「結果」も体験できる寄付システム
貧困問題の解決を目指すドイツの団体「Misereor」は、クレジットカードがあれば、その場で簡単に寄付ができるサイネージ広告を空港に設置しました。Swipeとはクレジットカードを機械にスッと通す行為のこと。中央に溝が付いており、カードを通すと2ユーロの寄付ができます。
従来の寄付は、クリエイティブを見て心が動いても、銀行まで赴く必要がありました。これなら寄付をしたいと思ったら、すぐに実行することができます。また、見たことのない機械が目の前にあって、何かをやっている人がいる。見ている人はとっても気になるし、誰かにも教えたくなるシチュエーションです。寄付をしている人自体が、他の人に向けた広告にもなるわけです。
このシステムの面白いところは、カードのスワイプに合わせてパンが切られたり、手に括られた縄が解かれる映像が表示されること。
寄付をする側は「寄付はちゃんと届いている?」という疑問を抱くものです。この仕組みでは「寄付をした結果」が伝わるようになっているのです。生活者のインサイトに合った表現といえます。スワイプをしたときの表現方法について、高野氏は「他にもいろいろできたと思う。でも、あえてシンプルにしている点も評価されている」と解説しました。
お代は笑った分だけ!顔認証を使った明朗会計システム
スペインでは観劇チケットについて、8%から21%という急激な増税が課せられ、人々は前評判の高い海外映画などに流れるという現象が起きました。打撃を受けたバルセロナの劇場「Teatreneu」は、ユニークな支払システムを導入して顧客の再誘導に成功しました。
それが、顔認証技術を活用した観劇料の後払いシステムです。観客はタブレットが設置された座席に座って、芝居を見るだけ。システムがお客さんの表情を判別して、笑ったときに課金をします。つまり、観客は笑った分だけ観劇料を支払うというわけです。もちろん入場は無料。しかし、劇場の売上は大幅に上がったそうです。
もちろん、システムの斬新さも話題になりました。ですが、それだけではありません。実際に劇場に訪れた多くの人が「これだけ笑った」と、結果をソーシャルメディアに投稿したのです。特に、結果が顕著な場合ほど、誰かに伝えたくなるものです。人々の心理をうまく活かしているといえます。
芝居は幕が開くまで当たりかどうかわからないものです。これまでの前払い制から、明朗会計なシステムになったことで観客も安心して足を運べます。また、舞台の作り手も、今まで以上に力が入ります。このような、ある意味での「小劇場の醍醐味を再アピール」できている点も、話題化した背景にあると高野氏は分析しています。
