馴染みすぎて気付かない? Twitterのネイティブアド
編集部:Twitterというと「バルス祭り」や「あけおめ」ツイートで日本のユーザーが世界記録をたたき出すということでも有名です。Twitterのユーザーは、ほかのソーシャルメディアにはないパワーがありますね。
王子田:一人一人のツイートは小さくても、それが集まると大きな力になる。マーケターにとっては、工夫次第でオーガニックでも、プロモーションを仕掛けることができる場だと思います。
編集部:Twitterの魅力について、いろいろうかがえそうで楽しみです。最初にTwitterのプロモーション・ソリューションについてあらためてお聞きしたいと思います。
王子田: Twitterのプロモーション商品(以下、プロモ商品)のラインナップは、プロモツイート、プロモアカウント、プロモトレンドの3つです。プロモツイートは、ターゲットのタイムラインに、広告主のツイートをネイティブアドとして表示するサービスです。最近、投稿したツイートに含まれるリンク先の詳細情報を表示する、「Twitter Cards」という無料の機能も追加されました。プロモアカウントは、「おすすめユーザー」欄、検索結果、およびタイムラインに、広告主のアカウントフォローへのおすすめを表示するもの。プロモトレンドは、Twitter上で話題のハッシュタグを表示する「トレンド」欄に広告主のハッシュタグを表示します。
編集部:非常にシンプルなラインナップですね。
王子田:実は、Twitterに広告ソリューションがあると言うと驚かれるかたが多いのです。プロモ商品には、あきらかに広告だとわかるように黄色いマークが表示されます。でも、広告が自然なかたちでコンテンツに馴染んでいるので、みなさん違和感なくご覧になっているんだと思います。そこがネイティブアドの魅力のひとつだと思います。
また、Twitterの場合、ターゲティングが少し特殊です。ターゲティングというと、一般的にはファネル(漏斗)のようにどんどん狭まっていくイメージがあると思います。これが、Twitterの場合は逆になります。ツイートは一番最初にアカウントのフォロワーに届きます。そして、プロモ商品を使って、メッセージを伝えたい相手を追加していく。どんどん広がりを作っていくイメージです。
この広がりが、Twitterのプロモーションでは重要になってくると思います。実際にTwitterでプロモーションをされている、サイボウズとドリコムのお二人のお話をうかがうと、より具体的にイメージしてもらえるかと思います。
情報を届ける際に強力な「インタレストグラフ」
王子田:サイボウズがプロモ商品を使用するきっかけは何だったのでしょうか?
丹野:サイボウズというと、企業向けのグループウェアを思い浮かべる方が多いと思うのですが、私が担当している「サイボウズLive」は個人の趣味のサークルなど、ビジネス以外の用途でも使える無料のグループウェアで、新規ユーザー獲得が私のミッションでした。
リリース当初はユーザーへの認知が高い壁でした。というのも、一般の方はグループウェアというもの自体を知らなかったり、知っていてもプライベートでの利用に、結びつかない場合が多い。良い製品があるのに、情報を届けられないという状況がもどかしくもありました。
そこで、Twitterのプロモツイートを利用することにしました。というのも、Twitterでは特定の趣味や興味関心でターゲティングができると考えたからです。
王子田:どのように活用されたのですか?
丹野: はじめて使用したのは2013年11月で、同人サークルをターゲットにしました。同人誌やゲーム、音楽作りはまさにひとつのプロジェクトです。だから、絶対に活用してもらえると考えたのです。まず、2種類のユーザーに情報を届けられるようにしました。1つは、有名な同人誌即売会や同人作家のアカウントをフォローしている人。そして2つ目が「コミケ」のようなワードをつぶやいている人です。そして、「サイボウズLiveを同人誌作りに使ってみよう」というWebページを作って、この人たちをプロモツイートで誘導しました。
すると、RT(リツイート)が止まりませんでした。しかも、RTの半分は広告を仕掛けていない一般ユーザーからのものでした。プロモツイートをターゲットに届けたらRTしてくれて、それを見たフォロワーがまたRTするという、いい循環が回った感じです。
編集部:Twitterならではの波及ですね。
丹野:このプロモーションで、Twitterのインタレストグラフは非常に強力だと実感しました。というのも、Twitterのユーザー同士は「同人作品が好き」という同じ趣味でつながりを持っています。だから、誰かがその関連のツイートをすると、バイラルしてゆく筋があるんです。しかも、Twitterで誘導したサイトから、サインアップした方のコンバージョン率は、通常の倍以上でした。
リリース前のゲームも「バイラルで集客」
王子田:ドリコムでは、ゲームのプロモーションに活用していただいたようですが。
松江: はい、最初は「フルボッコヒーローズ(R)」というゲームの事前登録に使用しました。ソーシャルゲーム業界は競争が激化しています。最近では、ゲームをリリースする前に、どれだけロイヤリティの高いユーザーを囲い込めるかが重要になっています。
また「リセマラ」というユーザー行動が主流化されているのを感じていました。これは「リセットマラソン」の略です。一般的にソーシャルゲームは初回開始時にランダムで、アイテムを1つゲットできます。ほしいアイテムが出るまで、アプリのダウンロードとアンインストールを繰り返す行為がリセマラです。
編集部:それは制作側の意図するところではないですよね。
松江:我々はこれを逆手にとって仕組みにしてしまおうと考えました。そこでできたのが「フライングガチャ」です。ゲームの事前登録をして、Twitter認証すると、5回までガチャを回せます。さらに、こちらが用意した文面をツイートしてもらえば追加で5回ガチャを回すことができます。
ツイート内容もゲームに合わせた文面を用意して、ユーザーが面白い、つぶやいてもいいなと思ってもらえるように工夫しました。すると、どんどんツイートされ、拡散されました。結果的に、事前登録(Twitter認証)が約10万件、ツイート数が約140万件になりました。
王子田:それはすごい。ところで今回はなぜTwitterを採用したのですか?
