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統括編集長インタビュー

「日本でもマーケティング自動化ソリューションの戦国時代がはじまった」ガートナージャパン 主席アナリスト川辺氏に訊く

ITメガベンダーによる買収が相次ぐ

- 最近のMCCMに関する動きで注目されているのはどのような点ですか?

川辺:やはりAdobe、IBM 、Oracle、salesforce.com といった“メガベンダー”によるマーケティングソリューションの買収とスイート化の動きは目立ちますね。

 IBM:Unica(2010年)、Oracle:Eloqua(2013年)Responsys(2014年)、Adobe:Neolane(2013年)、salesforce.com:Exact Target(2013年)などメガベンダー各社がMCCMベンダーを買収している。

 IBMがUnicaを買収したのは2010年ですから、IBMの動きが一番早かったと言えます。当時ERPといったエンタープライズアプリケーションを飛び越していきなりマーケティングソリューションを次から次に買収したので、我々も驚きを持って注目していました。

 Oracleは最近非常に活発ですね。salesforce.comはBtoBのイメージが強かったのがBtoCにも本格的に進出しようとしている。Adobeは元々IT系の人にはあまり馴染みがなくて、Omnitureの買収によってマーケターの方にポピュラーな存在になりました。それが今はIT系メガベンダーと同じ土俵で戦おうとしている。

 各社が色々な動きをしているように見えるけれど、基本的にはマーケットニーズに対応するために、自社に無い機能を補完する動きです。だから結果的には戦略も似てきます。

- 日本で展開しているMCCMベンダー各社についてコメントをいただけますか?

川辺:弊社はMagic Quadrant for Multichannel Campaign ManagementというレポートでMCCMのグローバルベンダーを評価しています。対象となるベンダーはグローバル複数地域での実績、財務状況、直近一年間での新規獲得顧客の実績、ユーザー企業へのインタビューなどによって総合的に評価され、機能評価を横軸、実績評価を縦軸にしたマトリックス内にプロットされます。

Magic Quadrant for Multichannel Campaign Management2013で紹介されている主なベンダー

Adobe
基本的にデジタル中心で他のIT系メガベンダーとは少し異質な存在。以前からSiteCatalyst(Adobe Analytics)やTest and Target(Adobe Target)を活用した取り組みには見るべきものがあった。昨年買収したMCCMのNeolane(Adobe Campaign)を日本でも展開してくるだろう。

IBM
古くから実績のあるUnicaを買収してIBMブランドで展開。IBMの販売力を上手く活用している。Gartnerの基準では長らく「リーダー」の位置を維持している。SaaSへの対応が遅れていたが、オンラインに特化したSaaS型のキャンペーン管理ソリューションを最近リリース。Sterling Commerceも買収しているので販売・営業系にも強い印象。

Marketo
元来はBtoBのリード管理ソリューションとして高いシェアを持つ。今年4月に電通イーマーケティングワン、サンブリッジとの合弁で日本法人を設立。本格的に日本展開を始める。

Oracle
最近最も活発に買収を展開。元々CRMソリューションのSiebelの存在感が大きくSiebel自体もキャンペーン管理機能を持っているが、日本ではあまり活用されていないのではないか。キャンペーン管理ソリューションとしては今年買収したResponsysを柱にする戦略だろう。BtoBでは先行して買収しているEloquaの方が適性が高い。

Pitney Bowes Software
親会社は国内でも郵便料金計器やメーリングソリューションで有名。買収したMCCMのPortraitを日本でも本格的に展開してくるだろう。コールセンターとの連携などに強い。

salesforce.com
昨年MCCMのExactTargetを買収。近年成長著しい。これまでBtoC領域にはあまり強くなかったが、Exact Target以外にもソーシャル系のRadian6やBuddy Mediaも買収しており、これから本格的にBtoC領域に進出することになる。

SAP
元々製造業におけるエンタープライズソフトウェアでは大きなシェアを持つが、日本市場でMCCMにはあまり力を入れていない。一方で最近BtoC領域の周辺ソリューションを買収しており、分析ソリューションのKXEN、ECソリューションのhybrisを最近買収している。今後BtoC領域を強化してくると予想される。

SAS
分析ソリューションは経営企画や分析部門で評価が高く、SASの分析基盤を使っている企業がアドオンする形でキャンペーン機能を導入するケースが多い。Base SASというプログラム言語による統合ソフトウェア環境があり、そのスキルを持った人が社内にいる場合には使いやすい。

Sitecore

元々はコンテンツ管理ソリューション。テクノロジーとしては.NETなので.NETが合わないという企業には向かないがBtoCのEコマースのコンテンツ管理では非常に強く魅力的。コンテンツ管理では日本でも顧客基盤を広げている。

TERADATA
老舗プレーヤーの一つで元々顧客分析に強くCRMソリューションも提供していたが、マーケティング系ソリューション大手のAprimoの買収が大きい。日本国内では実績が伸びているように見えないが世界的には成長している。高いシェアを持つデータウエアハウスと分析ソリューションに連携する形で導入を検討されるケースが多い。小売系に強い。

その他のベンダー

 ブレインパッドが取り扱っているフランスのProbanceについてはまだ情報が少ないがMCCMには珍しいSaaS型でその点では最近の企業ニーズにマッチして日本で受け入れられやすいだろう。またメール配信サービスからマーケティング自動化ソリューションへとサービスを進化させているエクスペリアンのような立ち位置の会社もいる。

 純国産のベンダーでMCCMに近いものとしてはアルベルト、シナジーマーケティング、スプリームシステムコンサルティングなどがあるが、現在国産ベンダーの中でグローバルベンダーと互角に戦えるところはないと思われる。しかし日本国内だけでビジネス展開をしている企業にとっては、必ずしも高機能なMCCMが使いやすいとは限らない。国産ベンダーの製品がベストマッチのケースもあるだろう。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長

立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集部...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/05/23 08:00 https://markezine.jp/article/detail/19930

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