アトリビューションを言い訳に使うな

続いて議論は、リスティング、バナーなどの個別施策を最適化することの限界に向かった。「全体最適」の視点の必要性を問いかける塚本氏は、ある事例を紹介。ラストクリックだけで見るとリスティングが良いということになり、ディスプレイ広告などをどんどん切っていった結果、商品の指名検索すら起きなくなったことがあるという。
西井氏はかつて小規模ECサイトを運営した経験をふまえて次のように語った。
「考え方だと思う。本当に最低限のところは、まずアフィリエイトとリスティングで刈り取り、そこから上がっていくボリュームを出すには、ウェブではバナー広告しかない。そこをどう見極めるかが大事。アフィリエイトやリスティングを重視するというより、そのポテンシャルを見極めてそれ以外のところにプラスに載せていく。」
一方、加藤氏は「僕は単体で、純広は純広で見るべきだと思っている。最近の、アトリビューションをスケープゴートにして逃げの体勢をつくる姿勢がけっこう嫌いで」と発言。驚く観客に向けてさらに言葉を続けた。

「やはり、いったん目標をつくるべきだと思う。おそらくドクターシラボはあれだけブラパネ(※)をやっているので、ブラパネをやって採算がとれていると思う。つまり採算をとれるような仕組みをつくっている。それを、少し採算とれなくなったけど『いやでも、きっとリスティングで貢献しているよ』という話になるとあやふやになってしまう。そこははっきりさせたほうがいい」(加藤氏)
それに対して、ドクターシーラボの西井氏は「同じです。東京vs九州じゃなくなってきたんですけど」と笑いながら同意。「ダイレクトレスポンスの広告をちゃんとやっていくときに、レスポンス広告の中でしっかり効果を上げていく。そこのKPIの指標を上げていけば、アトリビューション分析をしたとき、そこもプラスになっていく。その数字がとれないしくみはよくない」と語り、多くのマーケターが頭を悩ませるであろう数字の見方について、自らの考えを示した。
(※)ブラパネ:ブランドパネルの略。Yahoo! JAPANの大型ディスプレイ広告。
これからどうなる? ダイレクトマーケティングの未来
時間はあっという間に過ぎていき、最後のテーマは「ダイレクトマーケティングの未来」。ダイレクトマーケティングは、この先どう進化していくと2人は考えているのだろうか。
西井氏は「5年前、自分でやっていた小売のECで価格競争に巻き込まれ、厳しいなと感じていた。その反面、メーカーのECは今後もっと出てくるに違いないとも思っていた。5年たってみて、今までECをやってなかった企業が進出してきている。その中で勝っているのは、社内にマーケターがいて、ちゃんとECをわかっている人がやっているところ。今後ECに進出するメーカーはますます増えてくると思うが、この傾向は続くと思う」と語った。

一方、加藤氏は「これからはCPAからLTVの時代がくる」と述べ、「過去10年間は、クリック率、コンバージョン率が高い、CPAがいいのが勝ち組とされてきた。これからの10年間の勝ち組は変わる。今後はLTVが最大化できるひと。サンプルで集めたとしても、引き上げて、リピートさせて、クロスセルして、LTVを最大化できる人たちが勝ち組になる。すでにその傾向は出ている」と語った。
最後に、ダイレクトマーケティングの世界を大きく変えうる、もうひとつの将来予測を披露した。「最終的にダイレクトマーケティングは、オートコンプリート(自動入力)、申し込みフォームを記入しなくてもいい状況が理想。この10年、ユーザーはいろんなネット通販のサイトで情報を入力してきた。これがECのネックだった。完全に自動化されればECが爆発すると思う」と語り、それを実現する2つの方法を示した。
ひとつは、ブラウザがオートコンプリート機能をもつこと。一度ブラウザに自分の情報を入れれば、ECサイトに行ったとき、自動的に登録した情報をフォーム入力してくれる。これは、テレビ、パソコン、iPhoneなど、クライアントの情報を持っているデバイスにも可能性がある。
もうひとつは JADMA(日本通信販売協会)のような第三者機関が、通販会社が利用できる個人情報のデータベースを構築すること。会員企業がワンクリックで情報を引き出すことが可能になるシステムだ。
加藤氏は「ブラウザか、デバイスか、第三者機関なのか、みんながワンクリックでどんな商品でも購入できるようになったらECの世界は変わる。これまでの何十倍の規模になると思う」と語り、EC市場の起爆剤となるイノベーションの必要性を示した。
アドテック九州に続く熱いディスカッションは今回も時間切れ。まだまだ続きを聞きたいと思わせる対話に、会場からは大きな拍手がおくられた。
今回のセミナーのきっかけとなったセッション「これが通販王国、九州が誇る最強ダイレクトマーケティング!」には、加藤公一レオ氏と西井敏恭氏のほか、今回のセミナーに参加できなかった、ADK九州の武藤啓典氏も登壇しています。三者三様の熱いプレゼンテーション、ぜひご覧ください!

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