松江:フライングガチャは、まだゲームがリリースされていない段階で使われる事前登録メディアサービスです。リリース前はどんなゲームか分からないので、先にゲームを知ってもらうプロモーションはとても有効。そうなると、バイラルの力を使うのが一番良いという結論になりました。それで、Twitterを使うことになったんです。今回はプロモ商品を使わず、オーガニックで行ないましたが、大きな効果があるとわかったので、プロモ商品を活用しはじめたところです。
ソーシャルゲームのアイテム課金方式の通称。カプセルトイ(ガチャガチャ)のように、提供されるアイテムはランダムで決まる。そのため、アイテムを得ることを「ガチャを回す」と表現する。
ツイートは「テキスト広告ではない」
王子田:両社に共通して言えるのは、Twitterの「広がってゆく」という点が非常に役立ったことでしょうか。
丹野:そうですね。Webでプロモーションをする場合、高い広告ROIが求められます。だから、バイラルを考えないマーケターはいないでしょう。その点、Twitterはバズが生まれる場に直接広告を出せます。これは他にない特性かと思います。
松江:Twitterの特徴には気軽さもあると思います。他のソーシャルメディアでは投稿しにくい内容も、「Twitterならいいか」とツイートされる側面があるのではないでしょうか。そして、それが面白い内容だとRTされる。だから、拡散しやすいんでしょうね。
王子田:どのようなツイートが効果的だと思いますか?
丹野:Twitterユーザーの側に立って、ネタとして面白いかを考える必要があります。例えば「サイボウズLive」も、グループウェアというビジネスツールと、同人活動という趣味の最たるもののギャップ自体が面白く、ネタになると思いました。ユーザーにこちらの投稿やプロモーションを楽しんでもらわないと、普通のテキスト広告と変わらなくなってしまいます。
松江:そうですね。Twitterというと「文章でのツイート」という固定観念を抱きがちだと思います。でも、画像を活用してパッと見でインパクトを与えることもできます。ゲームの場合なら、レアアイテムの画像を載せて注目をひく、というようなこともできるかもしれません。
王子田:Vineの短い動画も使えると思います。Vineは繰り返し再生しているうちに楽しさが伝わってくる不思議な面白さがある。
丹野:Twitterのリアルタイム性も重要だと思います。リアルイベントに合わせてツイートを出せば、ユーザーの「今」に絡むことができます。例えば、同人誌即売会があった日に関連情報を提供できれば、受け入れてもらいやすくなります。
松江:ゲームの場合も、レアアイテムをゲットしたという内容だとRTや流入が多いですね。
王子田:ちょっと毛色は違いますが、興味関心のひとつに「就活」というのもあります。一言で「興味関心」といっても多様ですし、そこにはソーシャルグラフとは違う強いつながりがある。
丹野:ライフスタイルなんかもTwitter上でのつながりになっていますよね。実は、「サイボウズLive」では共働きのご家庭に向けた、プロモツイートの展開も考えています。
松江:あっ、確かに! 我が家にも必要なサービスかも(笑)
Twitterはマーケターの腕が光る場所
編集部:話は尽きないのですが、最後に、Twitterを使ったプロモーションに取り組もうとしている方にアドバイスをいただけませんか。
丹野:マーケティングにおいて、バイラルを考えないのは、もったいないと思います。そして、バイラルを意識するならTwitterは非常に効率が高いツールです。
即時性の高さも良いところだと思います。すぐ反応が返ってくるので、投稿内容を修正できる。プロモーションのPDCAサイクルを回すのに丁度よいスピードだと思います。また、フォロワーというのは、会社にとって大事な資産でもあります。
松江:Twitterはマーケターの腕の見せ所がある場だと思います。というのも、Twitterにはいろいろな人が集まっていて、さまざまな関心事をツイートやRTしています。だから、ターゲティングの切り口も、無数にある。どんなアプローチをすると効果的に情報が届けられるのか、どんな表現をしたら面白がってもらえるのか。それを考える立場にとってはすごく楽しいですし、やりがいがあると思います。
王子田:数年前のTwitterのセールスカンファレンスに、アリアナ・ハフィントンさん(The Huffington Postの創始者)が出席したときのことです。彼女は「Twitterは一体どうやってマネタイズするつもりなの?」と我々に問いました。それに対して、弊社のトップセールスはこう答えています。「マネタイズの素は3つ。ユーモア、ヒューマニティ、リアルビッグディール(ビッグな商談)」。これがTwitterというサービスをよくあらわしていると思います。
浅田真央選手のオリンピックでの演技を見て、世界中のトップスケーターが自分のことのようにツイートし、それにみんな感動した。人間的な共感、そして面白いと思ってもらうユーモア、これをビジネスに取り込んでいくことが大事なのだと思います。「Twitter marketing is fun !」今日はおふたりのお話を聞いていて本当に楽しかった!