これまでの10年を象徴的した、ライブドア事件
渡辺
いろんな会社とか見ていて思うのは、両者をバランスよく繋げている人って凄く少ない。ディスコミュニケーションの連続です。ひいては経営効率も落としているのが良く分かる。出来ないことをやろうとして、本当に出来ることを見過ごしたり、適切なリソース調達と期間を設定出来ていなかったり。事情計画がブレるのは自然な結果といえるかもしれません。
四家
そこにバブルな資本がドカンと入ってきたりすると最悪というか。
渡辺
ですね。もう何もかも回らなくなります。VCの資金だけでも息の根を止めるのは簡単です。ビジネスモデルにもよりますが、事業のインフラ、足腰が整っていないときに急激な成長なんか望めないのに、それでも彼らは短期の成長を求めますから、矛盾して無理して破綻してしまう訳です。たいていはそんなパターン。
四家
渡辺さんほどじゃないと思いますけど、ぼくもこの10年で何度も見てきました、そのパターン。
渡辺
必ずしもアイデアの良し悪しじゃないですよね、思うに。
四家
だからまさに、それこそマーケティングの問題なんじゃないかと。
渡辺
ネット企業においてはテクノロジーの取り扱い方の問題。ただの販売戦略ではなく、ある種のバランス取り、メッセージ調整としてのマーケティングは非常に大事なはずです。しばしばビジネスモデルの根っこを握ってますので。
四家
そう考えると、この10年の締めくくりが
ライブドア事件だったというのは何かを象徴してます。
渡辺
なるほど。
四家
これはまさに渡辺さんが前に指摘したことで、技術があってお金も集められるけど、サービスを作る力の弱い会社が
ライブドアだと。
渡辺
前にそんな話をしましたね。
四家
そう考えると、あの会社のサービスのデザインが、他社のまねっこになるのもよくわかる。技術をサービスに仕立て上げる力が弱い。もったいない。
渡辺
Web2.0についてもそう思うことがあるのですが、ちゃんと計画すれば、ただ作ることは昨今難しくない。使われて売れるものを作れるかですよね。実は「使われるのか?その後収益に結び付けられるのか?」というシンプルで難しい領域を最後踏み越えなきゃいけないのに、先に株価や収益目標が来てしまって追い立てられている。また、技術があるので、動くものは作れてしまう。
四家
少なくとも 自分が欲しいと思うものを出さないと、自分の大切な人に薦めたいと思うようなものを。
渡辺
それぞれの会社の内部の意思決定プロセスに依存する話なので、なんとも言いづらいところはありますが、結果から推測すると、自分なりに良いと思えるものは出せてないのかもしれないというところでしょうか。
四家
たとえば
はてなの50%ルールって ある意味ニーズを満たしているじゃないですか。未完成なものに参加する形で使いたいという、はてなユーザーのニーズ。
渡辺
はい。ちょっと前だと、プロシューマーとか言われていたかもしれないですね。いまだとすっかりWeb2.0ですけど。
四家
僕、プロシューマーって言葉はよく使ってました。専門性の高いITニュースサイトの広告営業やってたので、ポータルサイトに対抗するために使ってみたんですが、思えば、ITニュースだけではプロシューマーのニーズを満たしてはいなかったんだな。
渡辺
そういった時代の仇花みたいな言葉、本質的なことに触れていたけれども、という言葉ってありますよね。
四家
あらためて「マルチメディア」とか考えてみるとか。まあでもそれはあんまり楽しくないな。
渡辺
いや、ベースはそこだと思いますよ。結局、放送と通信とか、ワンセグ
(注3)とか、バックエンドのネットワーク統合とか、マルチデバイスって要するに、マルチメディアじゃないですか。昔懐かしいSMAPのCMとか思い出しそうになります。四家さん以外にも最近10年前くらいを振り返ってる人が業界に何人かいますよ。
四家
へえ、そうなんですか。
渡辺
数年前くらいの話っていまいち使えないことが良くあって、10年くらい前で、純度の高い情報って今読むほうがしっくり来ます。本質的な普及というか、世の中が馴染むのってそれくらいかかるんだと思います。
四家
そうか、わかった。Web2.0って「10数年かかってやっと、Web1.0を客観的に振り返る視点が持てるようになった」ってことだ。
渡辺
その受け取り方も心地いいですね。僕は、Web2.0とは以前と以降となんとなく意識させるマジックワードなんだと解してます。実体というよりは、境界面。もちろん「それ以降の何かを開いた」部分もありますけど。
四家
境界面ね。
渡辺
今後も当面揺れ動いていくものなので、ずーっと、2.0と言い続けるのもなんかアレですし(笑)。
四家
「マルチメディア」という言葉同様、そのうちしぼみますもんね。いまはこのマジックワードのおかげで元気になっている人たちに期待したいと思いつつ、彼らの作り出すものを、どうやって価値に変えていけるかを考えていかないといけない。。これが、これからのWebマーケティングの課題ということかなあ。
注3:ワンセグ
1セグメント放送、1セグ放送とも言う。地上デジタル放送のモバイル機器向け放送のことを指す、例えば携帯電話などを使って、外出先、通勤途中でも地上デジタル放送を楽しめる。