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MarkeZine Day 2014 Premium Video Ad(AD)

100社以上の動画広告キャンペーン支援から見えたオムニバスの実績値、ソニー銀行の最新事例紹介

 アドテクノロジーの進化に伴い、テキストや画像中心だった広告に動画が加わりつつある。この状況で、誰もが気になっているのは「本当に動画広告に効果があるのか」だろう。「MarkeZine Day 2014 Premium Video Ad」では、オムニバスの山本章悟氏とソニー銀行の中路宏志氏が、事例をもとに動画広告の可能性について議論を行った。

動画広告の現状と課題とは?

株式会社オムニバス 代表取締役CEO 山本 章悟氏
株式会社オムニバス
代表取締役CEO 山本 章悟氏

山本:まずは、弊社が動画広告に進出した経緯と、業務を通して感じる動画広告の現状から説明します。

 弊社はもともと、ディスプレイ広告などを取り扱ってきたアドテクノロジー専門企業でした。2010年より提供しているアドネットワーク『Omnibus Audience Network』を活用して、「枠」ではなく「人」の単位でターゲティングを行うことでクライアントの支援をしてきました。しかし、ブランド認知などの観点では「バナーはインパクトに欠ける」という声をクライアントからいただくこともあり、もどかしさを感じていました。そこで2013年1月にTubeMogulと業務資本提携を行い、動画広告事業に参入しました。それから約1年経った今、100社以上の動画広告キャンペーンを支援し、その視聴数は合計で約1億5,000万ストリームにも及ぶ実績を有しています。

 現段階で私たちが把握している経験値としては、CTRは2.5%前後、クリック単価は50円~80円ということがわかっています。また、15秒動画の場合、平均12秒は閲覧されおり、完全に閲覧される動画は全体の4~8割程度です。そして、1人あたりの接触単価は0.9円で、つまり、100万円をプロモーションに投じれば約111万人に到達するということです。加えて運用を通して「インタラクティブプリロール広告」は、コンバージョンを押し上げることも分かりました。

 一方、これまでの取り組みで課題も見えてきました。日本の動画広告市場には「リーチ(視聴量)」と「メジャメント(計測方法)」が足りないのです。リーチの拡大には、多くの媒体に参加してもらう必要があります。日本では約6,000万人のユーザーが、月間約20時間動画サイトに滞在しています。しかし、フリーのサイトが多く、広告主が安心して配信できる媒体が豊富とは言い難いのが現状です。米国ではYahoo!、AOLなど動画広告のビジネスモデルが確立している媒体が多くありますが、日本には広告主の出稿意欲を高めるサイトが不足しています。そこで、米国のような環境を日本でも作るべく、動画広告に特化した配信プラットフォーム『Omnibus Video Exchange(OVX)』を開発しました。その結果、現在では日経新聞や、Usteamなどのメディアに導入が進んでいます。

Video Ad 専用のPrivate Exchangeを構築

 もうひとつの課題がメジャメントです。現在でもクリック、インプレッションなどの指標はあります。しかし、いずれもユーザーのアクションに対する指標であり、広告主が求める効果測定の指標としては不十分でした。ところが最近では、動画広告の再生秒数である「プレイタイムパービュー」、広告を見たユーザー比率を表す「コンプリーションレイト」、再生回数を表す「ビュー」、キャンペーン全体の再生時間である「トータルタイムビュー」といった指標が整ってきました。しかし、このような定量的なデータからは、広告を見たユーザーの気持ちの変化は読み取りにくいです。その点はマクロミルと組んで計測マトリックスを作成しました。そのため、動画広告によって、ユーザーの態様変化を把握できるようになりつつあります。

 そして、ここからはソニー銀行の事例をもとに、動画広告の効果について考えたいと思います。

動画広告を主軸にしたクロスチャネルプロモーション

ソニー銀行株式会社 営業統括部 マーケティング担当シニアマネ-ジャー 中路 宏志氏
ソニー銀行株式会社
営業統括部 マーケティング担当
シニアマネ-ジャー 中路 宏志氏

山本:ソニー銀行といえば、日経金融機関ランキングで顧客満足度7年連続1位に輝いていますね。顧客満足度を重視する御社は、どのようなキャンペーンをされたのでしょうか?

中路:弊社は個人に特化したインターネット銀行で、約100万口座を保有しています。また、幅広い年収の方にご利用いただいています。弊社である調査を行ったところ、多くの方が「ATM手数料」を気にしていることが分かりました。そこで2013年12月から2014年2月にかけて「コンビニATM手数料0円」の告知キャンペーンを行いました。プロモーションはオンラインの動画広告を核に、共通フォーマットを使用して、PC、スマホ、新聞・雑誌、交通広告と、クロスチャネルで展開しました。

 動画広告で活用したソリューションとしては、ビデオDSP『TubeMogul』をオムニバスの動画配信システム『OVX』につなぎ、マクロミルのリサーチを活用してブランドリフト調査を行いました。

プロモーションで使用したソリューション

山本:なぜ、動画広告をキャンペーンの主軸に据えたのですが?

中路:理由は3つあります。まず、記憶に紐づいた認知を最大化したかったことです。そして、動画が持つ興味の喚起力に強さがあると考えたこと。3つ目に、他のレスポンスメディアへのアトリビューション効果を期待したことです。

メジャメントで見えた動画広告の効果

山本:キャンペーンの結果はいかがでしたか?

