果が高まり、出版市場規模が再び拡大する期待もできます。

 ビジネスが大きく拡大するのは、電子書籍市場が1,000億に達したときでしょう。現在、漫画は600億円を超えていますが、純粋な電子書籍は100億程度です。いまは事業計画よりも「トライ&エラー」に重きを置き、ノウハウを溜めていきたいと考えています。

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この記事の著者

齋藤 麻紀子(サイトウ マキコ)

フリーランスライター・エディター

74年生まれ、福岡県出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。 コンサルティング会社にて企業再建に従事したのち、独立。ビジネス誌や週刊誌等を通じて、新たなビジネストレンドや働き方を発信すると同時に、企業の情報発信支援等も行う。震災後は東北で起こるイノベーションにも注目、取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/04/04 08:00 https://markezine.jp/article/detail/17413

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