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マーケティングオートメーションの最新動向を探る

マーケティング自動化によって「マーケティング活動の主導権を企業に取り戻す」【中編】「IBM Enterprise Marketing Management」と「Adobe Marketing Cloud」

クリエイティブとマーケティングの両輪を回すアドビ システムズ

 いまだPhotoshopやIllustratorなどクリエイター向けツールベンダーのイメージが強いアドビ システムズ。とはいえ、彼らがWeb解析ツールとして大きな実績を持つOmnitureを買収したのは2009年のことだ。

 その後も着々と買収を進め、2010年にWebコンテンツ管理・デジタルアセット管理のDay Software、2011年にはオーディエンスデータ管理のDemdex、動画広告プラットフォームのAuditude、そして2012年にはマルチチャネルのデジタル広告最適化ソリューションを提供するEfficient Frontierを買収。次々とマーケティング関連ツールを手に入れている(Efficient Frontierは、ソーシャルエンゲージメントのContext Optionalやデジタル広告管理のDownstream Marketingを買収している)。

 これらを使ったデジタルマーケティングの包括的ソリューションが「Adobe Marketing Cloud」だ。これでアドビが実現したいのは、従来のCRMやデータベースマーケティングの世界ではなく、顧客にどう「エンゲージメント」するかということ。そのために、自社製品の認知度を上げリードを獲得するだけでなく、マーケティング活動全体を俯瞰し、自社のマーケティングの強み弱みがどこにあるかを把握することが重要になる。その上で適切にマーケティング活動を行うのだ。

 このAdobe Marketing Cloudに欠けていたのが、顧客のプロフィルを管理してターゲットごとにキャンペーン管理を行うマーケティングオートメーションの部分だった。そこで2013年7月に買収したのがキャンペーン管理ツールのNeolaneだ。Neolaneは日本での知名度は高くないが、欧米を中心に広く普及しており、買収発表時点で400社以上の顧客が採用。多くのマーケティングキャンペーンツールは、既存顧客、つまりプロファイル情報のある顧客に対しアクションをとる。対してAdobe Marketing Cloudは、後述するように相手が誰だか分からない状況でもキャンペーンが打てるのが特長だ。それに個別のプロファイルに基づいたキャンペーン管理を得意とするNeolaneが加わったことで、幅の広いマーケティングキャンペーン管理が行えるようになった。

パーソナライズしたコンテンツの作成と配信をタイムリーに実現

 オンライン上の行動によって表示するバナーを変えたり、Webサイトのコンテンツそのものをパーソナライズして表示する。そこからターゲットにアクションを起こさせ、それが誰かを特定し、個別のアプローチをする。そんな仕組みを従来のAdobe Marketing Cloudでは提供してきた。この「誰かを特定した」後を引き続きフォローし、購買などに結び付けていくのが新たに手に入れたNeolaneの機能で実現する「Adobe Campaign」というサービスとなる。

Adobe Campaignの各画面(クロスチャネルキャンペーン管理顧客、プロファイル統合管理、1 to 1ターゲティング)
Adobe Campaignの画面
(クロスチャネルキャンペーン管理顧客、プロファイル統合管理、1 to 1ターゲティング)

 Neolaneもこれまで紹介してきたマーケティングオートメーションのツール同様、GUIを使ったインターフェイスでパーソナライズしたキャンペーンを設計できる。それを実施し、効果測定の結果を再びキャンペーンの計画に反映させることができる。チャネルとしては電子メールが中心となるが、それ以外のクロスチャネルにも対応する。

クリエイティブとマーケティングの技術をキャンペーン機能と一体化

 メールを使ってキャンペーンを打つ際には、パーソナライズされたメールコンテンツとそれに対応するランディングページが必要になる。メールには、通常のPCクライアント用の電子メールもあればモバイルのショートメールもある。当然ながら、それぞれで表現の仕方を変えなければならない。ランディングページも同様だ。facebookなどのソーシャルネットワークに誘導することもあるだろう。

 個人に最適化するだけでなく、PCとモバイルの双方に適したコンテンツを用意するのは手間がかかる。アドビには、Web解析技術とコンテンツ管理技術を組み合わせることで、コンテンツを訪問者ごとに自動で最適化して表示する仕組みがある。この仕組みとAdobe Campaignを組み合わせることで、パーソナライズされたキャンペーンにおいても容易に最適なコンテンツを自動配信できる。

Adobe Marketing Cloudの現在の姿

 Omnitureを中心として培ってきたWebマーケティング技術とクリエイティブ作成プロセスを、キャンペーン機能と一体化できるのが、アドビのマーケティングオートメーション最大の強みだろう。多彩なコンテンツを素早く作って柔軟に配信できなければ、どんなに顧客の行動を分析し、きめ細かくセグメント分けしても意味がない。

 コンテンツの作成を外注していれば、そのやり取りだけでも相当な手間となる。内部でマーケティング担当者がいかに手間をかけずに実現できるか。デザイン部品は外注しても、それら部品とメッセージを組み合わせ、配信用コンテンツを自ら組み上げる。あるいは、ツールを使い半自動的に生み出す。それができるのが、Adobe Campaignが加わった新しいAdobe Marketing Cloudなのである。

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アドビはツールベンダーではなく、顧客のマーケティングパートナーを目指す

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

ブレインハーツ取締役。AI、エキスパートシステムが流行っていたころに開発エンジニアに、その後雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダの製品マーケティング、広告、広報などを経験。現在は、オープンシステム開発を主なターゲットにしたソフトハウスの経営とライターの二足の草鞋を履いている。DB Online チーフキュレーター。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/04/01 10:00 https://markezine.jp/article/detail/19478

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