中路:目標は視聴完了数が192万回、視聴単価は5.5円でした。『TubeMogul』と『Google True View』の2つのメニューを活用したのですが、結果としては視聴完了数が320万回で完全視聴率単価は2.9円。視聴効率の結果のインパクトは大きかったです。また、当初意識していなかったのですが、誘導効率でも非常に良い結果がでました。サイトへの誘導数は13.8万、CPCは68.1円でした。通常私たちが施策を行なっているDSPやアドネットワークでのCPCは100円前後なので、この誘導パワーは大きいと感じました。

 さらに、動画広告を開始したことによりランディングページのPV数は1.8倍になりました。これまでは「どこかに出稿したら一時的に上がる」という波がありましたが、動画広告でPVが底上げされたことの現れです。ちなみに、群を抜いてPV数が増えたのは12月27日。この日にUstreamで配信された話題の番組中に広告が入ったことで、視聴数がスパイクしたようです。

 アトリビューション効果について触れていきましょう。動画広告のキャンペーンは12月から2月まで掲載しましたが、露出ピークは1月でした。この間、ディスプレイ広告の施策はずっと行っています。次の図の赤線はディスプレイ広告のCPA、緑が視聴動画完了数です。

アトリビューション効果

 完全再生数が200万回を過ぎたあたりでCPAは急激に下がり、掲載が終了しても、戻りが少ないことから、一部ブランド想起があるのではないかと思っています。ディスプレイ広告CPAの獲得コストの変化を追ってみると、動画広告掲載中は7割減、掲載終了後は3割減となりました。この結果から、動画広告のアトリビューション効果を見ることができるでしょう。

山本:ブランドリフト調査は、どのような結果になったのでしょうか?

中路:ブランドリフト調査では認知率、興味関心率、ATM手数料0円認知率、態度変容率を調べました。動画広告の接触者は非接触者に比べて、すべてのスコアで2倍以上のリフト効果がありました。特に、一番の狙いだった「ATM手数料0円認知率」は75%に及びました。

ブランドリフト効果

動画広告のリーチは「認知+記憶」で考える

中路:ブランド調査の結果をさらに細かく分析すると、認知率についてはWEBより交通広告の方が高いことがわかりました。この結果だけ考えると「交通広告がいいのでは」と思うかもしれません。しかし、リーチは「認知+記憶」で考える必要があります。5,000人にアンケートをとったところ、広告全体のリーチ率は0.74%という結果でした。内訳をみるとWEBが0.54%、交通広告が0.22%です。WEBは交通広告の2倍、効率よくリーチできていることがわかりました。また、性別で見ると、男性の方がWEB広告のリーチが高いことも分かりました。これを踏まえて記憶獲得コストを算出すると次のような結果になります。

記憶獲得コスト

 交通広告よりもWEBの方が安いことがわかります。目に見える結果だけでなく、同じ条件にしたときにどちらの方が効果があるのかを、判断することが必要です。

実践から学んだ成功のコツ

山本:実際に動画広告を打ってみて、何か収穫はありましたか?

中路:今回2つのことがわかりました。1つは、動画広告は認知率の向上だけでなく、態度変容にも効果があるということ。もう1つは、「ATM手数料0円」の記憶者数は、認知率の高い交通動画よりも、リーチの高いWEB動画の方が上回っていることです。

 また、数字ベースで効果検証ができたことも大きいです。これまでは「認知」しか計測できませんでしたが、完全視聴率を取得できて、「認知+α」の波及効果を確認することができました。当初は社内でも動画広告の効果は半信半疑でした。ですが、結果を受けて、動画広告に対する期待値は上がったと思います。

山本:動画広告接触者に認知効果や態度変容が見られたことは大きいですね。

中路: 弊社の場合、300万人に完全視聴して頂けたことで、効果が出たのだと思います。とはいえ、効果が出るかどうの分岐点は、企業によって異なるかもしれません。私たちも今後、事例を増やして検証をしていきたいと思います。

山本:なるほど。それでは今後、動画広告でやってみたいことはありますか?

中路:動画は見たけどサイトにアクセスをしない、または、サイトにはアクセスしたけど購入に至らない方への施策設計をしたいです。今回のプロモーションで、動画広告がユーザーを連れてくるパワーは大きいと気づきました。だから、動画広告を見たあとに動画を使ったランディングページへ、という手法も取り入れられると考えています。

山本:それは楽しみですね。最後に、これからオンライン動画広告に取り組む方に向けて、アドバイスをいただけませんか?

中路:まずはメジャメントをしっかりと行うこと、単体評価ではなくアトリビューション評価を行うことです。そして、事前に社内へ向けて「アトリビューションも見ます」と約束しておいた方がよいでしょう。後出しにすると、都合の良いデータだけを出したと思われがちです。2つ目は、初めて動画広告にチャレンジする企業は、プリロール広告をおすすめします。あとは、動画広告単体よりも、共通のデザインフォーマットを作って、複数のチャネルで配信すると良いと思います。

山本:実際に行動したからこそ気づくポイントの数々ですね。貴重なお話をありがとうございました。

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この記事の著者

齋藤 麻紀子(サイトウ マキコ)

フリーランスライター・エディター

74年生まれ、福岡県出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。 コンサルティング会社にて企業再建に従事したのち、独立。ビジネス誌や週刊誌等を通じて、新たなビジネストレンドや働き方を発信すると同時に、企業の情報発信支援等も行う。震災後は東北で起こるイノベーションにも注目、取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/06/02 11:00 https://markezine.jp/article/detail/19912