「シンボルのない街」の魅力を伝えるには?
ビクトリア州にはオーストラリアを代表する都市、メルボルンがあります。この街は散策やグルメには向いていますが、エアーズロックやオペラハウスのようなランドマークがありません。目立ったものはないけれど、良いところはたくさん。そんなメルボルンの魅力を伝えるために、観光局は一般の人々の力を借りることにしました。
このキャンペーンは、FacebookやTwitterで「ここに行ってきて」と依頼をすると、「remote control tourist」が実際に赴いて、動画や画像で報告してくれるというもの。
彼らは丁度目の高さにカメラを設置しています。だから、自分がまるで現地にいるかのように、街や人々の様子を知ることができます。面白いのは、メジャー所ではなく裏通りのお店などがたくさん出てくること。訪問先の店員さんが歓迎してくれる様子が見られたりと、地域に密着したレポートになっています。
そして、最終的には彼らの訪問先をまとめた地図が形成され、サイトで閲覧することができるようになりました。この地図はキャンペーン終了後も公開は継続され、現在でも会話が続いています。「話題を広げる装置として機能し続けている」と高野氏。観光地というと、綺麗な写真や動画によるプロモーションを浮かべがちです。しかし、この取り組みでは「誰かが気になる場所のリアルなレポート」を通して、魅力を伝えることに成功しました。
テクノロジーに支えられた、魔法のような広告
イギリスの航空会社「British Airways」は、デジタルとリアルが融合した屋外広告で人々を驚かせました。屋外に設置されたサイネージの上空に飛行機が通りかかると、モニターの中の子どもが空を指さし、どこから来た飛行機か伝えるというクリエイティブ。
遅延などでタイミングがずれたり、他社の飛行機に反応しないように、この広告の裏側ではフライトデータや位置情報の活用など、様々なテクノロジーが働いています。まさに、データとクリエイティブが完全に同期した広告です。
子どもが飛行機を指さすという行為は、誰もが体験したことではないでしょうか。デジタル広告がそんな馴染のある行為を再現したら、誰かに伝えたくなるものです。当然、この広告もソーシャルメディアを中心に話題になりました。
しかし、このクリエイティブの肝はさらに深いところにあると、高野氏は解説します。この広告に触れたとき、人々は「すごい!でもどうなってるの?」という疑問を持つのです。そのため、広告の仕掛けをインターネットで検索をします。でも、答えは出てこない。謎が謎を呼んでさらに話題化しました。情報を全部出さないことで「何かあるかも」と思わせる仕組みになっています。
この広告そのものを実際に目撃した人は限られています。しかし、ソーシャルで知って、興味を持って検索をした人は多いでしょう。このように「インターネットで検索するという行動の促進も、これからは広告の成果になる」と高野氏は、広告の行動促進について触れました。
STORY TELLINGはSTORY DOINGへ
セッションのまとめとして、高野氏は「STORY TELLINGは一歩進めてSTORY DOINGへ」というプロモ&アクティベーションの審査員長Susan Credle氏の言葉を紹介しました。これまでは広告は企業の思いを伝える(STORY TELLING)ことが主流でした。これからは行動を見せる、あるいは人々に実際に行動してもらうことで伝える広告(STORY DOING)が主流になっていくとのことでした。
今回取り上げた作品についても、高野氏は次の3つの共通点があるといいます。
- 驚きがある
- 「いいものを見た、いい行為だ」と思わせる
- 「よくこのキャンペーンを実行したな」というクライアントの勇気
5つの作品も、まさにSTORY DOINGな広告だといえます。
