再創造に立ちはだかる壁はどう壊す?
編集部:この壁に対して、Adobeはどのような解決策を提案するのでしょうか?
スミス氏:まず、データの可視化に対してです。この問題を解決するために、Adobeでは自社の顧客分析力を判断するためのツール「Capability-Maturity Self-Assessment Tool(顧客分析力成熟度評価ツール)」を無償で提供しています。Adobeは分析力の成熟度を、現状がどのようになっているか調べる記述的な分析(descriptive analytics)、自動的に予測に基づいてアクションがとれるような高度な予測分析(predictive analytics)などの5段階のモデルに分けました。このツールを使用することにで、自社がどのフェーズにいるのかレーティングできます。
これを使用し、ダイアグラムやグラフによる可視化ができます。さらに、他社と比べて自社の成熟度合いがどのようなものかがわかります。これを使ってゴールを設定し、目標に対しての達成度合いレポートをとるといったやり方ができるでしょう。
一定のレベルになったあとの段階で、予測分析ができるようになるでしょう。ここまで来ると、お客さんの予想図も描けています。そのカスタマービューをもとに、何が予想できるのか、どういうアクションを取るべきかが分かるようになります。
編集部:Adobeの予測分析は他社のものとは何が違うのでしょうか?
スミス氏:他社との違いは単なる予測分析ではないということです。通常、予測分析は統計学的に非常に高度なもので、博士号(Ph.D)レベルの知識がないとできません。しかし、マーケターには統計学の知識がありません。そこで、マーケターでも使えるように、一定のパラメータを設定しておき、しきい値を逸脱するような現象が起きたら、異常パターンとして認識するようなシステムを構築しました。異常なパターンが認識された場合でも、当てずっぽうではなく、定量的に確かな証拠をもとに異常を検知します。
これは、いままで専門的な人間にしかできなかった予測するという能力が一般の人にも与えられるということです。したがって、統計学について素人でも、優れた意思決定ができるようになります。
その先に何がある?
編集部:知識がなくても分析ができるようになるとして、将来的にはマーケティングや分析はどうなるのでしょうか?
スミス氏:今後、分析に関わる人はアナリストやマーケター、経営者まで多岐にわたるでしょう。そして、彼らの役割によって分析したい範囲も変わります。役割に合った適切なデータを出し、より速い意思決定ができるよう、ユーザーに対し権限を与えることが重要になるでしょう。つまり、立場によって正しい分析情報を得られることがゴールになるのです。