テレビ局の新たな競合企業
久保田:VOD事業に取り組むにあたって、日本テレビは、これまでとはまったく異なる競合企業と戦っていかなくてはいけなくなるでしょう。YouTubeやニコニコ動画など、数多くのプレイヤーがうごめいている中、日本テレビはどのような立ち位置でやっていくのでしょうか?

船越:「第2日本テレビ」の失敗があったこともあり、かつては自社で配信事業者としてシステムを構えることは否定されていました。その結果、日テレオンデマンドを立ち上げたものの、プラットフォーマーに番組を提供するだけでした。
Gyao!などに番組を供給するだけなので、赤字にはなりませんが、この状態に個人的にはやきもきしていました。YouTubeやニコニコ動画、Gyao!などは、いずれは大きなアグリゲーターになります。今はコンテンツプロバイダーに十分な著作権料が払われていますが、寡占状態になり、彼らが流通を思いのままに操れるようになった時、取り返しのつかない未来がくるでしょう。
テレビ事業がなぜ儲かるかというと、自らコンテンツをつくって、自ら配信しているからです。未来に備えて、コンテンツホルダーの地位に甘んじるのではなく、自らがプラットフォーマーにならなければなりません。
コンテンツを売るモデルから、無料広告モデルへ
ここで船越氏は、VOD事業のビジネスモデルについて言及した。
TVOD(Transactional Video On Demand)
都度課金制動画配信。コンテンツを1話●●●円となどのかたちで売る配信モデル
SVOD(Subscription Video On Demand)
定額制動画配信。Huluなどに代表される、月額定額でドラマや映画が見放題のモデル
AdVOD(Advertising Video On Demand)
無料動画配信。無料で動画を配信し、広告で収入を得るモデル
船越:現在、「日テレオンデマンド」においては、1話300円、全話1,800円でコンテンツを販売するTVODのモデルで事業を行っていますが、TVODの事業モデルには限界があります。その事業規模も、10~20億程度が限界でしょう。ゆくゆくは米国型のSVOD、その先には無料広告型のAdVODの時代が必ずきます。SVOTとAdVODのモデルををうまく組み合わせて事業をつくっていく時代がくると思います。