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「企業を動かすのはCMOという肩書きではない」売上アップを続けるアドビのマーケティング秘策とは?

 スマートフォンやソーシャルメディアなど、消費者を取り巻く環境の変化は激しく、マーケターも変化への対応を迫られている。そんな中、自社のマーケティング関連のソリューションを駆使し、自社サイトでの売上を毎年二桁成長させているアドビ システムズ。同社のマーケティング担当者に、ソリューションベンダーとして、あるいは現場に身を置く1人のマーケターとして、デジタルマーケティングの最前線について語っていただいた。

マーケターは“アクションヒーロー”であれ

 中国に「船に刻みて剣を求む」という寓話がある。河を渡るために船に乗っていた男が、剣を水の中に落としてしまった。慌てて乗っている船に印を付け、船着き場についてから印を頼りに剣を探した。もちろん落とした地点から船は動いているから、どれだけ探しても剣は見つからなかった――という話だ。

 水の上の船が同じ場所に留まることはないように、マーケターを取り巻く環境も日々変わっている。例えばソーシャルメディアであれば、3年前はTwitter、2年前はFacebook、そして去年からLINEが話題の中心となり、絶えず変化し続けている。また電車の中を見渡せば、ほんの数年でスマートフォンやタブレットを操作する人が目立つようになり、宅配便の配送車の荷を見ると、かなりの数の箱にAmazonのロゴが入っている。

(左)アドビ システムズ 株式会社 マーケティング本部
  リードジェネレーションマーケティング スペシャリスト 中東孝夫氏
(右)同社 デジタルマーケティングスペシャリスト 井上慎也氏

 「朝令暮改と言いますが、デジタルマーケティングの世界はもはや朝令“朝”改でないとキャッチアップできません。社会、そして顧客が、今この瞬間にも変化していく中、将来に対応しようと予測してみても、予測はたいてい裏切られます。

 だったら、今を把握して、今すぐ判断して対応すべきです。これから何が起こるか分からない時代では、失敗を避けることは不可能です。小さな失敗を恐れずに、失敗を積み重ねながらもノウハウを蓄えていく。そうしてスピード感を持ってノウハウを蓄えられるかどうかで、これからは競合企業との差が生まれてきます。

 言うなれば、傷だらけになりながらもアクションを続け、失敗から学びながらPDCAサイクルを回せるタフな“アクションヒーロー”の役割がマーケターには求められているのです」(中東氏)

毎年二桁成長を続けるアドビが培ったマーケティング秘策

アドビ システムズ 株式会社
井上慎也氏

 実際、アドビ自身がこのやり方でマーケティングを推進。ここ数年はマーケティング予算を大きく変えずとも、自社サイトでの売上を毎年二桁成長させているという。

 「アドビの社内では年間100件を超えるA/Bテストを走らせて、常に改善を図っています。テストを重視しているのは2つの理由があります。

 1つめは「真実は顧客が決める」という考えです。これまで、クリエイティブに関しては「部長・役員が決める」や「著名なクリエーターが選ぶ」といった風潮がありました。しかし、必ずしも個人の感覚や過去の経験が正しいとは限りません。そのため、実際に顧客に提示し、効果を比較することで最適解を目指すのが目的です。

 2つ目の理由として、「過去の顧客と現在の顧客は異なる」です。キャンペーン前に事前テストを行ったとしても、キャンペーンを通して顧客層が同じとは限らないからです。

 例えば新製品が登場したとき、真っ先に購入していただけるアーリーアダプターと、数か月後に購入いただけるフォロワーとはフックするポイントが明らかに異なるのです。

 両者の課題や、刺さるメッセージは違います。ですから、判断はテストの結果を基に行い、かつ常にテストし続けていく必要があるのです」(井上氏)

 とはいえ、「年間100を超えるテスト」の実施を難しいと思う方も多いだろう。しかし、アドビはこうしたマーケティングの理想を理解し、その課題を解決するソリューション群をすでに提供している。当然、アドビの社内ではそうしたソリューションが活用されているのだ。先日のAdobe  Summit 2013(イベントレポートはこちら)でも脚光を浴びた「Adobe Marketing Cloud」により、システムに任せられる部分は徹底的に自動化・最適化を図ることで、より高速にPDCAを回せる体制を構築している。

