SSPの登場で何が変わった?
5,000サイト以上のメディアマネタイズの実績を誇るSSP「Fluct」や、DMP「cosmi Relationship Suite」を開発するadingo。同社はアドテクノロジーのベーシックからトレンドまで把握し、多種多様なメディアへソリューションを提供している。今回の講演では「世界一簡単なSSPのはなし」と題し、同社取締役の小澤昇歩氏からSSPとDSPおよびRTBの関係やFluctの特徴、また最新の潮流が語られた。
SSPが登場する以前、メディアには大きく分けて純広告とネットワーク広告が出稿されていた。「たくさんの広告事業者からタグを入れませんかと声がかかり、結局どれがいいのか分からず困っていたメディアさんも多かったと思います」と小澤氏。
「SSPとは、簡単に言うと媒体社側が『具体的な取引は見ないから、一番収益性の高い広告を出して!』と任せられるシステムのこと」と、小澤氏は解説する。前述したかつての状況では、新たに広告事業者と契約をするたびに管理画面が増え、媒体社側のハンドリングはますます複雑化していた。それを解決するのがSSPだ。つながっている事業者の中で、一番収益性が高いものを自動的に選んで配信するため、その積み上げでメディアの収益を最大化できる。「これがひとつ目のSSPの役割です」と小澤氏。
SSPの役割はメディアの収益最大化とRTB取引の実現
広告主側でも媒体社側と同様に複雑な状況が発生していた。それを解決したのがDSPだ。そして、DSPとSSPの間で1インプレッションごとに広告枠のオークションが行われる。これがRTB取引である。
SSPのもうひとつの大きな役割は、メディアを訪れるユーザーの情報などを一元管理し、RTB取引を実現すること。SSPは都度、『今こういうユーザーが訪れているが、いくらで買うか?』をDSPに伝えて入札を促している。「言い換えれば、SSPはどんなユーザーがこの枠に接触しているかを知っているということです。一方でDSPは、どういうキャンペーンを広告主が行っているかを把握している。ならば、この間のさまざまな広告事業者とのやり取りをせずに、機械的に直接取引をしようというのがRTB取引です」
意外と中身が知られていないRTB取引。小澤氏は「今日は少し詳しく説明したい」とし、次の7段階に分けてその流れを解説した(現在SSPの仕組みが分かる資料を公開中です。こちらからご覧いただけます)。
- インプレッションの発生
- DSPにリクエスト(Bid Request)
- DSP内でオークション
- DSPからBid Response
- SSPで各リクエストを処理
- SSPで勝者と価格を決定
- 広告の配信と金額の通知
現在adingoでは自社開発のSSPやDMPの開発・販売を共に行っていくチームメンバーを募集しています。
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最終的に一番高く広告を配信できるRTB取引の仕組み
まずユーザーが広告枠に接触すると、SSPが保有するデータからどういうユーザーかを判別する(1.インプレッションの発生)。判別後、DSPにリクエストをかける(2.Bid Request)。adingoの「Fluct」では、ここで25程度のDSPへ通知しているという。ちなみに、必要な情報はDSPによって異なる。次にその情報を受けて、各DSP内でオークションが行われる(3.DSP内でオークション)。そのDSPと接続する複数の広告主が、「このユーザーなら80円で買う」「今回は要らない」などのレスポンスを返す。「いわばDSP内で代表選手を決める、予選のようなもの」と小澤氏。
各DSPでの対応が決まると、SSPへ返される(4.DSPからBid Response)。これがつまり本選になる。SSPでそれぞれのDSPのリクエストを確認し、処理していく(5.SSPで各リクエストを処理)。まず、買わないと反応したDSPを排除し、残っている各入札額がフロアプライス※1を上回っているかを確認。そして、フロアプライスを上回っているものの中で、最も高く入札したDSPが勝者となる(6.SSPで勝者と価格を決定)。
ただし、取引は勝ったDSPが提示した入札額で行なわれるわけではなく、2番目に高い入札額に1円を足した額が実際の取引額となる。「仮に80円と100円で競った場合、100円と入札した広告主になりますが、入札額は81円になります。オークションにおけるこの仕組みを、セカンドプライス方式といいます」こうして広告が配信され、決定金額がDSPに通知される※2(7.広告の配信と金額の通知)。
※1 フロアプライスとは広告枠の最低落札金額のこと。メディアが手動で設定することもできるが、基本的には機械的に決まることが多い。
※2 フロアプライスよりも高額の条件を出してきたDSPが1つだけの場合も、セカンドプライス方式が適用されることが多い。この場合、フロアプライス+1円で配信することになる。
