アプリとWebを例えるなら「F1」と「乗用車」
MZ:そうした環境下で、今回アプリ制作のCMSをリリースしたのは、タッチポイントとしてアプリの重要性がきわめて高いということなのでしょうか?
加藤:もちろん、アプリが不要なケースもあると思いますが、総じてアプリを介したコミュニケーションが急速に浸透しているのはデータからも明白です。特に若年層ではWebブラウザをほとんど使わず、使用頻度の高いアプリアイコンを並べた画面から天気を知る、地図を見る、ショッピングと目的に応じて主にアプリを使っているのが現状です。
当社はWebサービスに関しては相応の知見がありますが、逆にアプリはまだまだ探れる部分が大きい。ユーザーの入り口としてのアプリは無視できないので、広告事業としても顧客接点としても、企業のアプリ戦略を支援できるソリューションを探していました。
庵原:接触態度の違いからか、アプリの滞在時間はWebの倍だというデータもあります。アプリの方が、高いエンゲージメントを築けるという見方もできます。アプリとWebはF1と乗用車のように根本的なパワーが違います。そのパワーの違いからページ閲覧時のスピードやレスポンス、操作性などでWebより優れたオンライン体験を提供できるためエンゲージメントでWebより有利になるのではないでしょうか。細かい話になりますが、ネイティブアプリと呼ばれるアプリ専用のコードで書かれたアプリが、より良い閲覧体験を提供するために重要だと考えています。
マーケティング面はヤフー、技術面はファストメディアがサポート
MZ:「Yahoo! アプリエンジン」のリリースにあたり、ファストメディアとの提携に至った経緯をお教えください。
加藤:「Yahoo! アプリエンジン」のリリースに先駆けて、8月にファストメディア社との業務提携を発表しました。同社からスマートフォンアプリ作成ツールのOEMを受けて、「Yahoo! アプリエンジン」として提供を開始しています。
ファストメディアと提携した理由は、まず一つは国内企業で技術力が高く、開発やサポートが速くかつきめ細かに行える点です。もう一つは、サービス提供にあたってのサポート体制が充実している点。当社としては、アプリの運用や他のマーケティングソリューションと統合した上での展開をサポートできますが、技術的な面は提携社に期待していたので、その点でファストメディアが合致しました。
庵原:今挙げていただいた、開発やサポート体制の面にももちろん力を入れていますが、当社のCMSでこだわっているのは、マーケターや制作サイドが使いやすいユーザビリティーです。充実したテンプレートから、分かりやすいUIの各種機能をドラッグ&ドロップするだけで簡単にiPhoneとAndroidのネイティブアプリを同時に構築できます。プログラミングがまったく分からなくても、カタログや電子書籍、iPodやiTunesと連動した音楽再生機能などを用いたアプリを作成できます。
また、作るだけでなく運用の利便性も特に重要視しています。iPhoneアプリとAndroidアプリの両方にプッシュ通知を簡単に配信できたり、位置情報を用いて店舗など特定の場所に近づいた人だけにプッシュ通知を送れる機能も備えています。