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「バラバラな製品群」から「マーケター起点の統合ソリューション」へ

 Adobe Marketing Cloudは、アクセス解析ツール「SiteCatalyst」などの従来27あった製品を、マーケターが直面する課題を軸に5つの目的別に統合したもの。概要をまとめると、次のような機能を備えている。

Adobe Marketing Cloudの5つのソリューション

Adobe Analytics:マルチチャネルのデータ分析
Adobe Experience Manager:デバイスやペルソナ毎に最適なコンテンツを提供
Adobe Target:コンテンツのテストとパーソナライズ配信
Adobe Social:ソーシャルメディア運用の管理・成果評価
Adobe Media Manager:ディスプレイ広告、リスティング広告等の広告配信の効果測定・全体最適化

 「これまでマーケターは、状況把握のためアクセス解析ツールを使ってレポートを作成してきました。さらに得られたデータを基にドリルダウンをはじめとした”縦に深い分析”と外部データとの連携による”横に広い分析”には、個別のツールを導入・運用する必要がありました。

 一方で、テクノロジーの進歩や環境の変化とともに、従来のWebサイトと広告の運用に加え、テストの企画・実施やソーシャルメディアの運用など、マーケターが責任を果たすべき領域は広がるばかりです。

 そうしたさまざまな活動に必要なツールを、必要に応じて選択可能な提供形態と、インターフェイスの統合やデータ連携まで可能としたのがAdobe Marketing Cloudです。

 アドビはこの領域の広がりを新しいマーケティングのワークフローの構築で対応しようとしています。近い将来、経営陣へのレポーティングや、クリエイティブチームとの連携を見据えた新しいプラットフォーム化に向けて開発を継続しています。

 これまでのグローバル先進企業における導入実績を基に、マーケターだけでなく、経営者やデザイナーも巻き込んだ統合インフラこそ、次世代のマーケティングに必要な要素だと考えています」(井上氏)

過去の「カテゴライズ」から、今この瞬間の「パーソナライズ」へ

アドビ システムズ 株式会社
中東孝夫氏

 また、顧客一人ひとりの閲覧・購入履歴、流入経路を把握した上で、わずか0.3秒のうちにパーソナライズしたページを瞬時に構築して提供するというアドビが描くAdobe Marketing Cloudのもう一つのビジョンが提示された。

 例えば、過去の顧客DB上ではAcrobatを以前購入したとされるユーザーがアドビのサイトを訪れても、目的はAcrobatとは限らない。「画像編集ソフト」と検索してPhotoshopを探しにきたのかもしれないし、Facebookで紹介されたアクセス解析に関する投稿のリンクからデジタルマーケティングの情報を求めて来訪したのかもしれない。

 Adobe Marketing Cloudを採用することで、そうしたユーザーが来訪した瞬間に得られる情報(流入経路や過去の訪問履歴、入力したキーワードなど)をフル活用し、最適なオファリング(メッセージ・画像・レイアウトなど)を瞬時に判断し、提供することが可能になる。

 「理想を言えば、訪問やページ遷移、購入ボタンのClickなど、1 Actionごとに提供するコンテンツをパーソナライズすべきです。それによって、デジタルにおける顧客体験は大きく向上させることが可能です。こうした顧客体験の向上こそが、ブランディングやコンバージョンの向上といったビジネス上の成果につながるのです」(中東氏)

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企業を動かすのは「CMO」という肩書きではない

 ここまで読んで「アドビの考えには賛同するが、社内の理解を得てヒト・モノ・カネを確保するのは容易ではない」と感じた方もいるかもしれない。まずは導入予算を確保するだけでも大変なことである。さらに社内の各部門に必要性を理解してもらい、実際に使ってもらうことは一筋縄ではいかないだろう。

 リーダーシップを取るCMOがいれば、解決する問題なのかもしれない。けれど、中東氏、井上氏の両氏は「まずは社内に対して自部門のマーケティングを実践してみるのはどうか」と提案する。