0.1秒で決まる取引「SSPの頭の良さ」が重要
これら一連の流れが約0.1秒のうちに行われ、最終的にそのユーザーの接触を最も高い値段で買おうとした広告主の広告が表示される、というわけだ。ちなみに広告主の側から見ると、配信までにはまずDSP内のオークションに勝ち、次にフロアプライスに勝ち、最後にDSP同士のオークションに勝つという3段階の勝ち抜きが必要になる。「もし、広告主側で『当社の広告がほとんどRTBでは配信されない』という場合は、どこで負けているのかを確認すべき」と小澤氏。
また、0.1秒というスパンを考えても分かるように、SSPとDSPのサーバーが物理的に離れていると、DSPは入札に参加できない。レスポンスが遅いと、SSPは自動でオークションを締め切ってしまうからだ。
ここまでは、基礎知識として知っている人もいるだろう。「ここからは、少し特別な情報を紹介したいと思います。SSPにとって大切なことが2つあります」と小澤氏は切り出す。
ひとつは、SSPが接続しているDSPの数だ。数多くのDSPから入札があれば、それだけ高く配信できる可能性が高まる。「しかし、この点はSSPが成熟してきたことで、最近はそこまで差がつかなくなっています。Fluctでは25程度のDSPと接続していますが、各社とも20~30、スマートフォンを合わせて50程度が現状です」。より重要なのは、2つ目の「最適なものを選ぶという、SSPの“頭の良さ”」だと小澤氏は強調する。
「いかに収益性の高い広告を配信する仕組み、ロジック、ノウハウを持っているか。SSP選びでは、その見極めが大事です」小澤氏によると、仮に前述の「接続パートナー数」がごく少なくても、選択肢の中から最も賢い選択ができるかどうかのほうがずっと重要だという。
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収益最大化にはアナログな取引も大切
例えばFluctでは、その点のブラッシュアップのため、専門チームで配信方法を研究して新しい方法を試みたり、CTRを上げる調整を行ったりと、継続的に性能の向上に取り組んでいる。
RTBは機械的な取引だが、「支援する側は意外とアナログ」だと小澤氏。その最たる点が、各DSPやアドネットワークと毎日交渉を行っていることだろう。特に広告需要期には、実際に先方の担当者から頻繁に電話やメールで相談を受け、場合によっては大幅な高値の提示によってRTB取引をせずに買い切りを選択する場合もあるという。
また、新しい広告商品の開発もFluctの強みだ。DSPやアドネットワークの中には、総じて高く入札するものがあるが、それらは同時に配信ポリシーが厳しいことが多い。「そのためFluctでは独自のフィルターを通して媒体社側のコンテンツ解析を行い、配信できる広告を自動で判別することで、ポリシー違反を防いでいます。厳しいDSPやアドネットワークには、適合するコンテンツのときだけ入札、購入してもらい、それが最大化すればいいという考え方です」。
こうした対応は、媒体社側がSSPに広告収益の最大化を一括で任せてこそ可能になる。特にポリシーが厳しいことで知られるGoogle AdSenseについて、adingoは認定パートナーであり、さらに同社の社員が世界の認定パートナーのうち最も優れたコンサルタントに与えられる「Google AdSense Championship Award」を受賞しているので、サポート力、実績共に申し分ない。他にも、RTBの広告ログから最適なフロアプライスを自動設定できる仕組みや、過去事例や他社事例をすぐに反映できる仕組みなどを導入し、システムの部分でも常に進化を続けている。
PCはRTB全盛期、スマホでも急伸
最後に小澤氏は、現在のメディアマネタイズの主流を紹介した。まずPCは、まさにRTB全盛期。今やRTBがなければ収益化がまったくできない状況だ。「プライベートDMPを活用するメディアも出始めていて、ユーザーをセグメントして価値を見出しています。例えばある映画情報サイトでは『シリーズものの映画のPart.1を見た人だけにPart.2の広告を配信できます』と配給会社にアプローチしたりしています。これは当然、高値になります」
一方、スマートフォンの市場では、今年の春ごろからRTB取引の推移が急成長している。
「媒体社側からすると、当然PCからスマートフォンにトラフィックが流れているので、一刻も早くスマートフォンでの収益化を考えるべき」
一般的なSSPの解説に留まらず、仕組みの裏側や最新トレンドまで語ってくれた小澤氏。「SSPをいちツールではなく、ぜひパートナーとして考えてほしい」との言葉に大いに頷ける講演となった。
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