高まるスマホアプリの“プッシュ通知”の重要度
しかし近年、One-to-Oneコミュニケーションのチャネルが拡大しつつあります。
まず重要なのはスマートフォンアプリのプッシュ通知です。
キャンペーン告知などの一斉配信で使われることも多いですが、GPSやWi-Fiを使って特定のエリアに来た人だけにメッセージを送ったり、アプリ上で把握した属性によってターゲティングして送ることが可能です。最近は「iBeacon」の技術で店内の特定の売り場にいる人にプッシュ通知を送る企業も出てきました。
企業と顧客がダイレクトに繋がるという意味ではEメールに最も近いチャネルだと思います。しかしプッシュ通知のパーミッション取得率はあまり高くありません。パーミッションを維持するのもEメールより大変です。「うるさい」と思われてしまうと簡単に拒否されてしまいます。
また、企業が既存の顧客データベースと紐付けてプッシュ通知を送信している例はまだ多くはありません。
本来なら顧客の関心や行動に応じてリアルタイムで最適なメッセージを届けることができるように、Eメールなども含めたクロスチャネルのコミュニケーションシナリオに組み込んで、もっと活用されるべきだと思います。
外せない存在となった“LINE”
今後One-to-Oneチャネルとして非常に有望なのがLINEなどのチャットアプリです。
LINE社作成の資料によると、本原稿執筆の8月時点でグローバルでのLINEユーザー数は約4.7億人。日本では5,000万人を突破しています。(日本人口の39%をカバーしていることになります)特筆すべきはアクティブ率の高さで、マクロミル社の調査によると毎日1回以上利用する人が約60%、つまり約3,000万人もいることになります。
これまで企業は公式アカウントを開設して、「友だち」になったユーザーに一斉配信でメッセージを送信するしかありませんでした。それだけでも大きな効果を上げており、メッセージにリンクを入れている場合のクリック率は10%~30%程度、ある小売チェーンが来店クーポンを配信した時の来店率は2%を超えたこともあるそうです(参考記事)。
2014年2月にLINEがリリースした「ビジネスコネクト」では、LINEがAPIを提供し企業が顧客データベースと紐付けてOne-to-Oneでメッセージを配信することができるようになりました。すでにH.I.S.やリクルートなどがその機能を使ったサービスをリリースしています。
また2014年6月にはSalesforce.comのExactTarget Marketing CloudからLINEとのデータ連携機能の開発が発表されました。
ユーザー企業はEメール配信と同じ管理画面でEメールと同じように顧客データによって特定の条件でターゲティング配信したり、コミュニケーションシナリオに組み込んで自動的にOne-to-Oneでメッセージを配信することができるようになります。
このようなデータ連携は今後も増えるでしょう。
ちなみに英ファッションブランド「バーバリー」は2014年2月に中国で開いたファッションショーの中で、中国で人気の高いチャットアプリ「WeChat(微信)」を使ったリアルタイムOne-to-Oneコミュニケーションを展開しました。
基本的にはリクルートなどと同じ仕組みですが、その瞬間同じ場所にいるユーザーだけを対象にしたリアルタイムコミュニケーションはチャットアプリならではの活用法だと思います。(動画でも紹介されています。)
LINEなどのチャットアプリはクロスチャネルOne-to-Oneコミュニケーションの新しい時代を切り開く可能性があると思います。