モバイルマーケティングにおける4つの課題
こうした状況を踏まえて、鈴木氏は現時点でのモバイルマーケティングにおける課題として、以下の4つを提示する。
- Webとアプリの両方に気を配る必要がある
- ユーザーマッチング/ターゲティング手段が多様
- ターゲティングできたとしても、CVRが低い
- PCとは勝手が違う
まずは、モバイル特有の事情である、Webとアプリの両立について。特にアプリは、ダウンロード後の90日以内のリテンション率は35%以下といわれ、継続的に活用されづらいのが難点だ。また、モバイルWebは相対的にCTRが低いとされるのも、解決が待たれる部分だという。
2つ目は、Webとアプリでユーザーのマッチング方法が異なり、クッキーが効かないアプリではユーザー特定が難しいこと。iOSについてはサードパーティーのクッキーが機能しないので、長らくリターゲティングが難しい状況にあったが、「この点は2014年の春から、ユーザーが広告表示を認証するステップを経ての配信を可能にしました」と鈴木氏。
3つ目は、ターゲティングが実現しても、モバイル特有の事情から、PCほどのCVRが見込めないこと。例えば画面の小ささによる情報量不足、入力のしづらさ、移動中に使うために通信環境の揺らぎが多く、コンバージョンに至る前に通信が途切れてしまう、といった要因がある。
そして4つ目は、デバイス・ブラウザ・アプリの重複利用があったり、Flashが使えなかったりと、PCと勝手がかなり違うことだ。
総コンバージョンの22~26%が、異なるデバイスによるもの
こうした複数の課題の中で、特に現在はユーザー特定に注力。ユーザーマッチングの方法には、ひとつはユーザーを完全一致させて検出すること、もうひとつは統計的推計によるマッチング、という2種類の向性がある。前者にはプライバシーの問題があり、後者には誤判定やオプトアウトのマネジメントが課題になっているが、「これらには細心の注意を払っていく」と鈴木氏は述べる。
Criteoは事業を開始して9年ほどだが、この1~2年は特にモバイルに注力してきた。2012年にFLASHからHTML5へ移行し、翌年にアプリ内でのユーザー行動を追跡できるソリューションベンダー「AD-X Tracking」を買収。さらに2014年、同システムをベースとしたアプリ内広告配信を開始した(関連記事はこちら)。それに次ぐ、前述のiOSへの配信開始と、着々とモバイルリターゲティング広告の可能性を広げている。
最後に鈴木氏は、特筆すべきデータを提示。それは、同社で国内の複数広告主の1千万以上のクッキーを調べた結果、「総コンバージョンのうち22~26%がCriteoの広告閲覧後に“違うデバイスで”コンバージョンしたもの」だということだ。PCで閲覧後にモバイルで、あるいは職場のPCで閲覧後に自宅PCで、などのクロスデバイス状況がはっきりと示された。
「何らかのカギを得ることで、ユーザーをマッチングさせた上でこうした行動を把握し、クロスデバイスでのキャンペーン展開を近い将来に可能にしていきます」と鈴木氏。Criteoは、モバイル市場で成果を上げるための大きな味方として、ますます進化を続けそうだ。