 「マーケターを取り巻く社内環境を改めて見つめ直す必要があります。ステークホルダーである営業部門は何を必要としているのか、予算配分を決定する経営企画部門は何を重視しているのか。さらには経営層は投資に対してどんな成果を期待しているのか。

 ステークホルダーのニーズを把握しそれに応えるのはマーケターが最も得意とする分野であり、それを社内に適用するだけで社内の理解は進みます。CMOという万能のリーダーが社内を導いてくれるのを待つのは得策とは言えません」と中東氏は語る。

 その一方で井上氏は「企業を変えるのは『CMO』という肩書きではなく、人です。1個人、1部署がデータを根拠にアクションを起こし、周囲の部署を巻き込んでいけば、物事は変わっていくことでしょう。

 アドビにおいても、テストやデータ重視の文化を作り、結果として売上を向上させたのは何もCMO一人だけの功績ではありません。数年前までは、各製品ブランドのオーナーやIT部門、Webサイト担当部門、さらには国・地域によっても、見ていること、実施していることがバラバラでした。

 部門や地域の垣根を越えてデジタルマーケティングを推進していこうと、米国本社ではデータやテストの専門部隊が旗を振り、国内では私がデジタルマーケティング促進の独立したポジションとして、国や部門間の橋渡しとなるべく、チェンジマネジメントを行いました。ある時は米国本社とも交渉を重ね、社内のデータに対する理解や文化を育ててきました。その結果として好調な売上が続いていると考えています。

 Marketing Cloudなど、テクノロジーの進歩によって、できることがますます増えていきます。でも、使う側の人が変わらないと何も変わりません。そして、アクションを起こさないことには、何も変わりません。CMOであろうとなかろうと、変えるのは”人”なのです」と提言する。

「マーケターの仮説力」と「クリエイティブの力」がキーポイント

 井上氏は「テクノロジーの進歩によって、できることはますます増えてきました。ただ、テクノロジーに詳しいだけではダメです。重要なのは、自社の製品とビジネスをよく知り、顧客の深い理解のもと、様々な仮説を立てられるマーケターがリードをとれるということです。

 マーケターは統計の基本だけ知っていれば、A/Bテストでどちらに優位な差が出たか、Adobe Marketing Cloudならシステムが自動的に判断してくれます。また、各種テクノロジーやデータ分析についても外部パートナーを含めて多くの助けがあります。

 マーケターに求められるのは、自社の課題を把握し、分析やテストの前提となる仮説を考えることと、その結果を関係部門や経営層に分かりやすく伝えること。仮説さえあれば、テストをどんどん推し進めることができます」(井上氏)

 一方の中東氏は「クリエイティブの力にあらためて焦点が当たるのではないか」と語る。

 「どれだけテクノロジーが進歩しても、クリエイティブなきコミュニケーションはありません。ユーザーの心に訴えるクリエイティブの力は、これから先、さらに重要度を増していきます。

 これまでと同じやり方で、さまざまなデバイスでパーソナライズを行い、PDCAを回そうとすれば、クリエイティブの制作プロセスに課題が見えるのは間違いありません。こうした制作との連携を見据えたソリューションでなければ、どのような仮説や解析も絵に描いた餅となるでしょう。

 仮説の立案から顧客へのコミュニケーションの展開まで含めたEnd to Endのマーケティングプロセスを包括的にサポートするのがアドビの強みであり、事業領域を広げた理由でもあります。 

 そもそも『クリエイティブとマーケティングという領域において、デジタルエクスペリエンスを基に世の中をよりよく変えていく』というのがわれわれの使命ですから、その意味では、アドビがより世の中の役に立てる時代になってきたと思います」(中東氏)

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この記事の著者

中嶋 嘉祐(ナカジマ ヨシヒロ)

ベンチャー2社で事業責任者として上場に向けて貢献するも、ライブドアショック・リーマンショックで未遂に終わる。現在はフリーの事業立ち上げ屋。副業はライター。現在は、MONOistキャリアフォーラム、MONOist転職の編集業務などを手掛けている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/05/23 16:00 https://markezine.jp/article/detail/17618