37年間アナリティクス一筋の会社
皆様こんにちは。これから6回にわたって「はじめての人にもわかるアナリティクス講座」を担当するSAS Institute Japan株式会社の津田と申します。本連載の内容は今年の4月18日に開催した「Analytics 2013 - SAS Forum Japan」での私の講演をベースにまとめたものです。
最初に少しだけSAS Instituteという会社についてご紹介させて頂きますと、私達は37年間、一貫してアナリティクスを通じて顧客企業にバリューを提供してきた「アナリティクス一筋」の企業です。創業以来、さまざまな業種や職種における「データから収益改善につながる知見を見出したい」というニーズに応えるべく、売上の約24%を研究開発費に投資しつづけパワフルで一貫した製品を提供してきました。
本連載では、私がアナリティクス・コンサルタントとして日々顧客企業に伺い、ソリューション導入のお手伝いやご提案をする中で見てきた分析の現場の課題や素晴らしい先進的な事例を交えながら、アナリティクス実践のためのアプローチをご紹介していきます。アナリティクス初心者の方を主な対象とはしていますが、すでにアナリティクスへの取り組みを始めた方やある程度実践に進んだ方にもご参考になる内容を盛り込んでいきたいと考えておりますので、ぜひ最後までお付き合い頂ければと思います。
この連載では、以下の3つを主要テーマとして解説していきます。
- 「アナリティクス」とは何か
- アナリティクス実践の成功に至る10ステップ
- アナリティクスのための人材と究極の組織論
それでは第1回目の今回は、1つめの 「『アナリティクス』とは何か」についてお話しします。
アナリティクスとは?
最近、「アナリティクス」という言葉を耳にする機会が多いですよね。アナリティクスとはいったい何でしょうか?トーマス・ダベンポートが『分析力を武器とする企業』(トーマス・H・ダベンポート、他著、日経BP社)の中でその定義をしています。
つまりアナリティクスの肝は、「データ分析から本当にビジネスに役立つ情報をいかに見つけ出し、活用するか」 ということになります。
私はアナリティクスへの取り組みを検討されている企業の方とお話しさせて頂く機会が多いのですが、その際、この「活用」の部分の議論がスッポリと抜け落ちているケースが時々見受けられます。例えばデータ分析の結果、「わがデパートの成長の鍵はファッションに興味を持つ25歳以上の女性だ!」なんてことが仮に判ったとしても、それだけでは収益の改善には結びつきません。だれに、どんな商品を、どんな方法で紹介すれば実際に購入してもらえる確率を高められるのか、ということが分からなければ、実際にデータ分析の結果を活用することはできないからです。
データ活用がうまくいかない2つの理由
では、なぜ多くの会社がこのような状況に甘んじているのでしょうか。その原因は2つあります。
データ分析がレポート作成で終わっている
1つめの原因は、「データ分析」といっても、実は現状をまとめただけのレポートで終わってしまっているという点です。決まった項目だけを更新していく定型レポートと、将来予測も可能にする「アナリティクス」の大きな違いはここにあるのです。
定型フォーマットの売上報告書をベースに月例マネージャー会議を開いてみても、報告書から分かるのは先週時点での売上状況のみ。今後どうなるのか、どのような手を打てばどれくらいの改善が見込めるのかといった本当に知りたいことは経験と勘に頼らざるを得ません。レポートの中身よりマネージャーさんの声の大きさで結論が決まったりなんていうちょっと寂しいケースもお伺いします。これでは分析を活用することはなかなか難しいですよね。
分析の目的・活用方法が不明確
2つ目は、分析の目的・活用方法が明確になっていないという点です。分析の中身や精度も大切ですが、それをどれだけ活用したかで分析の価値は決まります。アナリティクスを始めたばかりの方に起こりがちなことは、分析タスクを完了するところまでで力尽きてしまい、実際のビジネスでの活用がおろそかになることです。せっかく苦労した分析結果が使われないのはとてももったいないことです。
「活用」は強調しすぎることはないほど大切なテーマ。これからその点を繰り返し議論していきますが、先ほどのデパートの分析ケースを改善するための、ちょっとしたコツをご紹介します。
「週末に彼と映画に行く習慣があり、XブランドのブラウスとYブランドのイアリングを過去1年以内に買った首都圏の20代女性はそれ以外の首都圏の女性に比べて、秋のZイベントに反応する確率が13倍高い。」
なんてことまで分析できれば、誰に対していつ、どんなメッセージを投げればどれだけの期待効果があるのかが、もう少し見えてこようというものです。つまり、分析結果の活用シーンを思い浮かべながら分析を実施する、というのがアナリティクスを成功に導くコツなのです。