最終回となる本稿では、以下の2つのテーマを中心に解説を行う。
- プライベートDMPの使い方
- DMP導入の選択肢
「プライベートDMPの使い方」では、あまり知られていない導入準備期におけるタスクと運用の軸となるマスタールールについて解説を行う。「DMP導入の選択肢」では、最新のDMP種別マップとともに、企業のマーケターがDMPを選定する際における選択のポイントについて、ケースを考察する。
プライベートDMPのメリットとは
プライベートDMPは、自社保有データ活用のためのプラットフォームだ。データセラーDMPが、アウトバウンドのオーディエンスデータの統合活用を特長とするのに対して、プライベートDMPはその企業しか知りえないオーディエンスデータを取り扱うためのプラットフォーム と言える。
プライベートDMPの利点は自社の保有する行動データである、企業データ3軸(広告データ、Webログデータ、CRMデータ)の統合にある。もし社内にCS(カスタマーサービス)の応対ログやDMの集計データといったアナログのデータがあれば、それらも統合する事が可能だ。これまでバラバラに管理されていた行動情報が、1つのIDに名寄せされ、マーケティング活用することができるようになるのが最大の利点と言えるだろう。
もうひとつの利点は、生の行動データを扱えるという点だ。統計処理などされておらず、何の解釈も与えられていない様々な自社データを取り扱えるのは、マーケター、アナリストにとっての醍醐味かもしれない。また、取得するデータ自体を何にするか設計できるのも利点と言えるだろう。
自社における、全てのユーザ接点で情報を収集/分析し、そのユーザに最適な対応策を考える。まさに、“どのような人か、がわかれば何をするか考えることができる” ということである。
プライベートDMP導入において重要な事
「どのような人」かわかった時に、「何をするか考えたこと」をまとめたものを、我々は“シナリオ”、または“コミュニケーションシナリオ”と呼んでいる。プライベートDMP導入手順として重要なのは、まずシナリオを描く必要があるという点だ。例えば、「特定商品を購入した人に対して、レコメンドメールを出してクロスセルしたい」といった目的があって、その効率化のためにメール配信の自動化を検討する。
テクノロジーありきでDMP導入検討を進めている現場にたびたび遭遇するが、DMPおよびその他のツールは、描いたコミュニケーションシナリオを効率的に運用するための方法論であることを忘れないでほしい。実現したいシナリオがあって、それに合わせたツール(テクノロジー)を選ぶというのが順番である。
戦略と方法論を逆にしてしまうような“誤り”は、技術的革新が起こって可能なことが爆発的に増える際によく見られることだが、DMPもしかりである。しっかりと戦略(シナリオ)を見定める必要がある。