激動の国内オムニチャネル
昨年12月、セブンアンドアイホールディングスが次々と買収や資本・業務提携を打ち出し、業界を驚かせました。通販大手のニッセン、高級衣料を扱うバーニーズ ジャパン、インテリア・雑貨店フランフラン等を運営するバルスなど、計4社の株式取得を発表。この背景にあるキーワードが「オムニチャネル戦略」でした。
代表取締役会長 兼 CEOの鈴木敏文氏は同時期のインタビューで、「ネットで買い物をする消費者の増加を受け、ネットとリアル店舗の融合、オムニチャネル化を推進することが最優先課題」として宣言しており、オムニチャネルサービスの構築に5年間で1000億円の投資を行うことを発表。さらに、セブンネットショッピングにネット広告代理店機能を持たせ、ネット広告予算を10倍にしていくなど、矢継ぎ早に大胆な戦略発表を行っています。
その一方で、イオンも2013年12月20日にオープンした国内最大規模となる幕張新都心店で、ソフトバンクテレコム、ヤフーと組んで、新たなオムニチャネルサービスの取組みを開始しました。こうした具体的な動きが出てきたことで、国内でも“O2Oからオムニチャネルへ”の新たな胎動が生まれてきたと言えるでしょう。
セブン&アイの事業展開
オムニチャネルは「ネットと店舗の融合」を目指す戦略とよく言われますが、そのためには、実店舗を含めた企業の強みを活かし、ネットとの相乗効果を生み出すための組織づくりや戦略が必要です。ここでは、イオン グループとともに国内小売二強の一翼をになうセブン&アイ グループ(以下、セブン&アイ)の店舗展開、各種事業について見ていきましょう。
セブン&アイの店舗展開は「ドミナント出店」を基本ポリシーとしています。百貨店(西武百貨店、そごう)、コンビニエンスストア(セブン‐イレブン)、総合スーパー(イトーヨーカドー)、食品スーパー(ヨークベニマル、ヨークマート)など、業態の異なる店舗をエリア内に高密度かつ集中的に展開することで、認知向上、競合参入の阻止、物流などの効率化を追求しています。この戦略によって、同グループの店舗数は国内約1万7000店にものぼっています。
商品開発
プライベートブランド(PB)商品は、スーパーやコンビニエンスストアの主力商品のひとつ。ナショナルブランド(NB)と同等以上の品質と低価格を追求するこの分野において、セブン&アイは、仕入れ、開発、販売に至るまでグループ全体でマーチャンダイジングプロセスを一本化しています。
2007年に「セブンプレミアム」、2010年には高価格PB「セブンゴールド」を立ち上げ、食品から生活用品、衣料品へとラインナップも拡大。「セブンプレミアム」の商品開発には顧客参加型コミュニティサイト「プレミアムライフ向上委員会」も活用し、毎年約50%の既存商品のリニューアルを行なっています。2011年にはクリエイティブ・ディレクターの佐藤可士和氏を迎えて、オリジナル商品を全面リニューアル。こうした体制を背景に、2015年度には「セブンプレミアム」の売上を1兆円、「セブンプレミアム」を含むグループのオリジナル商品売上を3兆円を目指すと発表しています。
金融サービス
セブン&アイでは、店舗利用者の利便性を高めるために金融サービスも提供しています。セブン‐イレブンでは、1987年から公共料金等の料金収納代行サービスをスタート。2001年にはアイワイバンク銀行を設立し、ATMサービスを開始しました(2005年セブン銀行に社名変更)。改良を重ねたATMは第三世代となり、台数は2013年11月時点で1万9000台となっています。24時間営業のコンビニエンスストアでATMが利用できることは、現金決済が主流の日本では大きな利便性をもたらしました。
2002年に、セブン・カードサービスが「アイワイカード」を発行(現「セブンカード」)。2007年には独自の電子マネー「nanaco」をスタートし、2013年10月時点の発行件数は2642万件(nanacoカード、nanacoモバイル合計)に達しています。クレジットカードはセブンCSカードサービスが「クラブ・オン/ミレニアムカード セゾン」などを展開しています。
クレジットカード、ポイント専用カードを含む、グループ合計のカード発行枚数は3700万枚以上にのぼっており、ポイントを電子マネーに変換可能にするなど、相互利用を含めたカード戦略を進めています。