「不正検知」の技術を転換させて生まれた「AdTruth」
ネット広告業界ではCookieに代わるアイディアを模索してきたが、そのソリューションのひとつとして、いま注目を集めているのが米41st Parameterが開発した「AdTruth」である。今回、41st Parameter ビジネスディベロップメント ディレクター 鳥井武志氏に、AdTruthとはどんな技術なのか話を聞くことができた。

ビジネスディベロップメント
ディレクター 鳥井武志氏
2004年創業の41st Parameter社は、もともとネットでの「なりすまし」を防止するテクノロジーを開発して事業を展開していた。しかし、ある顧客の「この技術、広告に使えるんじゃない?」という一言が、その技術に大きな転換をもたらすことになった。なりすましという悪意のトラフィックの特定に使っていた技術を、広告という善意のトラフィックに活用すること。この逆転の発想によって、2011年10月、「AdTruth」が誕生した。
その仕組みは非常にシンプル。さまざまなデバイスから「NavigatorAppCodeName(ブラウザアプリケーションコード名)」「TimeZoneOffsetHours(タイムゾーン時差)」「ScreenWidth(画面解像度・幅)」など、多様な100個以上のパラメータを収集し、それを統計的・数学的アルゴリズムにもとづいてリアルタイム処理。デバイスごとに40桁の非可逆性ハッシュ値を付与し、それをIDとして利用してウェブサイトにアクセスしてきたデバイスを推定する。このプロセスにおいて、AdTruthは、名前や年齢、位置情報、デバイスのIDなどの個人情報に類するものをいっさい必要としない。
驚くべきシンプルさ。だが、PCにおいて90%という高い精度でデバイスを推定するには、収集したパラメータを統計学的に分析してIDを生成するプロセスが重要であり、このアルゴリズムを同社は明かしていない。また、シンプルさゆえに、他社が類似の技術を開発することは十分考えられるが、実際にはこのアルゴリズムの開発とメンテナンス、処理速度、新たなブラウザなどへの対応、その他ノウハウなどが必要であるため、そう簡単なことではないだろうと鳥井氏は言う。

しかし、AdTruthの魅力は、Cookieの代替品としての利用だけにとどまらない。とくにモバイルデバイスにおいて、AdTruthは大きな可能性を持っているのだ。