意識すべきは「火付け役」
皆川:ソーシャルや生放送は「何が起こるか分からない」という恐怖もあると思います。でも、キャンペーンをソーシャルで拡散をしたいというのは、多くの企業が考えることですよね。ソーシャルを上手く使う上でのキーポイントは何だと思いますか?
伊豆蔵:今回の取り組みでは単に高校生ではなく、「難問が好きな高校生」を意識しました。難関大学を目指す高校生は難問を解くこと自体が好きなのではと考えたからです。そこにインサイトがあると予想しましたが、期待通りに反応を示してもらえました。高校名を記載したチラシなどに対して「何でウチの高校が入ってないんだ」といった声もなくはなかったです。でも、温度感としては、ネガティブなものではなくクリエイティブへの純粋な反応だったと感じます。
竹谷:メインターゲットをスマホ等の端末を使ってコミュニケーションをとれる若年層に絞りました。その層からは、狙い通りの反応がありました。一方で40代くらいの男性が、「子供がこんなものを買ってきた」というような拡散をしてくれたりするなど、意外な層からの反応もありました。だから、こちらが固定概念を持ってターゲットを決めつけてしまうことは間違っているのでは、と感じた瞬間です。
皆川:確かに昔は性別や年齢、世代でターゲティングができていました。というのも、「戦争の経験有無」や「ベビーブーム」といった各世代に響く共通の経験がありましたから。でも最近は、大きな出来事や経済的な状況がなくなってきています。そこで、今度はデバイスや知っている情報でターゲットを切るようになります。でも、こうなると世代が混ざってくる。だから、これからは少し視点を変える必要があると思います。情報が伝播するときに、最初に火をつけてくれるのは「どういう人」「どういう場面」だろう、という視点です。
「生活者にとって面白いこと」を考える
篠崎:社内では今回の成果をどのように捉えていらっしゃいますか?
竹谷:分かりやすいところだと、商品の売上利益増加と、シェアの変動があります。ただ、目的の根幹は「ブランドを永続的に維持するため、お客様に愛していただくこと」です。ユーザー自身に「ゆきこたんの育ての親」という意識を持ってもらうことで、商品の育成につながると考えています。また、当企画には厳しい意見を頂くこともありましたが、それらも最終的には商品やブランドの認知につながってゆく。変化を恐れずに、これからも挑戦し続けてゆくことが大切だと考えています。
伊豆蔵:最終的な成果は売上かもしれません。でも、今回の目的はこの施策自体が話題になることでした。そういう意味でも成果はあったと思います。また、この取り組みについて「またやってほしい」「次は参加したい」という声をたくさんいただいていますし、こういった施策は継続して行くことが大切なんだと感じています。
皆川:今までの広告は企業側からの押し付けになっていた部分があると思います。そうではなくて、「このメッセージは生活者にとって面白い・興味深いものだろうか」と考える方がレスポンスを得やすいでしょう。そして反応があれば、デジタルが普及したので生活者の声を知ることができます。それを様々な部門にフィードバックすることで、会社自体の変化を起こすことができます。マーケティングの視点を持ちつつ、企業が面白いことをやっていこうと考えることが大切だと思います。
また、ブランドが長く続けば、どこかでリフレッシュをする必要があると思います。でもそれは、チェンジではなくてリフレッシュ。まったく新しいイメージを植え付けるのではなく、ブランドとして守るものはきちんと維持する必要があると思います。何が信念か・核となるのかを明確して、しっかり残しながら、これからも新しいコミュニケーションにチャレンジされると良いのではないかと思います。